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お兄ちゃんの仇? 竜との対峙

 アニーが洞穴に近付くと、何やら唸り声の様なものが聞こえてきた。


「……居る?」


 アニーに緊張が走る。と同時に熱いものが込み上げてきた。アズウェルが追い付くのを待つのが賢明なのはわかっている。しかし彼女は自分の衝動を抑える事が出来なかった。


「うわあああぁぁぁぁ!!」


 剣を抜き、叫び声を上げてアニーは洞穴に向かって突進した。その声に反応したのか、洞穴から一匹の竜が顔を出した。アニーはその竜が兄の部屋で見た竜だと直感した。


 竜はアニーの姿を見るとのっそりと動き出した。アニーは竜の前に躍り出ると、その首に思いっきり剣を振り下ろした。だが当然の様に竜の固い鱗にはじかれ、その衝撃に手が痺れたアニーは危うく剣を落としてしまいそうになった。

斬れはしないものの、鉄の剣で斬りつけたのだ、言わば鉄の棒で殴りつけたのと同じ事。人間だったら骨を砕かれ、打ちどころが悪ければ生命にもかかわりそうなものだが竜は平然としている。ドラゴンキラーを以てしても竜に敗れたスレッガーの無残な姿がアニーの脳裏に浮かんだ。


「お兄ちゃん、お母さん……ごめんなさい」


 覚悟を決めて目を瞑ったアニー。しかし、竜は彼女に襲いかかってくる事は無かった。不思議に思ったアニーがうっすらと目を開けると、竜の背中が見えた。一匹の竜がアニーを守る様に立ち塞がっていたのだ。


「アレックス?」


 アニーが問いかけるが、その竜は応えようとしない。


 睨み合う二匹の竜。いや、睨み合っているのでは無かった。洞穴の中に居た竜が悲しげな目をしているのをアニーを守る様に立った竜が慈しむ様な目で見ていたのだった。


「お前、マイクだろ?」


 洞穴に居た竜に向かってアニーを守る竜が話しかけた。


「マイク……お兄ちゃんと同じ名前?」


 何故、洞穴の中に居た竜が兄と同じ名前なのだ? しかも、この竜の声はアレックスの声では無い。聞き覚えがある声だ。アニーは混乱しながらも、ある名前を呼んだ。


「アズウェル?」


 彼女の呼びかけに応える様に竜が振り向いた。


「アニー、すまない」


 竜はそれを肯定も否定もせず、何故か詫びの言葉を口にした。そしてまたマイクと呼んだ竜に向き直った。


 竜と竜の戦いが始まる? アニーの背中に冷たいものが走ったが、二匹が戦うことは無かった。


「マイク、落ち着け。怯える事は無い。お前のありたい姿を思い出すんだ」


 アズウェルと呼ばれた竜がゆっくり語りかけるとマイクと呼ばれた竜は目を閉じ、何かを考えている様な素振りを見せた。固唾を飲んでアニーが見ている前で、その竜は人間の姿へと変わった。


「お兄ちゃん!」


 思わず駆け寄り、抱き付くアニー。すると後ろからアズウェルの声がした。


「アニー、マイク、よく聞いてくれ」


 アズウェルは昔語りを始めた。




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