表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

参観日…母の失禁

作者: 紅しだれ

この小説には、失禁、暴言、格闘の模写があります。

「グツッ…グツッ…」鰹ダシの味噌汁のいい匂いがキッチンを包んでいる。その横では、まな板でオクラを刻む音。擦り下ろしたショウガに由美オリジナルのダシ醤油を加える。

「よし、できた。ヒロ君とアッ君起こさなきゃ」

藤沢由美27歳、168cmのスレンダー体型。美人だが、少し垂れた目に、二重瞼は愛嬌を感じさせる。

由美に起こされ、寝惚け眼で洗面所に行ったのは、彼女の夫・浩(30歳)と一人息子・小学2年生の明人である。「いただきま〜す」家族3人のいつもの風景だ。でも今日は由美と明人に少し緊張感がある。それもそのはず、今日は明人の通う小学校の参観日。午前中3、4時間目を使い、父兄参加型の工作の授業を行う。

由美は工作は余り得意ではなかったので、浩に、一緒に出て欲しいと頼んだが、月例会議があるので時間的に難しいとの事。由美だけで行く事になった。

「今日、大丈夫かなぁ。」不安そうに由美が言うと

「由美ちゃんは手先が器用だから、そう心配するなって」と浩はいつもの優しい口調でなだめる。

「お母さん、僕、工作得意だから心配いらないよ」明人の言葉に由美は少し気が楽になった。

「うんっ、足引っ張るような失敗しない様にするね」由美は可愛く笑った。しかし、この数時間後、工作とは違う、悲しい失敗をし、その可愛い笑顔が歪む事になるとは、誰も想像しえなかっただろう。食事が終わった。季節がら梨を出していたが、これは手付かずで残った。

「じゃ、行ってくるね」

「学校でね」

「ヒロ君、行ってらっしゃい、アッ君、後でね」由美は二人を送り出した。

由美は参観日という事で、会社に頼んで午後出社の許可を貰っている。学校からそのまま行ける様に、上下白のジャケットとパンツで行く事にしていた。シャワーを浴び、いつもの様に自然体で化粧を済ませた。

「まだ、時間があるな。あっ、梨食べなかったんだ、夜になったらシナッちゃうから、私が食べちゃお」一口食べた。

「あっ、美味しい」

水みずしく、サッパリした二十世紀梨に、由美の手は、二口、三口と止まらなくなり、一玉を平らげてしまった。

由美は梨の水分でお腹が一杯になった。

「ごちそうさま、あっ、そろそろ準備しなきゃ」

歯磨きを済ませ、鏡で最終確認をした。

「うん、大丈夫っ!!」

会社用のバックを持ち、部屋を出て、エレベーターに向かった。

由美達家族は35階建てマンションの30階に住んでいる。

浩の収入だけでもやり繰り出来るが、由美も外で働きたいという希望があり、またお互い、家事を分担しているので、今の生活環境を維持出来ている。出会いは由美が短大1年、浩が大学4年だった。結婚は由美が社会に出てすぐ、浩が2年目の時だった。美男、美女で優しい夫は一流大学卒で一流企業勤務、と周りが羨む夫婦だ。殆んど振動も無くエレベーターは一階に着いた。 小学校へは、子供の足で歩いて25分程。由美も歩いて行く。

18分程で小学校に着いた。明人の2年生の教室は一階だ。外の廊下には45人前後の父兄が待っていた。授業は二時間目が終わる少し前だった。由美もその端に並んだ。他の殆んどの母親が30代半ばなのに対し、27歳で更に3つ位若く見える由美は、際立って綺麗に見えた。

「キーンコーン」授業終了のチャイムが鳴ると、父兄達は教室に入り、事前のプリントに書かれていた通り、予め、後に用意してあったイスを手に取り、各々の子供の元に向かった。

「お母さんっ」

明人の声に由美はニッコリ笑って応えた。明人にとって綺麗で優しく、スタイルの良い母親は自慢だった。他の子も躊躇う事も無く口に出して

「明人のおばちゃん、綺麗だなぁ〜」

「いいなぁ〜」と、連発していた。

やがて授業開始のチャイムが鳴ると、担任の男性教諭・竹野から授業の説明があった。

「皆さん、こんチクワ!!」

「………」

スベッた!!

ものの見事にスベッた。溶け込もうとしたが逆に母親から

「はぁっ?、これだから、家でも子供が言う事聞かねぇんだよ」

「説明なんていいから、早く材料配れっ!!」

「テメエ、チクワの材料にするぞっ」母親からの罵声が飛交い

「わっ、分かりました」竹野は教材を前の席に人数分ずつ置いていった。

それぞれが作業に取り掛かった。

「お母さんっ、頑張ろうね」明人が由美に言った。だが由美は何か、考え事をしている感じで、答えなかった。それもそのはず。由美は急速に尿意を感じ始めていたのだ。

(どうしよっ、二時間も持たない。あっ、でも三時間目が終わったら休憩あるよね。それまでなんとか我慢しよ)「ねぇ、お母さん?」

「あっ、う、うん、最初は外の寸法を計るのかな」

「うん、そうだよ」

由美は他の人に分からない様に足をピタッと、閉じた。20分、30分と立ち、由美と明人は、協力しあって、外側、引き出しを作っていった。しかし、由美の尿意は急激に、膀胱、尿道口を圧迫していた。下半身の感覚が殆んど無くなった。休憩まで後、3分の時だった。

「あ〜〜〜っ、何やってるんですか〜」

担任の声が響いた。

(あ〜っ、出ちゃったんだ)

由美は足元をみた。

(濡れて…ない)

声の方を見た。

驚いた顔で、7、8組の親子を見る竹野。

その親子達は、この授業のテーマ

「引き出し付きの小物入れ」とは、似ても似つかぬ、円柱系のゴミ入れや、テレビのキャラクター人形を作っていた。

外見は綺麗な服と、厚めの化粧で飾っている母親達。しかしまた、竹野に対する、理不尽な反抗が始まった。

「うちの子がこのキャラクター好きなんじゃ。なんか文句あんのか」

「なんでテメエに指図されて、作りたくねえもの、作らなきゃなんねぇんだ。」

「やりたくもねえ事させられる子供が可哀想だ。なんならテメエの好きなチクワ型ゴミ箱作ったろか?あっ?」

その一帯は竹野に対する罵声で騒然となった。

「わっ、分かりました。それでは好きな物を作って下さい。」

竹野はその場を治めるため、仕方なく認めた。キーーンコーーン

その時、始業のチャイムが鳴った。由美は今の騒ぎでトイレに行く機会を失った。

「ねぇお母さん、僕も好きなキャラクターを作っていい?」

明人が遠慮気味に言った。

「世の中にはルールがあるのよ。好き勝手な事をやってると大人になって困るのよ。だから駄目よ…私も…もう駄目なの」

由美は悲しい表情で、言った。

「えっ!何が?」

明人は聞き返した。

「ううん、何でもないのよ」

(私はいい歳をした大人なんだ。絶対しない、おもらしなんて、しない…したくない)

由美は自分にいい聞かせた。しかし、もう限界だった。朝食後、食べた梨は、急激に膀胱へ尿を送り込んでいた。

(ここで粗相をしちゃって、あっ君がイジメられる事になったら可哀想)

由美は、恥ずかしかったが、担任の竹野の元に行った

「あの、すみません。トイレに行かせて下さい」

すると竹野は

「トイレは休み時間に済ませておくものでしょ?駄目です」

先程の凶暴な母親達に対する態度とは違う、強気な態度だ。竹野は大人しく、清楚な雰囲気の由美を泣かせてみたかった。女性に馬鹿にされ続け、40代に突入した恋愛経験のない竹野にとって、由美は、支配欲に駆られる妹的なタイプだった。

「分かりました」由美は一瞬、泣きそうな顔になった。それが更に竹野の感情を増幅させていった。

その声に周りの人達も由美が尿意を堪えている事に気が付いた。もう由美はじっとしてはいられなくなった。両足を交互に、上下へ揺り始めた。限界が近づいていた。

「ねぇ、お母さん、もう一度先生に頼んでみたら?」

「う、うん、でも…大丈夫、お母さんは大人だから」

由美はニコッと笑った。でも、口元は少しひきつり、目は悲しみと絶望を物語っていた。授業終了15分前に工作はようやく完成した。

「はいっ、それでは皆さんの作品を前に出て発表してもらいます。え〜では、まず富田さんの作品から」

母親と子供が前に出て作品を作る時の苦労等を語っている。

次々と前に出て説明をしていく親子達。

(あ〜早く終わってよ〜、おしっこ漏れちゃうよ〜、でも、これって何の順番なの?席順でも、出席番号順でもないし…)

由美は切迫詰まる中、ふと思った。

そう、順番は竹野が勝手に決めていた。由美の様子を見て、限界直前で前に出す魂胆だ。

由美と明人を含め残り5組となった。

(まだかな?よ〜し取りあえず5組全員前に出させよう)

そう思った竹野は前に5組全員、並んでもらい、い、順番に説明をしてもらった。由美は早めに説明を終わらせようと、先に並ぼうとしたが、竹野に制止され、最後に並ぶ様、促された。それぞれが作品について説明をしていったが勿論、説明等、竹野の耳には入ってこない。由美にしか意識は集中していなかった。

「アニメのキャラクター人形だ。何か文句あっか?」

あの親子の母親が言った。

「いえ、別にないです。素晴らしい出来だと思います」

竹野は適当に答えた。もう心臓はこれ以上ない位、鼓動を打っていた。いよいよ由美と明人の番が来た。

「難しかったのは、シワにならない様、千代紙を貼る所でした」

明人が言った。

「以上です」

そう由美が言って戻ろうとした時、竹野が

「待って、じゃあ今度はお母さんに質問しちゃおかな。」(えっ、ちょ、ちょっと何で?)

由美は焦った。もう、あと少しの猶予も無かったからだ。「この千代紙の花柄、なんて名前の花かな〜?」

竹野が聞いてきた。

「かっ、寒椿だと思います」

由美は震える声で何とか答えた。

「よく分かりましたねぇ〜、正解、正解。では次の質問ですが」

竹野の言いかけた時だった。

「いやいやいやいやいやぁ〜」

由美の絶望と羞恥が相交じった微かな声が、明人と竹野の耳に聞こえてきた。

「あっ、あっ、あ〜〜〜〜〜」

竹野の歓喜に満ちているとも取れる叫び声。

「おかぁ〜さ〜んっ」

明人の悲しみの叫び声。

それもそのはず。股間をギュッと押さえた由美の右手からは

ポタッ、ポタッ、ポタッと滴が落ち、光に反射してキラキラ輝いている。きつく閉じた足は、白いロングパンツに、ほのかな黄色の染みを作り、どんどん濡れて行く。

そして、その水流はやや曲げた膝部分から勢いよく飛び出し、ワックスの掛った教室の木製の床に

ビチャビチャビチャ〜〜〜〜〜〜

と、おしっこを飛散させ、落ちていった。   (イヤ〜お願い、時間止まって〜)由美のそんな願いが叶う筈もなく、無情におしっこは尿道口から、物凄い勢いでビュービューで続けている。パンツの染みはどんどん広がり、床のおしっこ溜りを大きくしていった。

1分10秒に渡る失禁が終わった。まるで下半身だけ土砂降りの雨にあったかの様な、ビショビショ濡れの状態になっている。教室中の生徒と父兄が、まさかの光景に呆然とするなか

カシャッ、カシャッ

竹野がカメラでシャッターをきる音だけが響いていた。

「何やってんだー、テメェ、コノヤロー」

一人の母親が叫んだ。

それは竹野ではなく由美に対する言葉だった。

「このアマ、ションベン垂らしやがった」

「いい歳こいて恥ずかしくねえのか!!」

父兄達の暴言に呼応する様に子供達が

「大人のクセにおしっこおもらしするなんて信じられないー」

「汚ねえ、クソババアだなぁ〜」

するとその母親が

「それを言うならションベンババアだ」

アーハッハッハッハッハッ

教室はそのツッコミで笑いに包まれた。

 動画設定にしたカメラを由美に向け、机に置いた竹野は、由美のビショ濡れのロングパンツを脱がしに掛った。

「俺が脱がせて着替えさせてやる。おらっ!!早く脱げ」

由美は必死に抵抗しながら叫んだ。

「イヤ〜お願い、辞めて〜、いやぁ〜ぁぁ」

しかし誰も助ける者はいない。事の成り行きをニタニタしながら見ているだけだった。

「あ〜〜〜っ」

明人が少し離れた所でせっかく作った小物入れを、床に叩きつけ壊していた。明人が大好きな、いつも優しく綺麗な母親がおもらしをして、担任から嫌な事をされ、泣き叫んでいる。自分に目を向けさせる事で母親を助けたかった。その気持ちがそんな行動に駆り立てた。しかし、皆の視線はすぐ由美に戻った。明人はもう、どうする事も出来ず泣き出した。「由美ーーーーーーーーっ」

浩だ。浩が来た。月例会議が早く終わり、少しでも参加しようと来たのだった。

竹野の元に走り寄った浩は、ありったけの力で竹野を殴った。

「アイタタタタタ」

竹野は倒れ込んだ。しかし、すぐ立ち上がって、浩と掴み合いになった。身長170cmの竹野に対し20cm低い浩は、その身長差をモノともせず、掴み掛った。もつれ合い竹野の右肘が硝子窓に突っ込んだ。ガッシャーーーーーン

硝子が割れ飛び散った。それでもまだ取っ組み合いは続いていた。

「何をやっとるんじゃっ!!」

騒ぎを聞き付けた校長が怒鳴った。暴力行為があった為、警察が来て浩と竹野はパトカーで連行された。

 後日、竹野は無罪で釈放された。パンツを脱がそうとした行為は着替えさせる為、カメラ撮影はインシデントレポート作成の為、という言い分が通ったのだ。しかし、浩は逮捕された。殴った事に対する暴力行為と、竹野の右肘に6針の裂傷を負わせた事が、罪に問われた。実刑は免れたものの、会社をクビになった。

 …1ヶ月が過ぎた

チュンチュン

スズメの鳴き声が響いた。朝日が差し込み寝床の浩の顔を照らした。六畳一間のアパート。これが今の住まいである。あの一件で浩は、一流の大企業の職も、高額な月給やボーナス、退職金、マンション、様々な物を失った。現在、零細会社の社員として13万の給料を貰っている。目を閉じた状態で浩は思っていた。

(あれで良かったんだ。俺は間違えてはいない)

浩は心の中で自分に言い聞かせた。その時

「ヒロ君、ご飯だよ」

すぐ側で声がした。

浩は布団から起き上がった。

 そこには、朝食が乗った、小さな卓袱台の横に座っている、由美と明人の姿があった。

生活環境はガラリと変わった。でも

家族の絆は変わらなかった。由美の月給18万と浩の給料では、大変だった。しかし、掛け替えのない家族の温もりがあった。

 朝食を食べ、歯を磨き、3人は玄関に並んだ。

「あっ君、行ってらっしゃい」

由美はそう言って明人の頭に軽く手を乗せた。

「うん、行ってきま〜す」

明人が答えた。

「じゃっ、由美ちゃん、明人、行ってらっしゃい」

浩が言うと、

「うん」

明人が答え、由美が

「ヒロ君も気を付けてねっ!」

そう言って、少し膝を曲げ浩の頬にキスをした。


   < 完 >

不条理だとは思いますが、今の世の中、正直さが返って仇になる事もあります。最後は温かい感じにしてみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 僕は、12さいです!お母さんが学校で失禁したら困るけど、僕はこのように暖かい家族が好きなのでこのような評価にしました!
[一言] タイトルのインパクトが素晴らしい。そして、無茶苦茶加減が素晴らしいがもっと酷い目にあっているのも見たい気がする。
[一言] 浩たちの終わり方に絶望感がありませんでしたね。 テーマを強調するなら絶望的な終わり方にした方がいいと思いますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ