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アズウェルってお父さんみたい

 待つ事数時間、竜が戻って来る気配は無い。


「これは長丁場になりそうだな」


 二人は野営も辞さない覚悟で腰を据える事に決めた。しかし野営と言ってもテントも寝袋も持っていない。冬でなくて良かったと思うアニーだった。


 寝る場所はどうでも良い。もとより眠る気など毛頭無いのだから。しかし食べる物は必要である。二人は食料調達の為に一度森を出る事にした。調達と言っても狩人のアズウェルが一緒なのだ。湖に木の枝で作った簡単な罠を仕掛けると数分後には二人が食べるには十分以上の魚が捕れ、アニーを驚かせた。


「まあ、こんなもんだろ。腹が減ってはなんとやら、とりあえずメシにしようぜ」


 木の枝を集めて火を点け、魚を焼く。キャンプなどで良く見るシチュエーションだが、残念ながらそんな楽しいものでは無い。それにアニーは一つ、大きな失敗をしていた。


「塩が無い!」


 野営をする予定は無かったので塩を持ってきていなかったのだ。せっかく獲りたての魚だと言うのに……塩を振って焼くのと振らないで焼くのとでは大違いだ。しかしそんな事はまるで意に介さない様にアズウェルは魚を頭からかぶりついた。


「あっアズウェル、それまだ焼けてないよ」


 アニーが言うが、アズウェルは構わず食べ続ける。そして骨や内蔵も残さずにペロリと一匹食べ終わると、二匹目に手を出した。


「そんなにお腹空いてたんだ」


 呆れて言うアニーにアズウェルは言い返す。


「食える時に食っとかんとな。ところでアニー、何故骨を食べない? 骨が丈夫にならんぞ」


 お母さんみたいな事を言うものである。


「こんな大っきい骨、食べれないわよ!」


 アニーが反論する通り、捕れた魚は結構大きく、その背骨は太く、固いものだった。


「しょうがないなぁ。あっ、こら! 内蔵を捨てようとするんじゃない!」


「だって、苦いんだもん」


「お前と言うヤツは……甘やかされて育ったんだな」


 バリボリと音を立てて骨を噛み砕きながら言うアズウェル。アニーは溜息混じりに言った。


「普通、女の子はこんなの食べないわよ」


「まったくしょうがないな」


 困った顔をするアズウェルを見て、アニーはくすりと笑った。


「なんだ、笑うところじゃ無いだろ」


 アズウェルがムッとして言うが、アニーは微笑んだままで答えた。


「なんか、お父さんって、こんな感じなのかなって……」


 思いもよらないアニーの言葉に固まってしまったアズウェル。


「あ、ごめんなさい。お父さんって年齢じゃ無いわよね。お兄ちゃんてトコかしら。でも、私のお兄ちゃんは一人だけなんだから」


 父親扱いされてアズウェルが気を悪くしたと思ったのだろう、アニーが詫びる様に言った途端アニーの顔が暗くなった。


「お兄ちゃん……」


 俯いて呟くアニー。兄マイクの事を考えているのだろう。


「アニー、あのな……」


 アズウェルが話かけた時、アニーが立ち上がった。


「私、行ってくる!」


「あっ、コラ! 待てアニー!」


 駆け出したアニーを止めようとしたアズウェルだったが、火の始末をしなければならない。アニーも無茶はしないだろう。なにしろ先日アレックスと対峙して弄ばれたばかりなのだ、竜の強さは身に染みている筈。そう考えたアズウェルは、落ち着いて火を消してからアニーの後を追った。




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