異変
それから5年。毎日走り込みをしている。
最初はすぐに息が苦しくなるし、足だって重くなる。
父さんも一緒に走り込みをしているけど、1年も経つと
「もう一人でも大丈夫そうだな!」
と言って仕事に戻ってしまった。
勘違いしてほしくないが、父さんは”俺”を放棄したわけでも冷たくした訳でもない。
魔物の行動が活発化している為、周辺の村や街と合同会議をしに出掛けているからだ。
「おーい!ゼル!今日も走り込みかぁ?」
「ああ!これから行ってくくる!」
「頑張れよ!これ食ってけ!」
「サンキュー!」
もらった果実を食べながらいつもの森に向かう。
「よし!今日も始めますか!!」
しっかりストレッチをしてから腰に木剣を下げて走り始める。
20周はもう俺にとっては短い距離でしかない。
俺の今の訓練は走り込み50周に剣術、センスの習得をしている。
さて、このセンスを説明しよう。
火、雷、水、土、風をベースに『センス』と呼ばれている。所謂魔法だ。
その他に『ハイセンス』と呼ばれる光、闇、時を使える者もいる。
誰でも使えるが使用する人間の才能によってレベル(level)の上限がある。
このlevelによって威力・規模に差が出る。1~5までのレベルに分かれており、5が最上位レベルだ。
Level1 生活系が多い。例)水を出す、火をともす。
Level2 基本的な下位魔法。センスの武器化。例)玉、槍、矢、シールド
Level3 中位魔法。武器に属性効果を付与し、威力や身体能力の向上がある。
Level4 上位魔法。威力・規模をlevel2の二倍の強さ。大玉、大槍、ヒュージシールド。
Level5 最上位魔法。終戦魔法とも呼ばれる。一発で戦いを終わらせることからつけられた。使用できたのは過去の3英雄だけだ。
「ただなぁ、このセンスが難しいんだよなぁ。」
走り込みを終えた俺は座り込んで考える。
「いくら才能次第とはいえ、過去には訓練で自分上限をあげた人もいるんだよな。」
「わふ!」
「なんだワンコ!来てたのか!」
「わふ!」
こいつはいつも俺の訓練終わりに来る大型の犬だ。
この森に住んでいるらしく、初めて会った時からやけに懐かれている。
「今日も俺の昼寝に付き合ってくれるのか?」
「ウォン!」
「はは!ありがとな!」
俺の横で犬も伏せて腕に顎を乗せて目を瞑る。
少し笑いながらワンコを撫で、俺も横になるとしよう。
「少しだけ、少しだけな…。」
カン!カン!カン!カン!カン!カン!
「はっ!寝すぎた!なんだこの音…。って寝ぼけている場合か!この鐘は非常警鐘だ!!村に異変があったんだ!ワンコ!」
「わん!」
「俺は村に戻る!危ないかもしれないから、森の端に逃げておくんだ!」
ワンコは返事をしての奥へ走って行った。
俺も急がなくちゃ。