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第百六十二話:SBO頂上決戦

「はぁ……あんだけタンカ切ったのに、なんかごめんなさい」


「問題ねえよ、これでもう負けはなくなったんだし……何よりも、俺は最初ハナッからアーサーを叩き潰すつもりでいたからな」


「なんだかそう言われると、私が負けても良かったみたいな……はぁぁぁ」


帰ってきて早々ユリカはショボーンと項垂れていたが、俺は元気付けるためにニッと笑ってやる。

のだが、どうやら悪い解釈をされてしまったみたいで更にため息をついて落ち込んでいた。

ランコがそれを抱きしめて慰めていたが、なんだか悪いことをしてしまったみたいでこっちの気が落ち込みそうだ。


「先輩。今度こそ……今度こそ、勝って来てくださいね」


「……あぁ、わかってる。今度は負けねえ。今度は、本当の本気のアイツを倒して見せる」


ハルは先輩の言葉を代弁すると言わんばかりに、後ろから俺を抱きしめて願うように告げてくる。

俺はその言葉に応え、右腕を天高々と掲げてから人差し指をピンと一本立てる。


「漢、ブレイブ・ワン!まかり通るぜ!」


「応とも!行ってらっしゃいッス!」


「頼んだぞ。ブレイブ・ワン……いや、団長」


「お願いします、お義兄さん!」


ユージン、イチカ、アインの男子組から一気に背中をバシバシバシと叩かれる。

俺はその衝撃を受けながらも、皆に信頼されていることを肌でビリビリと感じる。


「任せとけよお前ら、この俺が本気出すんだ。徹底的に、全力でアーサーをぶった斬ってやるよ!」


「なら、私の分までお願いしますね!」


「そうだよ兄さん、アーサーさんに一発、ドーンとくらわせてやってね!」


「私は先輩が勝つって信じてますから!だから、全力で応援しますね!」


すっかりと立ち直ったユリカ、自分がガウェインに負けたこともあってか仕返しを望むランコ、俺をずっと信じてくれるハル。

女子三人からの熱い応援を貰ったところで、俺はこのメンバーと一緒にSBOに参戦することが出来て良かったと本当に思う。

でも……その言葉を例え胸の内に秘めたとしても、言うのはまだ早い、この言葉を言うのはまだほんのちょっと先だ。


「よーし、ちょっくら騎士王様退治と行きますかね!」


俺はそう言って歩を進める。客席から控室を通り、闘技場への道を一息に駆け抜けて――

思い切り跳躍し、もう既に入場して闘技場の真ん中へと突っ立っているアーサーの目の前に降り立つ。

土煙をあげながら着地した俺は、左腕を天高々と掲げてから人差し指をピッと立てる。


「っしゃぁっ!俺様の入場、参上、即ち至上の試合がここに始まる、ぜっ!」


「随分と威勢の良い掛け声だね。君もエンターテイナーらしくなってきたじゃないか、ブレイブくん」


「おうよ。お前をブッ倒すならこういうのもやれるようになっとかなきゃいけねえと思ってよ」


ま、今の流れに関しては前日にユリカから貰ったカンペ込みで練習した参上文句なんだけどな。

何で俺にこれをやらせたかったのかは知らないし、何の意味があるかは知らないが、コレでアーサーに面食らわせられるなら満足だ。

……なんて思っていたのに、アーサーは余裕綽綽って感じの表情カオでちょっとヤになって来るぜ。


「僕も、君を倒すためにまた腕を磨いて来たんだ。覚悟したまえよ、ブレイブくん。この間みたいな手加減はしてあげないよ」


「そうだな。俺も、あの時みたいに項垂れた残念フェイスでテメェと向き合うような弱さは見せてやんねーよ」


俺とアーサーはキッと睨み合ってそう言い放ち、互いに腰から剣を抜いて構えを取る。

アーサーはエクスカリバーの両手持ち、俺は大悪鬼の剣を右手に握り、大悪鬼の小盾を手に持った状態で構える。


「さぁ、始めようか。SBO頂上決戦を!」


「あぁ!今度は俺が白星を貰ってやるぜ!」


互いにそう言ってからニッと笑い、司会進行の説明が俺たちについての解説を終えた所で――


『それでは、試合、開始ィ―ッ!』


「いぃぃぃっくぜぇぇぇ!」


「おぉぉぉぉッ!」


試合開始の合図と共に、俺とアーサーは大きく一歩踏み込んでからほぼ同時に剣を振り下ろす。

ガァン!と火花を散らしながら早速鍔迫り合いとなり、互いの剣がカタカタと金属音を鳴らしながら震える。

押し込もうとするアーサーに反発せんと踏ん張る俺……このままじゃあ埒が明かないのはわかっていても、引けない。

ここで引けば、アーサーはそのまま畳みかけんと言わんばかりに剣を高速で振るうのが見えているからだ。

かと言って、距離を取りすぎてもバースト・エアが飛んでくるのはもう目に見えていること。

となれば……奴自身が、距離を取らなければならないと判断するように仕向けるまでだ!


「カウンター・バリ――ッ、そう来ると思ったぜ!」


「チッ!存外君も学習するな……!」


前回イベントのようにカウンター・バリアで引き剥がすことを試みようとするのを止めに来る、のを読んだ攻防。

アーサーは俺の腹に蹴りを入れようとしたが、俺はアーサーの足を盾で受け止めてから押し返す。

仕方なさそうに舌打ちしながらもアーサーは飛び退き、俺の遠距離技を警戒してかそのまま三歩程下がる。

このまま踏み込んでもいいが、恐らく俺が二歩踏み込んだところでバースト・エアが来る。

なら!


「これしかねえな!」


「来たか!」


俺は剣に炎を纏わせてから走り出し、アーサーが剣の切っ先を向けた所で剣を両手で握る。


「バースト・エア!」


「フェニックス・ドライブ!」


不死鳥を象った炎と小竜巻が激突し、爆発と共に煙のエフェクトを起こす。

その煙を突っ切って、俺は剣を肩口まで持ちあげてから水平に構える。


「ゴブリンズ・ペネトレート!」


「エクスッ、カリバァーッ!」


エクスカリバーの驚異的な力は、凡そ剣の間合いとは思えないほどの射程範囲。

しかし、それは接近して同じくらいの威力のスキルで封じてしまえば、大した脅威ではない。


「オォッ!」


「せあっ!」


お互いの必殺スキルが相殺されると、アーサーはすぐさま通常攻撃で俺を倒さんと剣を横に薙ぐ。

俺はそれを盾で受け止めてから突きを返すが、アーサーは半身を捻ってから避けると同時に体の流れに逆らわずに斜め下から剣を斬り上げてくる。

当然受ければダメージは免れないので、俺は一歩下がって避けようとするが流石にゼロ距離で剣の切っ先を躱すことは叶わなかった。

胸の辺りを撫でるように斬られて僅かにHPが減るが、それくらいで怯んでいてはこの野郎相手に張り合えることはない。


「ッ……!オラァ!」


「ぐぶっ、やるね……!」


俺は追撃のために一歩踏み込んでくるアーサーから逃げようと足を後ろに下げるフリをしてから、思い切り前に出て頭突きを食らわせる。

頭に攻撃を受けてアーサーはほんの一瞬だがよろめき、HPバーへと一瞬だけ目線をやってから後ろへと跳ぶ。

エクスカリバーかバースト・エアが飛んでくるだろうが……ここは詰めよらず、カウンター狙いで俺はスキルの詠唱を始める。


「くらえ……!エクスッ、カリバァァァ!」


「ッ……!う、お、おおおっ!」


高速で放たれた光の斬撃、俺はシールドを足場代わりに高く跳躍し、エクスカリバーを回避する。

剣を振り下ろした姿勢のまま止まっているアーサーは驚愕の目で俺を見るが、俺はその隙を見逃さない。

詠唱したスキルの通り、俺は右手の剣を思い切り振り上げながらアーサーの首目掛けて剣を振り下ろす。


「オーガ・スラッシュ!」


「っあ……!おぉっ!」


だがアーサーもただ黙って斬られる間抜けではなく、オーガ・スラッシュを致命傷にならないギリギリで受けた。

HPは確かに減ったが、これくらいなら何ともないダメージなんだろう……しかし、俺はそのままもう一歩踏み込んでからショルダータックルをお見舞いする。


「ぐっ、くそっ!」


「温いぜ、アーサー!」


アーサーは苛立ったように袈裟斬りを放つが、俺は冷静にその行動を見極めてからしゃがみ逆袈裟斬りを返す。

更にダメージが入ってアーサーはよろめく……よし、このままいけば……!殺れる!


「ゴブリンズ――」


「っ、そう何度もやられる僕ではないよ!」


「おぶっ……!」


俺のスキルにアーサーは真正面から対抗して来るかと思ったが、予想に反してアーサーは素手で俺を殴って来た。

その衝撃で数歩ほど下がらされるが、アーサーはたった一歩の踏み込みで俺に肉薄して来る。


「ッ!せあぁぁぁっ!」


「ハァッ!」


迎え撃つために横薙ぎを放つ俺、アーサーは縦斬りでそれを相殺し、返す刀で一閃。

盾で受け止めてこそいたが、俺はバランスを崩される。


「せいっ!」


「うっぐ……!」


横薙ぎが俺の腹を掠め、ダメージが蓄積されるが俺は一度落ち着くために後ろに跳んで息を吐く。

だがアーサーはそんな余裕すら与えないと言わんばかりに、踏み込んでくる。


「バースト・エア!」


「フェニックス・スラスト!」


至近距離でのバースト・エアにはドライブではなくスラストを合わせ、打ち消してから俺は盾を構える。

予想通りアーサーの刺突が俺の盾に直撃し、俺は盾を引くと同時に縦斬り。


「っと!」


「チッ、うっるぁぁっ!」


アーサーはまたも半身を捻って縦斬りを躱し、体をその流れに預けながら逆袈裟斬り。

盾で受け止めても、俺は下がらされてしまってアーサーのお得意の間合いへと入ってしまう。


「ソード・セイントショット!」


「フォース・スラッシュ!」


飛んできた光の斬撃を叩き落とし、真っ直ぐ向かってくるかと思いきや回り込んでくるアーサーの方に向き直る。


「流星剣!」


「流星盾!」


お互いの流星シリーズのスキルを相殺し、俺たちは最初に立っていた位置と入れ替わったように立って睨み合う。

ここまでの攻防でお互いのHPは自然回復もあってかまだ1割ずつしか削れていない。

となれば……!当然、俺もアーサーも考えることは一緒だったらしい。


「超加速!」


同時にそう叫んだ俺たちは一歩踏み込むと、すぐそこにある剣を超高速でぶつけ合う。

さっきまでの鍔迫り合いのようになることもなく、ただ当てる事だけを目的とした剣戟が響き合う。

与えられた僅かな時間、しかしその僅かな時間は俺たちのようなスピードアタッカーを更に速くする。


「う、っ、お、お、お……!オオオオッ!」


「ッ、ああああああああああああああッ!」


本当にここまで高速で剣戟をぶつけ合っているのならば、当然肺活量が限界になるだろうから声なんて出せっこない。

だが、このVR空間で俺たちはお互い獣のように咆哮し、散る火花と鳴り響く金属音に集中しながら回避と攻撃を繰り返す。


「ハァァァッ!」


「オッルァァァ!」


何度目になるかわからない金属音と火花の散るエフェクト、俺たちは走りながら剣をぶつけ合わせ、時々のジャンプやステップがお互いの体に剣をカスらせる要因を作る。

ゆっくりと、ゆっくりと……それでも、確実にアーサーも俺もHPバーを減らされつつあるが、防御力は俺の方が上だ。

だから、攻撃力が殆ど同じくらいの数値で、同じ回数攻撃を受けていても、HPの減りは俺の方が遅い!


「くらえ!」


「ッ!今は僕の方が不利か……!」


アーサーも俺のHPの減りが遅いことに嘆き、距離を取ってから大技で決めようとしている。

だが、みすみすやられてやるほど俺も親切な人間ではないので、アーサーが剣を大上段に構えた所で俺は対アーサー戦における秘策を繰り出す。

KnighTにもヘラクレスにも使わないで勝てたのは行幸だったが……アーサーに使っても勝てるとは限らない。

だが、少なくとも初見である以上アーサーを驚かせるくらいのことは出来るはずだ!


「【ウェポンリンク】……!」


ウェポンリンク……大悪鬼シリーズへと覚醒してから目覚めた、俺の新たなスキル。

このスキルは、俺のアイテムストレージ内にある武器と今持っている武器をリンクさせ、相互の限定効果を発揮することが出来る。

そして、俺がアイテムストレージの中に入れて、今この剣とリンクさせた武器は――!


「受けるがいい!ロンゴミニアド!」


「行くぜ、アーサー!うおおおっ!アロンダイトォッ!」


俺の剣は水色のライトエフェクトを纏い、アーサーの剣から放たれた光の大槍とぶつかり合う。

前のイベントでは反応することすら敵わなかったこの大技に、俺は今借り物でも十分な強さを持つ剣をぶつけられた。


「うううっ、おおおおおおおああああああッ!」


「なんだと……!?」


俺はロンゴミニアドを断ち切り、一気に間合いを詰める。

親友、基ギルドサブマスターの持っていた剣を俺が使うことに、アーサーは動揺した。

その動揺が、俺たちのような剣士にとっては最高の命取りだ!


「ッ、しまっ」


「ゴブリンズ・ペネトレートォッ!」


「うぅぅぐあぁあああっ!」


アーサーは下がって体を貫かれるには至らなかったが、かなりのダメージを負ったようだ。

HPバーはもう半分を切り、着ている鎧にもヒビが入って防御力は落ちているだろう。

だが、それでもアーサーのHPはまだ4割は残っており、まだまだアーサーを倒しきれるほどじゃない。

アイツの奥の手がある以上、まだこんなところで油断なんかしていられない!


「やるね……まさか、アロンダイトを君が使うとは」


「あぁ。つっても、お前に通じるのはこの一度きりなんだろうけどな」


俺は立ち上がるアーサーからも視線をしっかりと見つつも、スキルの詠唱をしつつ距離を取る。

絶対に勝つために……俺は集中力を高め、盾を前に構えつつ腰を落とす。


永久之理想郷アヴァロン――!」


「鬼化――!」


俺とアーサーの戦いの第二ラウンドが始まった。

プレイヤーネーム:アーサー

レベル:80

種族:人間


ステータス

STR:119(+200) AGI:119(+150) DEX:15(+90) VIT:20(+150) INT:0(+120) MND:20(+150)


使用武器:真・エクスカリバー

使用防具:真・獅子の兜 真・騎士王の鎧 真・暴風の衣・上 真・暴風の衣・下 真・騎士王の籠手 真・技砕ノ靴 真・理想郷の鞘

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