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九十九の扉

薄れゆく声

作者: 安本 葉月

この街は、私で最後か・・・。

私も明後日にはこの街から消えるんですよね。

私も一番最近使われたのはいつだっけな・・・、もう半年以上使われてない気がするな。

あちこちにいた仲間は、今頃どうしているんだろう。

誰かの声が聞きたいな。どんな話でもいい、だれか私に話してくれないかな。


―――それは、ちょうどよかった。―――

それは頭に直接響く声、声と同時に現れたのは、光る扉。

あっ、と思った時には光の扉のドアは開いて、私は中に入っていた。


「コスモス通りの電話ボックスさん、九十九の扉へようこそ。」

一見すると無愛想に見えるひげをはやした、大柄な男性は、微笑みながら、私を迎え入れてくれた。

「ぐっどたいみーんぐ!」

男性の横にいる少女はまだ幼く、男性の腰あたりまでの身長しかなかった。5歳くらいなのかな?と思いながら見ていると、少女はグミの袋を手に、こっちを見ていた。

なんのタイミングが良かったんだろうか?と考えたけれど、まぁいいか、と思った。

それよりも、この場所に驚いていた。


「ここって、あの、九十九の扉・・・?本当にあったんだ・・・。あるわけないって思ってた・・・。」

「あるよ?ほら、いまここがそうだもん。」

少女が私に向かって言う。

「そう、で、す・・・よ・・・ね・・・。」

男性は私に向かって話す。

「九十九の扉、俺たちは九十九の神からの案内人。世の中から忘れられそうなものや、はぐれてしまいそうなもの、何よりも、それを寂しいと思ったモノに扉を開き、案内するのが役目だ。」

少女はグミを食べながら自慢げに話す。

「ルリが案内人で、ハナダはルリのおまけだけどね。」

「ルリちゃん、そんなこといわないでくだちゃいー!せめて、パートナーとか言ってほちいでちゅよー!」

「ルリは一人でもちゃんとお仕事できるもーん!おまけのハナダ♪ハナダはおまけ♪」

「るりちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーん!」

少女はスキップをしながら部屋の中を楽しそうに回っている。

ハナダと呼ばれた男性は、それを追いかけるようにしてルリのあとを付いてまわっている、ここの上下関係と、ルリという少女に対するハナダの話し方に疑問を持ちつつも、私は黙って二人を見ていた。


「お姉ちゃんは何か喋らないの?」

ルリにそう聞かれた私は考え込む。

「うーん、楽しそうだなっていうのは思いますが、私はそれを見て、聞いている方が好きみたいです。元が電話ボックスですから。」

ニコッと愛想笑いをしながらそう言うと、ルリとハナダは顔を見合わせ、くすっと笑った。


ハナダは私に3つの選択肢があるという説明をした。

「どれにするかは、コスモス通りの電話ボックスさんしだいだけど、今回しいていうなら、九十九神様のところに行って欲しいんだ。」

「え?!」

さっき、3つの選択肢を聞いて、どれでもいいって言われたような気がしたんだけれど、行き先が既に決まっているなんて聞いてない。

「あ、いや、強制はしないんだが、ちょっとこちらにも事情があって・・・」

そうハナダさんが言葉を濁すと、ルリちゃんが笑いながら私に言った。


「あのね、この間、ひなげしさんっていう小学校の魂さんをつくもんのところに案内したんだけど、そのひなげしおばちゃん、つくもんの所についてから、ずぅっっっっっっとしゃべり続けてるの。つくもんだけじゃなくて、つくもんのところにいる魂さんを見かけては、捕まえてしゃべってるのーーw」

「ルリちゃぁん・・・。」

ハナダさんは困ったような顔をこちらに向けている。

グミを1つ口に入れ、ルリちゃんは続けた。

「それでね、さっき、コスモスさん、お話聞きたいって、誰でもいいからお話聞きたいって言ってたでしょ?だからね、ひなげしおばちゃんのお話相手になってほしいなーってつくもんが言ってたのw」

なってほしいなーって・・・、私は想像していた九十九神が少し実物とは違う人のように感じた。


「わかりました。私を九十九神様のところへ連れて行ってください。」

慌てた様子でハナダさんが

「本当にいいの?転生や残ることも選択肢にあります、九十九様のところに行くのは強制ではありません。あなたが望むのなら、それが最優先の選択肢となりますから、ルリちゃんの言葉は気にしなくてもいいんですよ?」

彼らは九十九神からの使い、立場上、一応全て公平にしなくてはいけないのだろう。

ルリは相変わらず、笑いながらグミを頬張っている。


「私は、確かに3つの選択肢を伺いましたよ。その上で、九十九神様のところへ行きたいのです。」

ハナダさんはすいませんという顔をしながら、私を見た。


「それじゃ、つくもんのところに案内するねー。」



「ルリちゃん、あれでよかったんでちゅか?」

「その口調どうにかしなさいって言ってるでしょ。あれは、あれでよかったの。」

「だってルリちゃぁぁぁん。」

「ハナダってば、毎回同じことさせるねー。」

と言って、ルリがジャンプしてハナダの頬に軽くビンタすると、ハナダの体は壁までふっ飛んだ。

「以後きをつけまづ・・・」

そういってハナダは気を失った。


九十九シリーズです。

よければ、ほかの回も読んでいただけるとありがたいと思います。

どんな感想でも、御指摘でもいただけるとありがたいです。


読んでいただいて、ありがとうございました。

また、よろしければ、お越しください。

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