Erytheia
それは、恐ろしくも美しい色彩に包まれていた。
chapter.1
夕暮れの街にポツリと立ち尽くす一人の少女。冷たい眼差しで街中、沈む夕日を見つめていた。
ここは誰もいない街、「ユートピア」。かつて理想郷と名付けられた街は、もはや面影すら残さずゴーストタウンと化していた。並ぶ家々は、埃まみれに廃れ果て、小さな三角公園の崩れた遊具は烏の寝床となっていた。道路脇に捨てられた、フロントガラスの割れた自動車は、もう走ることも出来ないだろう。
少女は誰もいない街に独り居た。
人々が姿を消した原因、それは数年前にとある病が蔓延したことにあった。感染したら最後、患者達に未来はない。感染しなかった者は病に怯え、次々と街から立ち去ったのだ。
夕日を睨む少女は、腕を組み苛立った様子。それを表すように足は貧乏ゆすりを始めていた。背中に背負う大剣が、その光景の異様さを際立てる。
「この時間帯って聞いたんですけどねぇ」
まだ幼さの残る声、一つに束ねた純白の髪が橙色から黒に変わるその時間。
廃墟が眩むその瞬間に、待ち望んだ「それ」は現れた。
人間の悲鳴によく似た音だった。雑音混じりの鳴き声が死んだ街に木霊する。大きな何かが近づいてくるような、四足歩行の足音が地面を揺らす。
ひび割れたビルの間から顔を出したのは、一言「化け物」と言えば済むような、あまりにも大きな異形の怪物だった。
それは、
それは、恐ろしくも美しい色彩に包まれていた。