干物は異世界に光臨します
朝6時に煩い目覚ましと携帯のアラームを止めしばしまどろむ。
下手をすると二度寝をしかねないがこのまどろむ時間は嫌いじゃない。
でも一発で起きれない自分の意志薄弱さは大嫌いだ。
会社は9時~18時…に加えて1時間残業が当たり前。
帰宅すると21時近いのがいつもの私の生活。
毎日毎日同じように繰り返し起きて働いて帰ってきて寝る。
子どもの頃はもっと世界は明るく見えていたような気がしたけど…。
でも思い出してみると別にそんなこともなかったな。
「お疲れ様ー」「お疲れー」「今日の帰りさー」「まじでー?」
金曜日の夜、昔は花金なんて言ってたらしいけど今じゃそんな言葉はほとんど聞かない。
それでも会社の付き合い的飲み会があったり、親しい人で一緒に帰ったり。
ガヤガヤと残業まで頑張って終えた人の波が事務所から捌けて行く。
「…さて、帰るか」
飲み会も誘われる事はないし、親しい人もいない。
職場にそんな物は一切求めていない私は、廊下にたまって雑談している人に声をかけながらさっさと帰宅する。
別に容姿端麗でもなければ話し上手でもないし、流行なんてしらないし興味がない。
運動は得意じゃないし、勉強だってしばらくしてないからもう随分忘れてる。
色々言ってみるけど結局私は「他人にも自分にも興味がないんだなぁ」と、思ってみる。
そんな私が今一番困っていることがあります。
いやぁこの年までなんだかんだ厨二をこじらせてきましたけど、異世界トリップなんて非科学的でリアルに起こるはずがないなんて…そう考えてた時期が私にもありました。いやぁ、異世界舐めんな!ってことですね。全く地球上に神様がいるならちゃんと信徒とかに「異世界はあるよ!」って伝えて置いてくださいよ。といたらいいな神様に八つ当たりしたくなるぐらいです。
まぁつまりどうやら私、異世界に降り立ってしまったんですね。
普通異世界トリップ小説によくある、異世界に来てしまった直後の主人公行動パターンは
・取り乱す→敵と遭遇→運良く通りがかった人に助けられる
・現状を把握しようとする→敵と遭遇→通りがかった人に助けられる
・チートを持って召喚される→王様と謁見
・チートをもって召喚されるが出現場所が草原→敵と戦う→俺つよくね?
・うじうじするへこむ→通りがかった人に助けられる
・とりあえず行動する→うまいこと街道に出て人に助けを求める
といった感じだと思うんです私。いや、他にもあるんでしょうけど。
「でもさ、普通草原とか森とか召喚陣の上に呼ばれるならわかるけど。なんていうか、この世界にも神様がいるならちょっと拳で語り合いたい気持ちかな…」
ご覧下さい、まず私が起きた場所…人が横たわれる程度の大きめな岩ですねー。
そこから周りを見て見ましょー。枯れた木とごつごつとした岩が織り成す絶景です。
ぐるりと見渡す限り緑もなければ道もない、すばらしい開放感に溢れた場所です。
ものすごく遠くのほうに山のようなものも見えますが、あれは本当に山なのかちょっと私にはわからないですね。
まぁコレだけ見晴らしがいいと敵とか動物がいたらすぐわかりますね。
どうやらごつごつした岩の一部と枯れ木は俗に言うモンスターっぽいのですが。こっちを見もしません。ラッキーです。
あと自分の持っていた荷物が近くにあったので、襲われない今のうちに鏡で自分の確認をしてみます。
よくある容姿変更設定はないみたいですね。黒髪黒目肌は白くて、仕事で疲れた顔をしてます。
身体にも異変はないみたいです。あ、でもなんか視力はよくなってます。不思議。
「ステータスの確認ができるようなネトゲ仕様な異世界ではないんだ…」
自分のステータス確認できる話が多いと思うんですけど、現実はどうやらそこまで優しく(ゆとり)はないらしいです。
さてまずはこのいつ襲ってくるかわからないモンスター達の居る場所から安全を確保し脱出するか。
学生のころ体育の評価は5段階では2、10段階で4しかもらった事のない運動が苦手な私が!
とりあえず、目の前の木の棒を装備してみます。どこの有名タイトルなRPGなんでしょう。
ぶんぶんと音を立てて振ってみます。まぁ…岩にぶつかって折れましたよね。
「なんなんだよ、チートらしいものはないし!こんなところで異世界人生終了ですか?人生リセットボタンはありませんよ!だめじゃん!どうすんのライフカード!絶望一色ですよ!」
我ながら短い人生でした…。ところでここまでなんであのモンスター達が一切こちらに襲い掛かってこないのか。
弱肉強食ではないですが、普通襲われますよね。いや岩と木っぽいから人肉などいらんのでしょうけど。
とりあえずもうどうとでもなれ精神発動です。此処にずっと居ても飢えて死にますから。かわらんです。
岩から降りると、モンスターはこちらの様子を見ているようですが気にせず歩きます。
どうやら木のモンスターは2種類いるようで、動けないタイプと動き回ってるタイプみたいです。
どっちも枯れてるのにどっからエネルギーが供給されてるんでしょうか。魔力ってやつでしょうか。
空気中に魔力が満ちていて、大気から補給できる的なあれだったりするのかも知れませんが、今は別にどうでもいいですね。
岩はなんかあれですゴーレム的なものから石に顔がついてる程度のものまで色々でした。
どれも言葉は喋らないみたいで大人しいです。だれですか人生終了のお知らせなんて考えてたのは私だ。
そんな居心地がいいんだかわるいんだか微妙な場所からおさらばしますっ!
静かな場所は大好きなんだけど、食べ物がないと私は生きれないだ、ごめんね木と岩のモンスターさん達!
目指すは…とりあえず水と食料がありそうな場所!
誤字がありましたら生暖かい目で見過ごして…いやご報告いただけると幸いです。




