魔物
すぐに走り始めて森を抜けた。
普段は綺麗に見える村が、所々黒い煙があがっているのが見える。
「なんだっていうんだよ…。みんな、無事でいてくれよ」
村に着くと入り口で倒れている村人がいた。
「おい!大丈夫か!?」
「…ゼルか?魔物に襲撃せれた…。仲間がすぐに鐘で緊急事態を伝えたが、俺も二匹倒したが気を失っていたみたいだ…。」
「魔物!?なんだよそれ御伽噺だと思ってたぞ…。」
「現実に起こってしまっている…。今村長達が避難誘導しているはずだ、ゼルも緊急避難場所はわかるな?」
「あ、あぁ。わかるけどさ…。ただ、村長の息子が黙って逃げられるかよ!」
「ダメだ!おまえはまだ子供だ!」
「俺だって森で訓練してたんだ!他のみんなが安全に逃げられるまで俺も手伝う!」
「…変に頑固なところが親父に似やがって…。危なくなったら絶対に逃げろよ!」
「わかってる!おっさんも早く逃げろよ!!」
「あぁ!気を付けるんだぞ…!」
おっさんと別れ俺は魔物に見つからないように建物の陰から村の広場へ目を向けた。
「クソ!あと3体だけだ!みんなあと少し頑張れ!」
「おお!!」
広場は父さんたち大人が魔物と戦っていた。
中心に逃げ切れなかった人たちを囲って、魔物から守っていたんだ。
「あれが魔物…。」
魔物は3体ずつ形が違っていた。
狼の姿のやつ、醜い小人のやつ、カマキリの姿をしたやつ。
倒されているのも6体、同じ奴が2匹ずつ倒されていた。
「父さんたち9体も相手に戦っていたのか…。何とか逃げ遅れた人たちを逃がせないか…。」
何かないか周りを見ていると一軒の家に目がいった。
「そうだ、あの建物は花火職人たちの作業場だ!中には火薬が保管されているはずだ!うまく中に入って火薬を入手できれば…。」
父さんたちの顔は疲労で白くなっている。
いつやられてもおかしくない…。
「俺がやらなきゃ…。」
『ダメだ!おまえはまだ子供だ!』
『危なくなったら絶対に逃げろよ!』
さっきの会話が頭をよぎる。
「クソ!こんなことでビビッてたまるか!みんなの命がかかってんだ!行くぞ俺!気合を入れろ!」
喝を入れて、建物の裏手にダッシュし成功する。
走っている時に父さんと目があった。
「な!?」
指を口につけ、静かにと父さんに合図する。
「あいつめ…。頼むぞ…。」
「よし!侵入成功だ!」
中に入った俺は目当てのものを見つけた。
「これだ!制作中の花火があるぞ!あとは着火用の導線をくっつけて…。出来た!」
危険ではあるが何とか導線の接着に成功した。
あとはこれを魔物の方に投げるだけだ。
「うぉぉぉ!」
「ガァァァ!!」
成功し、一息していると父さんたちの戦う声が大きく聞こえた。
「やばい!均衡がくずれたか!?急がないと!」
建物の外に出て、魔物たちの姿を確認する。
「よし、姿は確認できた。あとはあいつらに向かって投げるだけだ!」
導線に着火し直後にジジジジと火花が火薬に走り始める。
「いっけーー!!」
投げた花火は見事にあいつらの真後ろに落ちた。
カッ!バーン!
火薬に火が付き、一気に爆発した。
「ガ!?」
「今だ!!全員総攻撃だ!!」
「なんだ!?お、おぉ!!」
隙を作り直ぐに体制を立て直した魔物だったが、父さんたちの総攻撃には耐えられなかった。
「おまえで最後だ!!」
「ガァ!」
父さんの一撃に倒れる魔物。
「よっしゃー!」
「みんなよくやった!!こいつが最後の一匹だ!おい!ゼル!そこにいるんだろ!」
「ゼル!?あの爆発はゼルがやったのか!?」
「あぁ、あいつが花火職人たちの家に入るのを見ていてな。」
「へへへ、みんな無事でよかったよ!」
鼻の下を擦りながら俺はみんなの前に出て行った。
「ゼル!成功したから良かったがな、おまえの身も危なかったんだぞ!」
父さんは俺の両肩を握って言った。
「わかってるさ!ただ、俺も村のみんなを助けたくて…。」
「全く!こんな所俺に似やがって!あとで母さんにも叱ってもらうからな!」
「うわ!それは勘弁!!」
「はは、でも助かったぞ。みんなおまえのおかげで無事だ。」
「ありがとう!!」
「やるじゃないか!」
「流石村長の息子!」
父さんからと村のみんなから叩かれながらそう言ってきた。
「痛いって!でもみんな無事でよかった!!」
少し涙目で言い、みんなと笑いあった。
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