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一話 黒薔薇の塔
この国、フィンディールドには深い深い森の中に黒薔薇におおわれた古い塔がある。
そこは人を阻むように暗く恐ろしげな雰囲気がある。
人々はその塔を『黒薔薇の塔』と呼んでいる。
そこに近づくことは禁止されている。
そのため人々は知らなかった。
そこに10年ほど一人の少女が幽閉されている事を。
少女は質素なベッドに横になり幼い日の夢を見ていた。
白銀の髪の少年と少女が一緒に遊んでいる。
そして最後はいつも一緒だ。
少女が泣いている。
少年は困った顔をしながら少女の頭を撫でていた。
『どうしても行かないといけないの?』
『ごめん』
『****~』
『泣かないで、必ず帰ってくるから。迎えに行く』
『約束だよ』
『ああ』
そうして少女は目を覚ます。
その眼には涙が流れている。
「早く迎えに来て」
少女は祈り続ける。
この生活が早く終わることを。
この苦しみと悲しみが早く終わることを祈り続けている。