010、クエスト報酬とか色々
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「よいしょっと」
ジューザは飛びかかる魔物ネズミをひょいとつかみ、首をひねった。
ポキンと嫌な音がして、あっさりネズミは絶命する。
「10匹ばかりいやすね。これでもう用件は片付いちまったい」
「すごいねー……」
パキケファ近くのダンジョンの中、僕たちは襲ってきた魔物ネズミをあっさり撃退。
というか、やったのは全部ジューザであるが。
「入用は皮だけだけど、肉も内臓も売れやすからかねえ、全部持ってきましょうや」
「ああ、うん」
「おっと、血抜きしといたほうがいいな」
言ってジューザはネズミの首を掻き切った。
ナイフなどを使わず、素手であっさりとやってのける。
「おい、ちょっと待った。ここでそんなことしたら、他の魔物が……」
言っている間に、あちこちで魔物ネズミの鳴き声が響き始める。
「注文の分だけ確保しとけば、後は別にかまわねえでしょう」
「え、何言ってんの?」
迫りくるネズミの群れに、ジューザは平然としている。
確かに魔物ネズミ程度ならあっさり勝ってしまう実力。
だが、それでも群れを成して襲ってくる相手は脅威なわけで――
「ブッ!」
いきなり、ジューザは口から赤く輝く炎の塊を吹き出した。
火球は赤い筋を引いて宙を飛び、ネズミに命中。
「ぎゅあ!!!」
途端に魔物ネズミは真っ赤に燃え上がって逃げ出していく。
ジューザは続けざまにどんどん火球を吹き出し、ネズミを駆除していった。
魔物ネズミは炎に反応して、動きが乱れている。
そこを狙ってさらに火球を吐くジューザ。
たちまち焦げ臭い悪臭が充満して、ネズミの群れは逃げ去っていった。
「…………。今のも魔法?」
「まあ、似たようなもんで」
僕の質問に、ジューザはケラケラ笑って胸を叩いた。
……。
血抜きが終わった後、ジューザは10匹のネズミをひとまとめにする。
それから、ひょいっと簡単に背中へ背負ってしまった。
「じゃ、帰りますか」
「あの、それ重くないの?」
「ぜんぜん?」
「すごいな……」
そして、特に障害も問題もなく、僕たちは街に帰還した。
絶対人目につくと思ったのだが。
獲物を背負うジューザの姿は別に騒がれることはなかった。
適当な場所で皮を剥いだ後、
「じゃあ、これを持っていきなせえ。残りは行きつけの肉屋に売っ払ってきまさあ」
「肉屋って、ネズミの肉だけど……」
「それが何か?」
ジューザは不思議そうにする。
「いや、ここじゃそういうもんなのかな」
少なくとも、バロでは魔物の肉を食う習慣はなかった。
まあ、魔物と言っても大きな動物型から不定形のスライムまで多種多様なのだが。
「やっぱり早かったですね」
ギルドのカウンターに行くと、受付が迅速に手続きをしてくれた。
「やっぱり?」
「あの子とパーティーを組んだのでしょう?」
おそらくはジューザのことを言っているのだろう。
「ジューザって、有名人なんですか?」
「そういうわけでもないですが、冒険者以外で魔物退治をする人材は少ないですから」
「あああ」
そういえば、魔物退治は冒険者以外には困難だと聞いたことを思い出す。
「えっと、ここでも冒険者っていうのは、よそから召喚されるんですか?」
「似たようなことをする者はいますが、基本冒険者とはそういうモノですね」
やっぱり、冒険者=被召喚者ということか。
「ここでも、召喚をやってるんですか?」
「そう聞いています。このジャンブー大陸ではほとんどの国で行われますね」
「……冒険者って、みんな僕みたいな感じですか? その、人種的に」
「さあ。何しろ時期や土地、召喚に使用される召喚石の質で異なるそうですが」
必ずしも、日本の若者ばかりではないということか?
「呼ばれるのは人間だけ?」
「いえ、たまに他種族が召喚される場合もあるとか。見たことはないですけど」
変なのが来たら、さぞ困るだろうなと思いながら、僕は思考を移す。
「ここでは魔物討伐の他にも仕事はあるんですよね。動物の世話とかないですか?」
「獣医の仕事ですか?」
受付はキョトンとした顔になる。
「まあ、そういうんですかね。動物とかの怪我とか病気を診るクエストとか」
「あんまり、聞いたことはないですねえ……。医者やポーション作成を求めるものはけっこうあるんですが……」
「はあ」
やっぱり、そう上手く運ばないようだ。
「何かそういう技術とか能力がおありで?」
「いや、その」
「冒険者の中には、他にはない特殊な能力を持つ人もいるそうですが」
(僕もそういう中の一人か……)
人以外なら有効な回復魔法。
冒険者というものの特性からして、割と使い道が限られているかもしれない。
「よろしければ、募集をかけてみますか?」
「え、そういうのできるんですか?」
「ええ、例えば動物の怪我や病気を診るので、依頼者募集――とかね」
「ほーん……」
なかなか親切なこともしてくれるようだ。
「じゃあ、ちょっとお願いできます?」
「いいですよ? 募集期間でお値段が変わりますが」
「え」
「手数料をいただくことになってますので」
「ですよねー」
プランを聞いてみると、そう高くもないが、あまり安くもない。
とりあえず、様子見の半月で手を打つことにした。
「料金はクエストの報酬金から引いておきますか?」
「あ、それでお願いします」
「では、こちらになります。お確かめを」
毛皮のクエストはそれなりの報酬をもらえた。
(全部ジューザにおんぶにだっこだから、微妙な気分だけど……)
しかし、少なくとも武装などをキチンと整えるまでは世話になるしかない。
意地も張りたいところだが、それで死にたくもないだ。