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合宿5日目(朝霧の中で)

早朝のストリートバスケットコートは霧と静寂に満たされている


ダムッ、ダムッ・・・


静寂を切り裂くように1つの影がコート内で躍る


ズバッ・・・


「君が来るのを待ってたんだよ」

不意に声が洩れた

静寂がコートを包み霧は少しずつ薄れていった。

その時にはもう影は消えていた



夢を見た気がする・・・

とても懐かしい夢を

夢を見たせいか今朝の目覚めはいつもよりだいぶ早かった。

二度寝する気にはなれないため、起き上がって着替え、窓を開けた。

湿った冷たい空気が緩やかに部屋に流れ込んでくる

ふと、散歩しようと思った。

鞄の中から紙を引っ張り出し、お気に入りのペンで

『ちょっと散歩してきます。

さや』

と書き置きを書く。

一番気付かれやすいのは食堂だろうと考えつつ、食堂のテーブルの上に書き置きをのせ、スマホをポケットに入れ、外に出た。


辺りは薄い霧に抱かれ、パーカーを着ていても少し寒い

好きな歌を小さく口ずさみながらあてもなく霧に満たされた道を歩く

ストリートバスケットコートの近くに差し掛かるとボールがネットをくぐる音が微かに聞こえた。

こんな時間に練習なんて熱心な人だ。

誰かな?

そう思いコートに足を向ける。

しかし、コート内は無人でボールが1つ寂しく転がっているだけだった。

『さや・・・もう少し、もう少しで君に会えるよ

その為に僕は強くなったんだから』

ふと、知っている誰かにそんなことを言われた気がした


piriririr・・・・

ポケットに入れていたスマホが鳴り出す。

「はい、もしもし」

「さやちゃん、今どこ?

朝食の時間だよ?」

スマホ越しに高宮先輩の声が聞こえる

「すみません、今戻ります」

ピ・・・

通話を切り走って合宿所まで戻る



すっかり霧が晴れたコート内でどこからともなくあらわれた長身の影は転がっていたボールを拾った。

ゴールに向けて軽くボールを投げる

ズボッ・・・

目は喜色に満ち、唇は弧を描いている。

笑顔の理由はシュートが入っただけではないようだ。

「もうすぐだね、さや」

小さな呟きはボールの弾む音に掻き消され、影も消えた。


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