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二話 塔からの解放(一)

 竜騎士の一人、クロード・ディルガーは出入り禁止区域になっている黒薔薇の塔の近くに来ていた。竜騎士として一緒に過ごすようになった竜のルイと一緒に。クロードはある人物を探していた。探し回ってこの禁止区域にまで来ていた。


≪クロード≫

「分かっている」

≪本当かい?もう出入り禁止区域手前だよ≫

「分かっているんだ、ルイ。でもな、ここぐらいしか残っていないんだよ」

≪クロード≫

「分かっているんだ…でも、約束したんだ。迎えに行くって」


 クロードはとても苦しそうな顔をしている。ルイもそのことは出会った時から知っている。その時からクロードがある約束のもとある人物を探している。いまだに見つからず探している。

 クロードは処罰覚悟でこの黒薔薇の塔に来ていた。ルイも忠告はしながらもこのまま進んでいく覚悟を持っている。それがこのクロードを自分の主と認めたルイの意思だ。


「ルイ」

≪私も行くよ、君の助けに、力になるといっただろ≫

「ああ、ありがとう」

≪何を今さら≫

「そうだな、進もう」

≪ああ≫


 二人は禁止区域に入っていった。そこは薄暗く不気味な所だった。手入れのされていない木々に覆われ、蔦が巻き、本来なら美しく咲き誇っていたであろう黒薔薇に囲まれた。だが、その通り道は何年も人が入っていないにも変わらず整備、整えられていた。

 この事がクロードに疑問と希望を持たせた。 整備されていると言うことは誰かかが密かに通っていた証拠でもある。それがなにかは分からないが手がかりになるものがあるかもしれないからだ。


 長い道を通った後に現れたのは蔦が巻き付いたひとつの塔だ。その周りには手入れもされずに咲き乱れている黒薔薇が日塔の道を残して広がっている。


「これが黒薔薇の塔」

≪さっき通った道もそうだけど不気味だね≫

「元は綺麗な塔だったんだ」

≪え?≫

「この国には四方に四つの塔があって『四薔薇の塔』といわれていたんだ」

≪四薔薇の塔≫

「ああ、赤・青・黒・白の四つの薔薇が咲き誇っていた。ここは先代王が死んだ場所でもある」

≪!?≫


 ルイは言葉がでなかった。この国の先代王は国民の信頼もよく、人々に愛された人物だったことで有名であった。その手腕もよく、他国からも信頼されていた。その王は若くしてこの世を去った。

 その死は謎に包まれている。その一つの要因として現国王が捜査を途中でやめてしまったことがある。先代国王の死に場所を晒さないとの事でこの塔は出入りを禁止された。


「ここに囚われていたなら残酷だな」

≪クロード、前から聞きたかったんだが。君が探しているのは誰なんだい?≫

「……ゴメン、今はまだ言えない」

≪何故だい?≫

「この国では先代王に関わることは言えないんだ」

≪では、君の探し人は先代国王の関係者ってことか。わかった、これ以上は聞かないよ≫

「助かる」


 二人は意を決して塔の中に入っていった。構造上難しい作りにはなっていなかった。だが、その分注意しなければ見付かりかねなかった。入り口近くに監視者用の部屋があった。そこに数人の男たちが談笑していた。

 二人は気づかれない様に上の階に上っていった。

 一本道の階段を上って行った先にあったのは一つの扉だった。

 クロードが慎重に扉を開くとそこは質素なベッドに粗末な作りの衣装箱があり、窓辺にいる粗末な衣服を身に付けた、漆黒の髪と瞳をした少女がいた。

 少女は扉が開いたことで顔だけ扉の方を向けていた。その顔は驚きに彩られていた。クロードもまたその顔を驚きに彩っていた。

 少女は扉が開いて今までの男たちと違う人物が来たことに驚いていた。

 クロードには少女が探し人であることが分かった。クロードの知る限り漆黒の髪と瞳をしているのは一人しかいない。クロードが近づくと少女は体をこわばらせた。


「だ、誰?」

「……ユリ、ユリシアだろ」

「あ、貴方は……クロード?」

「ああ、クロードだ。クロード・ディルガーだ」

「ク、クロード!」

「ユリ!」


 二人はお互いを確認すると抱きしめあった。それを一人わからないルイは見ていた。今、声をかけるのは無粋だとわかっているからだ。

 二人が話しやすいように下から誰かが上がって来ないか警戒した。

 クロードはそれに感謝しながらユリシアの頭を撫でた。


「遅くなってすまない」

「ううん、信じてたから」

「何でここに?」

「気が付いたらここに居たの」

「そうか」

「怖い人がいて出れなくて」

「もう大丈夫だ、ひとまず俺の家に帰ろう」

「うん」

≪話しはついたようだね。急ごう、人が来るよ≫


 二人の話がついたのを確認してルイは二人を急かした。人の気配が近づいて来ていたのだ。

 ユリシアは焦りだした。この部屋の出入り口はクロードが来た扉以外なく、他の出口もない。男たちが上がってきているのなら逃げようがないのだ。

 ユリシアはクロードを見た。


「クロード」

「ユリ、俺を信じてくれるか?」

「信じているよ、でもどうするの?」

「突破する、最悪はその窓から飛び降りる」

「……わかった、クロードを信じる」

「ああ、必ず守る」


 クロードはユリシアを背にかばい、扉を睨んでいた。ルイもクロードの意思を感じとり、ユリシアの後ろを守るように立った。



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