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第二百二十二話:激戦・レイドボス

「皆、きっとここがラストスパートだ! 出し惜しみは一切無しでいく! 」


 僕は声を張り上げると、彼らは力強く応えてくれる。

 しかし、そんな僕らに対してスーパーキングスノーマンは余裕を見せつけるかのように笑みを浮かべている。

 嫌な予感がするが……だからって、何もしなければ奴を倒すことは出来ない!


「何か仕掛けて来る……! タンク隊、注意!」


 僕の直感は的中し、スーパーキングスノーマンは再び腕を大きく広げて6本の手に武器を構える。

 先程と同様、全ての腕によるデタラメな攻撃でも繰り出してくるつもりか……!

 まるで朧之剣のCaTみたいだが……アレとは、火力も練度も桁違いだろう。

 だから、アレを軸に考えるのは止そう。


『────【ハザード・ブリザード】』


 スーパーキングスノーマンがスキルを発動すると、奴の周囲を包むように吹雪が発生し、それが僕らへと迫って来る。

 それは、僕らの視界を白く染め上げ、身動きすらも困難にする程の凄まじい暴風だった。


「くっ……! このようなスキルまで……! 雪だるまのくせに……!」


「アタッカー隊は後退! タンクは、防御壁を張れ!」


 イアソーンの指示で、僕の隣で悪態をついていたアルトリアを始めとするアタッカー隊が後方に下がり始める。

 同時にバッファーたちが防御力上昇のバフを付与したタンクによる防御壁が展開され、魔法使いたちの放つ炎の魔法が吹雪の勢いを少しばかり弱める。

 ヒーラーたちは防御壁が展開されるまでに僕らが受けたダメージを回復し始め、回復を受ける僕もまた、彼らの援護のために剣を構える。


「【ブレード・レイン】!」


 僕が詠唱を終えると同時に無数に現れ、スーパーキングスノーマンに向かって行く無数の聖属性を帯びた光の刃。

 それらは全て奴に命中するも、大したダメージを与えることが出来ずに弾かれてしまう。

 エクスカリバーの力を帯びた刃とて、奴には避けるまでもないと言うほど……脱皮して防御力まで上がっているのか!


『無駄なことを……【アイス・ドレス】!』


 6つの腕に握られた大鎌、大斧、大槌、長槍、棍棒、刀が同時に振り下ろされて、そこから武器の形をした光るエフェクトが飛んできた。

 それら一つ一つが青いライトエフェクトで出来ていて、防御行動を取っていたタンクたちの盾に命中し──炸裂した。


「んなっ、これは……!」


「動け、ない……!」


 ギャラハド、カエデくんらがそう声を上げた時には僕もアッと驚いた。

 攻撃を受けたタンクメンバーたちは、いつの間にか真っ白なドレスとタキシードのような装備に身を包んでいた──いや、包まされていた。

 よく見るとそれらは雪や氷で出来ていて、元の装備に被さるように纏わりついて彼らの動きを停止させていた。


「タンクの機能が停止したか……! 魔法使い! 弱めの炎から試してタンクたちの氷を剥がせ! アタッカー、その間は死に物狂いでスーパーキングスノーマンを足止めしろ!」


「わかった!」


 イアソーンがそう指示を下したところで、僕たちは前に出てスーパーキングスノーマンへと斬りかかる。

 普段なら『このまま倒してしまってもいいんだろう?』なんて格好つけたことを言っている余裕もあるが、今はない。

 隣にいるアルトリアに目配せして、左右からスーパーキングスノーマンを挟み込む。


「バースト──」


「スゥゥゥ……ハァァァァァッ!」


 風を纏った僕の剣がスーパーキングスノーマンへ向けられて、放たれんとした時。

 奴の身体から白い霧のようなものが溢れ出し、僕らの視界を埋め尽くすように広がる。


「しまった! これは──」


「────ッ!?」


 アルトリアの焦った声がした時には、もう遅かった。

 彼女の声は途中で途切れ、僕の攻撃には手ごたえがなく、逆に僕の腹へスーパーキングスノーマンの持っていた鎌が刺さっていた。


「ぐぅ……! この──うぶごあっ!」


 僕は即座に反撃に転じようとするが、スーパーキングスノーマンはそれを許さず僕を蹴っ飛ばしていた。

 派手に吹っ飛ばされて地面を転がり霧の外へと投げ出されるが、僕はすぐに立ち上がる。

 霧の外に飛ばされたのなら、やることは一つ!


「バースト・エア!」


 突風を放って霧を吹き飛ばし、アタッカーたちがスーパーキングスノーマンへ近づきやすくする。

 だが同時に、霧が吹きとんだせいでちょっぴり見たくなかった光景も見てしまった。


「ぐ、う……!」


「アルトリア殿っ!」


 真っ先に反応したのはガウェインで、彼は剣の刀身に炎を灯しながらスーパーキングスノーマンへと斬りかかった。

 何故なら、アルトリアは僕が受けていた攻撃の倍以上を叩きこまれていて、身に纏っていた甲冑がボロボロに破壊されていたのだ。

 彼女自身の残りHPも半分以下に落ちていて、まさに大ピンチ。


「どうした……! 無駄に増やした腕で、その程度の攻撃か!」


 しかし彼女は膝をつくことすらなく、たった一本の剣だけでスーパーキングスノーマンの連続攻撃を捌いていた。

 彼女の瞳からは闘志は消えておらず、強く強く爛々と燃え盛っていた。

 そんな彼女を見て、僕も奮起しないわけがなかった。剣を強く握りしめ、スキルを発動させる。


「光よ──穿て! ロンゴミニアド!」


「ホープ・オブ・カリバーン! ────はぁあああッ!!」


 僕が放ったロンゴミニアドと、アルトリアが振るった一閃が同時に直撃し、スーパーキングスノーマンは大きく仰け反る。

 だが、それで終わるほど甘くはなかった。


『──【アイシクル・デストラクション】』


「ッ! ガラティーンッ!」


 氷の結晶を象ったエフェクトが撒き散らされるも、それはガウェインのスキルによって相殺される。

 だが、奴の攻撃は氷の結晶が撒き散らされるだけでは終わらず、同時にアルトリアやガウェインの足元から巨大なツララが何本も突き出される。

 それらは彼らを串刺しにせんと迫るが、アルトリアは回避に専念しつつ邪魔なものを斬り落としていく。

 勿論、ガウェインやランスロットたちも自分に当たりかねない物を斬り落としてダメージを受けずにやり過ごす。


「ファイア・ウォール!」


 イアソーンの指示で展開された防御壁が僕らを包み込み、僕らの方に飛んでくる氷の柱は触れることなくして砕け散っていく……タンク隊が復活したのか。

 そして、僕らはスーパーキングスノーマンへと攻撃を仕掛けるために前進していく。


「バーニング・ソード!」


「【レイジング・ストライク】!」


「【サンシャイン・スラッシュ】!」


 僕、ランスロット、ガウェインの3人が一斉にスキルを放つ。

 三方向からの攻撃ともなれば、奴は最低でも半分の腕をこのスキルの対処に使わなければならないハズ──!


「【アイスシールド】」


 そう思った矢先、スーパーキングスノーマンが長槍を高速回転させると氷の盾が出現し、僕らが放った攻撃を全て防いでしまった。

 しかもそれだけでは済まず、奴が棍棒を振るうと三本の氷柱が出現し、僕らに向かって飛んできた。

 僕とガウェインはそれぞれ左右に飛び退いて避け、ランスロットは剣でそれを打ち払う。


『──【アイシクルエッジ】』


「ッ──」


 氷の長槍を弾いたことで一瞬隙が生まれたランスロットに向け、タイミングが遅れて放たれた氷の刃が飛来する。

 この距離とスピードじゃ、僕でも間に合わない……!

 あわやランスロットに氷の刃が当たってしまう──と思われたところで。


「ふんッ! 潰れろォッ!」


「オリオン!」


「おいおい王の騎士団、戦うのはお前らだけじゃないんだぞ」


「そうだそうだ、オレたちを忘れてんじゃあ──ねえッ!」


 オリオンが右手に握っていた棍棒でランスロットに放たれた氷の刃を砕き、僕たちの前に出て来たカイナスが炎を纏った槍の一突きをスーパーキングスノーマンに向けて放つ。


「チッ、流石に硬ェなぁ、オォイ!」


 だが、奴の身体を覆う分厚い氷の前には大してダメージを与えられず、奴は鬱陶しそうにカイナスを振り払った。

 カイナスは後方に下がりながらも、穂先が燃えている槍を振るう。


「ならコイツはどうだぁっ! ヘルフレイム・フェニックス・ドライブッ! ハァァァアッ!」


『──!?』


 カイナスが槍から放った不死鳥が、スーパーキングスノーマンに着弾する前に動いたプレイヤーがいた。

 カイナスが真っすぐ放った攻撃では、当然スーパーキングスノーマンのガードを突破することは出来ないだろう。

 けれど、そのガードを崩すものがいたら。


「フッ、いくら腕が六本あろうとも、向く方向は一つだけか」


「脳ハ足リンヨウダナ……」


 アルトリアとヘラクレス、二人がスーパーキングスノーマンの肩からそれぞれ三本の腕にかけて斬撃を加えていた。

 当然、火力の高い二人の攻撃を食らってスーパーキングスノーマンはただではいられない。

 ガードを崩され、カイナスのスキルから身を守ることもなく着弾を許した。


『──!!!』


「よくやったな、カイナス! そして、聞け! レイドパーティの者どもよ! ここで我が海神闘衣のクールタイムが終了した! 即ち、風向きは変わったァ!」


 スーパーキングスノーマンのHPが目に見えて減ったと思えば、今度はイアソーンが後方から叫んだ。

 とんでもなく良いお知らせと来た……! なら、後は全力で押すまで!


「皆、一気に行くぞ!」


僕が声をかけると、それぞれが返事をして一斉に動き出す。

 イアソーンのバフがパーティ全体に付与され、それは先ほどから続いていたアルトリアの極光世界の効果と乗算され、凄まじい効果を僕らへともたらした。


「神速! エクス……カリバァァァッ!」


「神速! ホープ・オブ・カリバーン!」


 僕ら兄妹の超高速かつ超高火力の攻撃がスーパーキングスノーマンの腕を一本ずつ斬り落とした。

 奴は信じられないものを見る目でこちらを見るが──そんな驚いた表情をしている暇があるのに、動かない時点で襲い。

 そう断じられるほどに速くなっていた僕らは更に次の行動へと移る。


「ヘルフレイム・フェニックス・スラスト!」


「神剣・マルミアドワーズ!」


「オッルァァァッ!」


 カイナス、ヘラクレスの全力のスキルがスーパーキングスノーマンの持っていた武器を弾き飛ばす。

 更に、スーパーキングスノーマンにも劣らぬほどに筋肉を肥大化させ大きくなったオリオンの攻撃が奴の腹に拳を叩き込み、足を掴んで地面へと強く叩きつけたことで武器を手放させさせた。

 それが、最大の隙!


「いけぇっ、ディララ!」


「はい! たっぷりとお時間をいただきありがとうございました! この一撃を持って、天へと還りなさい!」


 レイドパーティの列から飛び出し、本の喉部分に杖を突っ込んだディララは跳び上がる。

 空中で本から杖を引き抜いたと思うと、ディララは叫んだ。


「滅べ……! 【カタストロフ・フレア】!」


『────! ハザード・ブリザード!』


 災を冠する二つのスキル同士が衝突する。

 だが、二本の腕を落とされ体力の削られたスーパーキングスノーマンではディララの炎を撃ち返すことは出来なかった。

 多数のバフと海神闘衣で大きくブーストをかけた、SBO最大火力を誇る魔法使いの前には、レイドボスとて無力だった。


『ハ、ァァァ……ォ……グゥァアアアアアッ!』


 巨大な爆発音と共に、スーパーキングスノーマンはそのHPを全損し──消滅した。

 僕たちレイドパーティの、勝ちだ──。 


『congratulation! 【第五都市】・【第六都市】解放!』

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