蜂蜜色を覚えてる
守るために剣を取り、守るために壁を張った。
傷つけないために、もしかしたら自分が傷つかないために。戦いたくはないから貴方の目にひどく映りたくはなかった。
最期はどうかあなたの体温で、この身を強く引き裂いてほしい。
待ち遠しかったこの時を、軋み上げる壁が歓喜の音に潰されて消える。
あぁ…、なんてことだろう。最期の瞬間が音の波が近づいている。
固く冷たい鉄の塊ではなくて、固くでこぼこの貴方のその手で、どうかどうか…
「私を殺してください」
微笑みと共に重たい剣を捨てた。もう壁などはとうに消え去った。
目の前の蜂蜜色の瞳をした男は一歩近づいてきた。徐々に蜂蜜色の瞳が、私に甘い香りを覚えさせたあの瞳が迫って…
目を閉じた瞬間
軋む身体に脳は理解が追い付かない。
目を開けると自分の背には男の固いでこぼこの手がまわっていた。
蜂蜜色の瞳は閉じられている。
「なに…?」
口から出たのは疑問の声、どうして私を殺しに戦いに来たのではなかったのか
「もう、いいだろう」
男の声は疑問なんてなかった。
「なにが…私は」
軋む身体はもっと動かなくなった。蜂蜜色の彼の瞳には自分の唖然とした顔が一面にくっきりと映し出し、何も見えなくなった。
「もう守らなくていい。剣を取らなくてもいい。もし取るとすればそれは…この手にしてほしい。」
大きな固くてでこぼこな手が真っ直ぐと私に差し出された。
その手を取ると何度も何度も落ちてくるものを止められなかった。
お読みいただきありがとうございました。数多くの方に見ていただき心よりお礼申し上げます。 ぽま