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第二百一話:魔王の進軍

「メイプルツリーが陥落したか……勝利条件がどっちだったのかはわかんないけど、良かったな」


「そうね。アレは放置してるとマズかっただろうし、私たちと違ってあっちの方を早めに倒すって判断をしてくれたギルドがいて良かったわ」


 メイプルツリーが早々に落ちたことを知らせるメッセージを確認したところで、メニューを閉じる。

 俺、真の魔王のギルドマスター・カオスは現在アルゴーノートの領土へ向けて進軍中だ。

 偵察のリュウによるとアルゴーノートは完全防衛体制、同時に魔女騎士団のプレイヤーもアルゴーノートの領土に向かっているという知らせが入っている。


「カオスよ。アルゴーノートにはカイナスという女がいる……ソイツの相手は俺に譲れ、いいな?」


「あぁ。好き勝手暴れて来いよ、ホウセン。お前が攻めの要だからな」


「おいカオス、俺の方はどうすりゃいい?」


「お前はテキトーに遊んで来いよ、速さが売りなんだし、戦場を縦横無尽に動き回ってくれ」


 今回の俺たちは少数精鋭と言うことで、ギルドメンバーの殆どを領土の防衛に回している。

 数が多すぎても広範囲攻撃を持っている俺に巻き込まれかねないし、丁度良いだろう。

 アルゴーノートの領土を落としに向かうのは俺、サンドラ、ディアブレ、リュウ、レオ、タダカツ、ホウセンのみだ。

 領土のフラッグを取るか、大将に設定されているであろうイアソーンたちを落としに向かうか。

 どっちをやるにしろ、このメンバーだけで十分だと俺もサンドラも判断している。


「……カオス、私に対して特に命令とかないの?」


「じゃあ、カステロとボルクスでも討ち取ってきてくれよ。連携してくる相手を崩すの、お前得意だろ」


「そう。ならやって見せるわ……あぁ、人にナイフを投げるのは久しぶりだから楽しみね」


「カオスよ。我は魔女騎士団の相手をしてきても構わぬか? 魔女と聞いては悪魔の血が騒いで仕方ない!」


「なら行ってこい、出来るだけ戦力削って来いよ」


「フハハハ! いいだろう! この悪魔が奴らを灰燼へと帰してくれるわ!」


 サンドラもディアブレもご満悦そうだが、ディアブレは笑い声が結構うるさいな。

 ただ黙って船に乗っているタダカツを見習って欲しい。


「ところでカオス。そのお酒、私にも一口飲ませてくれないかしら」


「お前が飲んでも何も意味ないだろ。俺のMP増やすための物なんだから……っておい」


 サンドラは俺がMP増強のために飲んでいた魔酒をひったくり、瓶に口をつけて飲み始めた。

 ……俺のスキル由来だから空っぽになることはないけど、いきなり酷くないか。

 っていうか、間接キスとかして平気なんだろうか……俺はアバターだから気にしないけどさ、女の子が気にしないってどうなのよソレ。


「うん。ジュースみたいで美味しいわね、お酒に強くない私でも飲める飲める」


「気が済んだらさっさと返せ、出来るだけMP貯めときたいから」


「そ。じゃあはい」


 ……全く、うちのサブマス様はわがままなメイドだぜ。

 と思いながら、俺は玉座に座りながら波の揺れを感じ、アルゴーノート領土を目視できる距離についたことを感じる。

 船着き場に向かいたいところだけれど……海路からの侵攻なんて読まれてるだろうし、敵の防衛戦力と当たるのは確実か。

 なら。


「リュウ、ホウセンを乗せて船着き場に先行してくれるか? 船を安全に上陸させたい」


「いいだろう……ところで、もしも船着き場に強敵がいるとするならば……倒しても良いんだな?」


「あぁ、好きにしろ。お前が最大限楽しんで暴れられるように頑張れ」


「フッ。滾るな……ハァッ!」


 ホウセンは走り出して跳び上がったと思うと、俺の指示に合わせて空を飛んで戻ってきたリュウの足に掴まる。

 大きな飛竜へと変身出来るリュウなら、空からの奇襲や移動が出来るだけに便利だな。


「さてと、お前ら準備は出来てるか?」


「えぇ。もちろんよ」


「うむ。我も万全だ!」


「然り。いつでも出陣可能にござる」


「ヘッ、準備なんざとうの昔に終わらせてるぜ!」


 俺の頼もしい仲間たちはそう言って、自慢の武器を抜いてくれた。

 ……さてと、いざ真の魔王の出陣だ。




「くそっ、もう本隊が来やがった!」


「予定通りだな……さぁ、俺の武を存分に味わって貰おうか!」


 俺たちがアルゴーノート領土の漁船の船着き場に着くと、そこではホウセンとカイナスが交戦しているところだった。

 このままカイナスを倒すのも良いけれど、さっさと大将首を取ってトンズラする予定だから敢えてのスルーだ。

 ホウセンがこのまま抑え込んでくれるか、倒すことを期待しよう。


「そいつは頼んだぜ、ホウセン!」


「任せろ!」


 心強い仲間の声を背に、俺は前にアルゴーノート領土へ訪れた時の記憶を頼りに走り出す。

 ディアブレはすぐに列から離脱し、魔女騎士団のメンバーを探しに向かう。

 俺、サンドラ、レオ、タダカツの4人だけだが……相手が誰だって、負ける気がしない。


「カオス! 三時の方向から二人、九時の方向から三人来る。私が相手してもいいかしら」


「あぁ任せた、乱戦ならお前が一番得意だろうしな」


 サンドラは走る速度を落とし、フリルのスカートからナイフを一本ずつ取り出して二方向に向けて投げる。

 デキるメイドな副団長を持った俺は幸せ者だな──と思いながら、俺たちは走る速度を上げる。

 

「なぁカオス! 俺もリュウと一緒に戦ってきていいか? アイツが接敵したみたいだからよ!」


「もちろん、仲良しなんだから好き勝手暴れて来い」


「ひぃひゃっはぁっ! その言葉を待ってたぜ!」


 亜人から獣人、獣人から獣へと姿を変えたレオは瞬く間に俺から離れて北西へと走り出した。

 俺とタダカツは今現在漁船用の船着き場に通じていた商業区を抜けて、イアソーンが【ボンボンの住む土地】と呼んでいた居住区へと入る。

 高い建物が多くなってきて、奇襲の危険性まで上がってきた……けれど、大物との接敵が出来るチャンスってわけだ。


「来るか……!」


「お前に任せる、頼んだぜタダカツ」


「相分かった……いざ尋常に参る!」


 ホームグラウンドなのに、隠れもせず俺たち目掛けて真っすぐ突っ込んでくるアステリオスに、タダカツが挑みかかる。

 俺はその間に居住区を抜けて、領主館を目指して走りだす。


「ガアアア!」


「っと」


 どこから撃ってるか、誰を狙ってるかも見え見えな軌道の矢が降ってきたと思ったら、死角からヘラクレスが突っ込んできた。

 両手に握った剣の薙ぎ払いを転がって回避することが出来たのは良かったけれど、挟まれた。

 姿を隠して弓矢を撃ってくるプレイヤーと、これでもかと存在感をアピールするようなヘラクレス……どっちかに注視すれば、どっちかの攻撃を受けるハメになるな──

 なんて思ってたら、また一人。


「おや、大物が二人も見つかるとは。これは一人ずつ探す手間が省けました」


「いきなり七王かよ……まぁ、どうせ倒す予定だったんだし、悪くはないか」


 魔女騎士団ギルドマスターにして領主……そして、おそらく総大将に設定されているであろうモルガン。

 まだ戦ったことはないけれど、アーサーやブレイブと同格と見ていいであろう強者だ。

 それがヘラクレスと一緒となると、集中攻撃を食らわないように立ち回らなきゃ、こっちの首が一瞬で飛ぶな。


「御託を述べるのは良いでしょう。早速斬らせていただきます」


「グルルル……」


「OK。俺も準備万端なんだ、最初っから全力で行かして貰うぜ」


 俺は両手に握る杖を形状変化させて、ブレードの形を作って二刀に構える。

 モルガンは剣と槍を両方抜き、ヘラクレスも両手剣をグッと構え直した。


「ガアアアアッ!」


「ッ!」


 真っ先に動き出したのはヘラクレス、奴は赤黒いオーラを纏って俺に向かって剣を振り下ろしてくる。

 前のイベントの時に使ってた神剣・マルミアドワーズだったか。

 俺は真っすぐ向かってくるその攻撃を躱し、足元に向けて氷のお返しをぶつける。


「ドラゴ・カリバー、ドラゴ・ミニアド」


「チィ……! ラグナロク・ブラスター!」


「グウウウッ!」


 ヘラクレスは俺の氷で片足を取られ、そのせいでモルガンの剣の攻撃に反応が遅れた。

 俺は槍の方の攻撃を相殺することに成功したが、ヘラクレスはそう行かずに命の一つを散らした。

 モルガンはどっちも狙って、まとめて俺たちを倒す作戦に出たか。

 そうなると、俺も両属性使えるだけにヘラクレスとモルガンの両方を狙うのが良いんだろうけれど……俺は敢えてその場で立ち止まって隙を晒した。


「っ……と」


 モルガンとヘラクレスに杖を向けながら左手の杖に炎を灯し、さも背後からも左右からも狙えますよ──とアピールしていたら。

 俺の頭に向かって真っすぐ矢が放たれていたので、それを右手の杖から出した氷で受け止めた。

 そのおかげで、俺は最初に狙撃してきた奴の位置を再度把握し直せた。


「そこか」


「……あぁ、なるほど」


 モルガンはこれから、この盤面で何をどうするかを完全に理解していた。

 だから俺が真っすぐ走り、肩甲骨から羽を出して飛び始めてもヘラクレスの方へ攻撃を始めた。


「グルアアアッ!」


「囀るな、すぐに楽にして差し上げますから」


 そこをどけ、と言わんばかりに剣を振り下ろしてくるヘラクレスの攻撃を受け止め、モルガンは笑う。

 ……のを確認しながら、俺は空を飛んで次々に放たれる弓矢の狙撃を回避する。

 

「見つけた……でも、アタルンテじゃないのか」


「っ、やば……!」


 建物の上まで飛んだら屋根の上で、どこかで見たことはあった気がするが特に印象のない女プレイヤーが弓に矢を番えているのを確認した。

 狙撃の正確さからアタルンテかと思っていたけれど、どうやらアタルンテに匹敵する狙撃技術の持ち主がいたようだ……スゲーなアルゴーノート。

 けど、俺は魔法で上り詰めたプレイヤーなんだ。だから弓矢相手に、遠距離勝負で負けてやるつもりはない。


「ブラスト・ショット!」


「メギドバースト! メテオ・レイン! 【フィフス・ヘルファイア】!」


「ちょ、助けてオリオ──っ!」


 矢に対してメギドバーストを放って押し返し、両手の杖と合わせて三方向からの攻撃で狙撃手を確実に仕留める。

 狙撃手は慌てて建物から飛び降りるけれど、対比が間に合わずに俺の魔法にアバターが飲み込まれ、木端微塵に消滅した。

 ……今、オリオンって言いかけてなかったか? 今の狙撃手。


「……まぁ、大丈夫か」


 オリオンがこっちに向かってきそうになっても、誰かしら止めてくれると信じよう。

 と、俺は派手に壊した建物の中に降りて、魔王の玉座を魔酒を取り出す。

 モルガンがやってくるか、ヘラクレスがやってくるか……はたまた別の誰かがやって来るか。

 それまでは十分にMPを貯めておくとしよう。

プレイヤーネーム:カオス

レベル:80

種族:混族


ステータス

STR:0 AGI:100(+140) DEX:0(+50) VIT:28(+130) INT:100(+230) MND:65(+135)


使用武器:魔神の王笏×2

使用防具:魔神の髪飾り 魔神の衣 魔神の外套 魔神の手袋 魔神のベルト 魔神のブーツ 魔神の骨指輪

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