君の笑顔
「永谷寝るな」
日常となった授業中の風景
俺こと相良 裕の前の席の永谷 さやは授業中ずっと寝ている。
先生に丸めた教科書で軽く叩かれても寝ている
時々見える彼女の寝顔はとても幸せそうで、部活で疲れた俺を少し癒してくれた。
知らないうちに彼女に恋をしていたのかも知れない
優しい太陽の光に照らされた寝顔に
今日も体育館にブザーの音とシューズのキュッキュッという音とかけ声それからドリブルの音が乱舞してはじける。
ふとギャラリーを見るといつも寝ている彼女が友達と一緒に熱心にこっちを見てる
彼女にみとれて俺は飛んできたボールを顔で受けた。
「痛ぇ・・・」
「相良!」
「裕、大丈夫か?」
大丈夫と答えようとして鼻に違和感を覚えた。
「!!」
とっさに鼻をつまんだが、少しだけ血が床に落ちた。
先輩達の顔に緊張の色が浮かんだ
「あの・・・」
柔らかい声が先輩達の緊張を緩めた
「良かったらこれ使ってください」
さっきまでギャラリーに居たはずの彼女から手渡されたのは箱ティッシュとゴミ箱だった
「あ、ああ・・・ありがとう。ついでに裕を保健室まで連れていってもらっていいか?片付けは俺達がするからさ」
「え、はい、わかりました」
「永谷さん」
「はい、なんですか?」
「迷惑かけてすみません」
保健室で手当てをしてもらった俺は隣に座る彼女に謝った。
「いえ、気にしないでください、誰にでもあることですから」
そう言うと安心させるような、でも少しいたずらっぽく笑った
「それと、敬語じゃなくていいですよ?」
「え、うん・・・あのさ、永谷さんって気利くよね」
「何故ですか?」
不思議そうな表情でこっちを向いている顔が新鮮だった。
「さっきみたいに必要なものすぐ持ってくるし、困ってる人に手貸してるから」
「性格です」
少し恥ずかしそうに小さな声で呟くように言った
よく見ると少し赤くなっている
すると彼女がいきなり顔を上げた
「結構私のこと見てるんですね・・・」
ある意味一番知られたくない人に核心を突かれた
「うぇ・・・き、きのへいだよ」
変な声が出た。しかも噛んだ
「動揺してますよ?」
なにも知らないからこそ彼女は容赦がない。
しどろもどろになっていると
「あははは・・・すみません、ちょっといじわるしました。相良さん面白いです。ふふふっ」
段々冷静になってきて状況がわかってくると急に恥ずかしくなった。自分でもわかるくらい顔があつい
「顔、真っ赤です」
いつも寝顔を見るだけの彼女の笑顔はとても温かかった。