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ゼル物語  作者: 山乃将暉
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世界樹の意思

「まだ、ゼルが生まれる前、お父さんとお母さんは昔冒険者だったの。」


「冒険者?」


「ええ、冒険者というのは特定の組織に所属せず、自由とロマンを追いかける人たちのことよ」

母さんはウィンクしながら教えてくれた。


「そうなんだ…。俺はそんなこと全然知らなかった、村のみんなもそういう感じじゃなかったのに」


「ふふふ、村の皆さんは私たちを心よく迎え入れてくれたの。冒険者はその時に辞めたわ 。」


「どうして冒険者辞めちゃったの?」


「私たちが辞めてしまったのは、今回の事に少し関係があるの。」


「魔族のこと?」


「そう、魔族よ。私たちはある遺跡で魔族の事を知ったわ。そこである出会いがあったの。」


母さんはそう言うと思いだすように話してくれた。


「伝説では魔物との戦いに勝利を導いた英雄だとなっているけど、その遺跡には隠し部屋があって、伝説についてのの壁画が描かれていたのよ。」


「その壁画に書かれていたのは伝説通りだったわ。けれど違っていたのが魔物だけでなく魔物の軍を率いるように描かれていた者がいたことだったの。」


「そっか、そこで母さんたちは知ったんだね。」


母さんたちが冒険者だったこと、遺跡での隠し部屋の発見、魔族の壁画、母さんと父さんは俺が知ってる両親のイメージとは全く異なるイメージだった。


「ええ、ただ私たちはすぐに魔物を率いているのが魔族という名前だとは知らなかったの。」


「え、どういうこと?」

「私たちが壁画を発見してすぐの事よ。私たちは不思議な光に包まれたの。包まれた後、私たちは白い空間にいたの。そこで会ったのは“世界樹の意思”よ。」


「世界樹の意思?」


「伝説だけで伝わっている存在よ。この世界のどこかに世界樹と呼ばれる巨大な樹があるということ、世界樹は全ての歴史を見てきたと言われているけど、まだ誰も発見していないし知っている人も少ないのよ。」

「世界樹…。初めて知った…。」


「ふふ、一部の冒険者と国の上層部しか知らないのよ。ゼルが知らないのも無理ないわ。」


「みんな知らない情報なんだ」


「続きを話すわ。私たちは世界樹の意思と会い、そこで初めて魔族というのを教えてもらったの。その時に世界樹の意思から必要に迫られた場合、一度だけ記憶を共有する方法を教えてもらったわ。今からその術をゼルにかける。共有しながらも喋れるから安心してなさい。」


「うん、わかった。」


「じゃあ、やるわよ。」


母さんと僕の体が光始める。

眩しくて目を閉じたけど、開けたときには白い空間にいて、僕はいないのにそこにいる感覚になったんだ。


〈ゼル?聞こえるわね?さっきも言ったけど、私たちはこの白い空間に移動させられたわ。これから始まることをよく見ておきなさい。〉

〈うん〉


「どこだここは!エレナ無事か?」


「私は無事よアルト!それにしてもここはどこだというのかしら。」

「よく来ましたね、アルトにエレナ。私は世界樹の意思。世界樹の代弁者です。」


若い母さんたちの前にはフワフワとした光の玉が突然現れ語り始めた。


「世界樹だと!?まさか伝説での存在が本当に存在しているというのか…。」

「ええ。けど問題はその世界樹が私たちに何の用かってことね…。」


『あなた達を呼び出したのはあの壁画についてです。』


「そうだ!俺たちはあの壁画を見つけた途端に空間が発光して。」


「気づいたらこの空間にいたわね…。それで?私たちにあの壁画の謎を教えてくれるの?言っておくけど、あんな魔物を率いているやつなんてこれまで聞いたことないわ。」


『それは当然です。世界樹は意図してその事を記録に残せないようにしてきました。いいですか、アルト・エレナこれから言うことは秘匿事項です。当然、他言は出来ないようにここでの記憶を封印し、後に生まれるあなた達の子供にここでの記憶を見れるように施します。』


「なんだそれは!言うだけ言って記憶を封印だなんて!」


『今はまだその時ではありません。それまであなた達には普通に生きていてほしい。理解しなさい。これは世界樹の意思であり、優しさです。』


「アルト、何を言っても無駄よ。私たちはただ条件を飲むしかないわ。」


「しかし!」


「どうせ記憶を封印されるなら知らないのと同じだわ。だったら聞くだけ聞いたらいいのよ。」


「エレナ…。おまえは偶に豪胆がすぎる…。」


「ふふ、そんな私に惚れたのはどなた様かしらね?さ、私たちの覚悟は決まったわ。話してちょうだい。」


『ではこれから壁画に書かれていた、魔物を率いる者の正体を教えます。』



〈世界樹なんて存在していたんだね〉

〈そうね、私もこの記憶をさっきまで失っていたから。知っていたのに知らない事を見せられてるような不思議な気持ちよ。〉


『魔物を率いている者、その正体は魔族です。かつて、グエン=フィールが倒したのは魔物の集団ではなく軍勢だったのです。』


「なんだと!?そんな…。伝わっている話と違いすぎる…。突如大量発生した魔物に国や都市は追い込まれ、そこにグエン=フィールが武器を発現し魔物共を倒すに至ったという事ではなかったのか。」


『わざと情報を操作し、そのように伝わることにしました。続きを話します。この魔族は過去3度現れました、1度目はグエン=フィール、2度目がユイ=クラース、そして3度目がカール=シンの3名によって魔族率いる魔物たちを倒してきました。』


「ユイ=クラースにカール=シンですって?過去の大戦の英雄ばかりじゃないの…。」


『この3名の名前を後世に伝わるようにし、この遺跡を用意し、来るべき時にこの空間に移動するように準備していました。全てはもう一度魔族が現れる時を予見してのことです。』


「何!?世界は再び混沌と争いの時代になるというのか!世界樹の意思よ!私たちはどうすればいいのだ!」


『子供が生まれたならば、その子供を鍛えなさい。それがあなた達に出来る全てです。』


「俺たちの子供だと!?子供なんていつできるかも生まれるかもわからないのに…。訳もわからないまま鍛えろというのか。」


『エレナ、わかっていますね?』


「どうやら何でもお見通しのようね…。」


「エレナ?」


「今日にでも伝えようと思ったのにこんな伝え方になるなんてね…。聞いてちょうだいアルト、私たちの子供ができたわ。」


「本当かエレナ!?」


「本当よ。ふふ、もっと言うタイミング考えてたんだけどね。」


「やったぞ!エレナ!!俺たちの子供か!!」


〈この時に初めてお父さんはゼルがこれから生まれることを知ったのよ。見ての通り大喜びだったわ。〉

〈うん、こんな時でも父さんは父さんだね。〉


『宜しいですか?時間もないので続けますよ。エレナの言う通り、あなた達には子供が生まれます。その子供が人間たちの希望となります。子供には何も伝わらないよう、この場で記憶を封印します。魔族が現れれば、封印した記憶が甦り、この場の事を伝える術が使用できるようにしておきます。』


「私たちの子供が…。この子には平和な時代を生きてほしかったのだけど…。」


『それでは私からの話はこれで終わりです。これから術を施します。』


「言うだけ言って終わりだというのか!もっと情報はないのか!?」


『残念ですが私には時間がありません。封印を施す時間が足りなくなってしまうので以上です。』


「クソ!エレナ!」


「ええ!絶対に忘れへないようにするわ!」


『では記憶を封印します。』


もう一度母さん達を光が溢れる。

俺たちは気付けば元の避難所にいた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

次回のお話もどうぞお楽しみに!

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