合宿1日目(さや視点)
トン、トン、トン、トン
野菜が切られる音が台所の静寂に広がっては消える
後藤さんの奥さん、由紀恵さんと夕飯のカレーを作っている。
夕飯を作るといってもまだ2時になったばかりで、作り終えてもみんなが帰ってくる時間にはまだ早かった。
することがないのでボーッとしていると、由紀恵さんの部屋に呼ばれた。
由紀恵さんの部屋には本棚と沢山の本があり、暖かみのある木の机を挟んで椅子が2脚置かれていた。
質素だけど、とても静かで落ち着いた部屋
由紀恵さんに椅子に座るよう促され、座ると、向かいに由紀恵さんが座った。
「さやちゃん、お願いがあるの」
「何ですか?」
由紀恵さんが程好く冷めたお茶を出してくれた。
「浴衣を着て欲しいの、女の子がここに来ることなんて余りないから」
困ったなぁ、浴衣持ってきてない
思っていた事が顔に出ていたらしい
「満月くんが持ってきたの、さやちゃんに内緒でね?」
悪戯っぽく笑った
つられて笑ってしまった。兄さんらしいや・・・
由紀恵さんは部屋続きになっている隣の部屋から紙袋を持ってきて中身を出した
新品の浴衣と帯、下駄だった
兄さんの自慢げに笑う顔が目に浮かんだ
「満月くんがさやちゃんに着せてくださいって涙目で頼んできたのよ?
それに、貴女みたいな可愛い女の子が浴衣を着ている姿を私も見たいの」
彼女は少し寂しそうな顔で言った
「はい、わかりました」
返事をすると嬉しそうに笑い、浴衣を着付けてくれた。
「そうそう、さやちゃん
この部屋好きに使っていいわよ?」
後ろで帯を結びながら由紀恵さんが言った
「いいんですか?」
「いいのよ、本好きなんでしょう?
それにこの部屋静かだから息抜き出来るでしょう?・・・はい、出来た」
「ありがとうございます」
振り返って由紀恵さんにお辞儀をした。
「男の子達に見せるのが勿体無いくらい可愛いわ
そうだ、皆が帰ってくるまで少しお茶しましょう」
私達は皆が帰ってくるまで楽しく話をした。




