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第二百十八話:超ド級の一撃

「うおおおおおおおおっ!」


『滅せよ』


「フィフス・シールド! ッ! ぐ……! オッラァッ!」


 ミイラキングが多数の魔法陣を展開して放ってくる、闇属性のレーザーのような魔法攻撃。

 先頭に立つ俺がそれを防ぎ、弾きながら、俺の後ろを走るNさん、モルガン、モードレッドと共にミイラキング目がけて進む。

 KnighTたちが取り巻きたちを蹴散らしてくれているとは言えども……クリアまでの制限時間もある以上、なるべく早く倒す必要がある。


「そろそろ射程圏内です!」


「なら、出来る限り火力高めで頼む! 最速で奴をぶった斬る!」


「任せな! いくぜ……! クラレントォッ!」


 俺が指示を出した時にはもうモードレッドが剣から赤い雷を迸らせ、ミイラキングへの一撃を放つ。

 斬撃の形となって飛来する赤い雷は、玉座に鎮座したままのミイラキングに直撃し、爆発と煙のエフェクトを巻き起こした。


「ハッハァ! いいの入ったな! 今ので決まったか?」


「そう簡単に倒せるもんでも──やっぱり!」


 モードレッドの火力が低いわけではないというのは、一度対峙した俺がよく知っている。

 けれど、ミイラキング自身の硬さは異次元の部類だった。

 クラレントが直撃したって言うのにHPはほとんど削れていないし、なんか魔法を詠唱して反撃の準備までしている。


「ッ……マジかよ! っつかアイツ! オレのクラレントが直撃してんのに魔法の詠唱なんかしてやがる!」


「魔法は私が防ぎます! ブレイブ・ワン、N・ウィーク! あなたたちは攻撃を!」


「そうだな、それがいい! 頼むぜモルガン!」


「うむ……いいだろう! 必ず守り切れ!」


 俺とNさんは左右に散って、俺は右、Nさんは左からミイラキングの玉座目がけて走り出す。

 モードレッドはモルガンの後ろにピッタリくっつき、剣を構えてまた何か詠唱している。


「どんな魔法が来るか……まぁ、何が来ても、やることは変わらないか!」


 ミイラキングがブツブツと詠唱を続けているところへ走り、一気に近づく。

 狙いは頭……ド級の一撃をブチ込んで、一気に削り倒す!


「ゴブリンズ・ペネトレート!」


『──!』


「なにっ……おわぁっ!?」


 ミイラキングは俺の攻撃を見てからいなしやがった。

 詠唱を続けながらも突然立ち上がって、持っていた杖で俺の剣の軌道をズラした。

 そのまま勢いの乗っていた剣を杖で流し、俺は居合の構えを取っていたNさんの方に投げ出された。


「Nさんっ! まずい!」


「任せろ」


 だがNさんは流石だった、居合で突っ込めば俺を斬ってしまいかねないという状態からスキルを切り替えた。

 おそらくは神天ノ太刀を放つところだったであろう居合の姿勢から、すり足で俺を避けて刀を抜き、突き技に切り替えた。


「捨弐ノ太刀・無双三段!」


「結構久しぶりの奴──!」


 居合のスキルの印象が大きかったNさんから見るのは久しぶりな、スキルでの突き技。

 誰でも覚えられる汎用的なスキルだが、そのスピードと威力はかなりの物だった。

 ミイラキングは意に介してはいないが……モードレッドの攻撃よりも、確実に削れている。


「っと……直接斬りつける方がしっかりとダメージが入るな」


「流石Nさん」


 俺とNさんはモルガンの後ろに下がりながら、ミイラキングが詠唱を完了させた魔法を放つのを待つ。

 撃ってきた瞬間に合わせて、何かしら別の行動をとるのはありえるかもしれないからな……!


「チッ。派手にぶっ放せねえのは癪だが仕方ねえ、地味な技でも派手にバラしてやるか」


「まぁ、いいでしょう。そういうのは嫌いではありません」


 モードレッドは剣を肩に担いでカチンカチン、と金属音を鳴らして呟く。様になってるなぁ。

 モルガンは槍と剣を同時に構えて──


『死ぬがいい』


「大風車! 【ソード・バリア】!」


 槍を高速回転させると竜巻のような風が起こり、剣は地面に突き立てるとモルガンが地面に突き立てた剣そっくりのバリアが前面の広範囲に張り出される。

 そこに、ミイラキングが放って来た特大の闇属性魔法……! まるでただ何かを壊すためだけのエネルギーの塊みたいだ。

 真っ黒で、触れれば全て飲み込まれてしまいそうなほど、圧迫感を感じる魔法。


「ッ……! この威力は……! マズい……!」


 モルガンの張ったソード・バリアは砕かれてしまい、大風車で起こす竜巻も徐々に飲まれている。

 なら──!


「モードレッド! 俺に合わせろ! モルガンを助けるぞ!」


「わかってらぁ! っつか、テメェがオレに合わせろ!」


 モードレッドは剣を大上段に構え、俺は剣の腹の部分をスッと撫でる。


「クラレントォォォッ!」


「カースフレイム・フェニックス・ドライブ!」


 直接斬りつける、ではなく剣から放出させるスキル……それも高威力の物を一気に放つ。

 モルガンのバリアと竜巻が破られ、モルガン自身が飲まれ始めそうだったところでミイラキングの放った魔法が消えた。

 だが、まだ来る……! と、俺は既に予感していた。


『滅せよ』


 案の定、ミイラキングは魔法陣を展開して、レーザーをぶっぱなしてきやがった!

 さっきよりも数が少ない……! 奴にとっても急ごしらえの魔法ってワケか!?


「ッ──! 流星盾! ぐっ、うううおおおおおおお……!」


 俺はどうにか防御スキルを展開して防ぐが……クソッ、俺の防御力じゃ防ぎきれねえ!

 魔法陣の数が減ってると思ったら、威力が上がってやがる……!


「ブレイブ! 任せろ!」


 流星盾が完璧に割られるタイミングで、Nさんが俺の前に立った。

 そして刀を振るったと思うと、飛んでくる魔法を打ち落とすために刀を振るった。


「ッ──!」


「Nさん!?」


 だが、Nさんの横っ腹辺りには丁度指一本程のサイズの穴が空いていて、傷の断面は焼けた痕があった。


「フ……気にするな。あと2、3発程度なら耐えきれる……それに、同じ手は二度食うものかよ……!」


 おそらく、ミイラキングはさっき放った魔法に何らかの工夫を施していたのか。

 単純に盾で防ぐのなら問題ないだろうが、打ち落としたりするプレイヤーにとっては厄介になり得るもの……視界の外に置いておいた、ってところか。

 ……受けに回ってちゃジリ貧だし、そもそも俺たちが雑魚の相手をしてもいっぱいいっぱいだった取り巻きを、カオスたちが止めてくれてるんだ。

 なら、攻めることを考える他ねえ!


「何度でも突っ込んでやる……Nさん、モードレッド! 合わせてくれ!」


「あぁ、任せろ」


「……今だけだぞ、オレがお前なんかに合わせてやるのはよ!」


 Nさんは刀を腰に納めてから腰を深く落とし、モードレッドは剣を大上段に構え、稲妻をほとばしらせる。

 俺も彼女らに合わせ、スキルを詠唱する。

 飛び込むのは……! ミイラキングが、魔法を放った瞬間だ!


『滅べ』


「ッ──! ドラゴ・ミニアド!」


 ミイラキングが魔法の詠唱を完了させて、杖から放ってきたのは……! 不死鳥を象った、黒い炎!

 俺のカースフレイム・フェニックス・ドライブにも似たそれはモルガンの放ったスキルとぶつかり合って砕ける。


「今だ!」


「応!」


 俺の合図と共にモードレッドとNさんは駆け出し、魔法を撃って隙があるミイラキングに向けてスキルを放つ。


「行くぜ……! クラレントォォォッ!」


「くらえ……! 震天ノ太刀!」


『ハァ!』


 モードレッドの放ったクラレントには、ミイラキングが空いた手で作った高速回転するシールドが、Nさんの放った居合にはミイラキングの持っていた杖が合わせられる。

 これで二人のスキルは受け止められてしまうが──ミイラキングは、隙だらけになった。


「狙うは……超ド級の一撃……! 恨熱斬ッ!」


 火力を上げるスキルを限界まで使い、命のストックを一つ削って、俺のスキルの中で最大最高の威力を誇る恨熱斬をぶつける。

 黒い炎を纏った俺の斬撃がミイラキングの頭に叩きつけられたところで──!


『ギイイイエエエエエアアアアアアアッ!』


「悲鳴!?」


「なんだかわからんが……これは……マズい!」


 ミイラキングは先ほどまでの王様らしい威厳のあった態度から一転して、けたたましいほどの声量で叫び、その衝撃で奴の近くにいた俺とNさんは吹き飛んだ。

 モードレットとモルガンは巻き込まれずに済んだみたいだが、派手に吹っ飛んだ俺たちは多少HPが削られた……その上、なんか頭がキーンと痛む。

 俺のスキルの咆哮にも匹敵するくらいの声量だからか……スタンはしなかったけど、ダメージが入るとは。


「騒々しい声でしたが……よくやりましたね、ブレイブ。奴のHPが一気に削れました」


「つっても、恨熱斬一発で4分の1だろ……これじゃ割に合わねえよ」


 命のストックは残り2つ……サンド・ドラゴンゾンビ戦で失わなかったことは大きいが、コイツ相手に残り2つあっても、全部恨熱斬に回せるとは考えられない。

 Nさんが手渡してくれたポーションを飲みつつ、俺は恨みの炎に焼かれて少しずつHPを削られ、悶えているミイラキングを注意深く見る。

 一見隙だらけだが、下手に斬りかかれば反撃を貰う可能性があるし……なんだか様子が変なんだよな。


「オイ、なんか火の勢いが弱くなってねえか?」


「ただの自然経過だと思うが……なんか、光ってるような気もするな」


「……呪いの攻撃、無効化され始めているのではないですか? HPの減る速度がどんどん遅くなっています」


「うむ……となると、ブレイブの奥の手は一度限りだったか」


 アタッカー四人がそれぞれ一言ずつ言ったところで、俺はメンタルに何かずーんと来るものを感じた。

 自分がちょっぴり役立たずになったことを悔いるものなんだろうかなぁ、これは。


『グゥゥゥ……許さんぞ……! この、汚れた賊どもめ!』


「あぁ? 賊ぅ? 死体が偉そうにほざいてんじゃあねえよッ! このクソキングが!」


 法衣も包帯もあちこち燃え、煙を上げながら声を荒げるミイラキングに対してモードレッドが怒鳴り返す。

 

「モードレッド。そんな汚い言葉遣いをしてはいけないと、母はあれほど言ったはずですが」


「っ、べ、別にいいだろ。ゲームのロールプレイ、って奴!」


「現実でも影響を及ぼしているではありませんか」


「だっ、そ、それは──!」


「はいはい! 親子喧嘩は後にしろ! また魔法が来るぞ!」


 怒りながらもミイラキングは魔法を詠唱していたようで、魔方陣を展開してまた雨あられのような魔法を降らせてきた。

 俺は各種シールドを展開して何とかソレを防ぎつつ、モルガンたちのスキルの詠唱時間を稼ぐ。


「チ……! やっぱり、俺の盾じゃ持たねえな」


「ですが、時間稼ぎには十分です! ドラゴ・カリバァァァッ!」


 俺の盾が割られたところで、モルガンの黒い剣がミイラキングの魔法を相殺し、俺たちに当たりそうなものは全て消えた。

 そこで隙を晒したミイラキングに向けて、俺たち三人は駆け出す!


「よし……! いくぞ、モードレッド、Nさん!」


「オレに指図すんじゃねえ!」 


「呼ぶなら私を最初に呼べ!」


 二人の文句を聞きながら、スキルの詠唱を整えて──。


「オーガ・スラッシュ!」


「星砕ノ太刀!」


「【スピリッツ・スラッシュ】!」


 俺とNさんの最大火力技と、モードレッドが剣の刀身を金色に輝かせながら放った、三人同時の振り下ろし。

 それらが、まとめてミイラキングの頭に叩きこまれた。

 

『うぶっ、ぐぅぅぅ……!』


 法衣が焼け落ちていたこともあって、さっきよりもダメージの通りはいい。

 HPバーの一本の内の三分の一が、今の攻撃で削れたのだから。


「ドラゴ・ミニアド……! ハァァァッ!」


『ぐぅぁあああっ!?』


 攻撃を終えて下がろうとしたところで、俺の真横を黒い大槍が掠め、ミイラキングの頭を貫きながら壁に突き刺さった。


「モルガン!」


「チャンスは延長してあげます。さっさともう一本削りなさい、ブレイブ・ワン」


「っ、サンキューな!」


 俺たちは目を合わせる間もなく、テレパシーを交わしたかのように走り出してもう一度スキルを詠唱する。

 頭に刺さった槍を抜こうとする、ミイラキングに目掛けて──!


「ゴブリンズ・ペネトレートッ!」


「神天ノ太刀!」


「クラレントォォォッ! ハァァァッ!」


 モードレッドの剣から放たれた赤い稲妻、俺の最大火力の刺突、Nさんが放つ高速の居合。

 赤い稲妻がミイラキングの全身を再度焼き、俺の刺突は抜かれかけていたモルガンの槍を更に強く押し込み、Nさんの居合はミイラキングの片腕を斬り飛ばした。

 これらの攻撃で更にダメージを与えられ──ミイラキングのHPバーの二本目は消え、ついに半分にまで落ちた。


「ッ! ここからが本番だろうな……よっと!」


 俺はミイラキングに刺さっていたモルガンの槍を引っこ抜き、そのまま後ろにいるモルガンにノールックで投げ渡す。

 そして、十中八九魔法を撃ってくるだろうから……と、真後ろに飛んで距離を取る。

 ……皆、持っててくれよ。

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