合宿終わりだよ!
涼やかな風を頬に受けて私は緩やかに眠りの世界へと旅立っていく
「・・・や・・・さや」
誰だろう、私を呼ぶとても懐かしい気がするのに思い出せない声の持ち主は
でも、つい最近もこの声をどこかで聞いた気がする
そんなささくれのような小さな疑問を無視するように声は耳に流れ込んでくる
「もうすぐ君に会えるよ
ずっと会いたかったんだから」
気が付くと見渡す限りの平原に1人立っていた。
「ここはどこ?」
我知らず口から疑問がこぼれた
「さや・・・」
後ろから懐かしいのに誰のものか思い出せない声がした
振り返ると涼が立っていた
「りょう?」
一瞬、本当に涼かと思った。
けど、違う、涼じゃない
見た目がそっくりだけど、雰囲気が全く違う
涼は太陽みたいに暖かい雰囲気なのに目の前の相手は欠けた月のように病んでいる
「流石さや、僕と涼を見分けられるなんて
でも、僕のこと覚えてないんだ・・・残念だなぁ・・・」
口調は間延びしていて柔らかい印象を受ける
けど、目が狂気を帯びている気がした
・・・コワイ、絶対にこの人にこの人に捕まってはいけない
「さや」
1歩歩み寄る
私は1歩退く
『な・・・や・・・ん』
「僕い・・・がい・・・の・・・と」
途切れ途切れの言葉とともに手を伸ばされる
私は逃げるように更に1歩後退する
『な・・・やさ・・・』
「す・・・になっ・・・だ・・・だよ」
悲しそうな表情をしている
『なが・・・さん』
よく知っている声と懐かしさだけが感じられる声が交互に、途切れながら私に語りかける
ああ・・・これは夢だ。
思ったとたんに景色は全て消え失せ、意識が急激に浮上する
「ながやさん!永谷さん!」
相良くんの声?
焦ってるみたい
「さやちゃん!!」
高宮先輩も焦ってるみたい
どうしたんだろう?
起きたいけど瞼が重いよ
そんなことをつらつらと考えつつ
ゆっくり瞼を持ち上げる
「さやちゃん」
高宮先輩の声だ
視界に映ったのは相良くんの心配そうに歪められた顔
「永谷さん?
うなされてたみたいだけど大丈夫?」
カタタン・・・
電車の走る音が耳に入る
「うん、大丈夫」
どんな夢を見ていたか忘れてしまった
「合宿で疲れたんだろ?」
藤木先輩が同意を求めるように言う
「明日は休みだからちゃんと休めよ?」
高宮先輩は言いながら子どもをあやすように私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回すように撫でた。
先輩の言う通りに、疲れていたのか駅につくまでもう一眠りしてしまった




