愚痴られ屋
「あっははは、素晴らしい!なんて愚か何だろう。
」
「…っな!!」
「全く、馬鹿はお前だよ。『なぜ会社は俺を採らない?』だって?笑わせるなよ?お前を採るはずがないだろう。お前は自分を過信しすぎなんだ。『俺を採れば会社は大きくなる?』むしろ今のお前をとった時点で潰れるだろう。可哀想に。この年になって就職出来ない理由がわからないなんてな。」
「…っな、なんなんだよ、お前、急に態度変わりやがって!!愚痴られ屋じゃねぇのかよ!?黙って愚痴られてろよ!!」
「やはり馬鹿だな。
私は確かに愚痴を聞くといった、だが、口を出さないとは言ってない。」
「…ッくそっ!」
彼は悔しさで床を思い切り踏みつけた、
「お前は、本当は、怖いんだろう?
就職出来ない理由が自分にあることが、それを認めてしまうのが怖いだけ。そうだろ?」
突然声の調子をもどして語りかけられたことに驚いて彼女をみた。
彼は、彼女の言ってることが理解出来なかった。
彼は自分の才能を過信するばかりにいつしか自分に溺れていたのだ、
会社に勤めていた時は、
自分より馬鹿な上司の下につくのが嫌ですぐに辞めた。
面接だって、自分の学歴や身体能力の高さの自慢話しやアピールしかしていなかった。
それに彼は、気付けないのだ、
なんと情けないことだろう。
「何を言ってる?考えてもみろよ。俺みたいなアタマのいい奴が世の中の馬鹿共の下につくんだぞ?おかしいだろ!?」
「…つくづく醜い奴め。
お前はその可笑しさに気づけないことが馬鹿なのだ。」
彼女は汚いものを見るような目で彼をみた。
彼女は続ける
「あぁ、こんな奴らがいるからこのセカイはこんなにも汚いのだ」
彼女の言葉は彼の怒りを上昇させた。
彼は何を思ったかテーブルにあるケーキ皿からフォークを掴みとり彼女に向かって振り下ろした。
だが、そのフォークが振り下ろされることはなかった。
先ほど彼を案内した男が彼を押さえつけたのだ。
「…っくそっ。なんだよ!離せよっ!」
「おっさん、あんたいい加減にしなよ。いくらあんたでもやって良いことと悪いことの分別くらいつくだろ?」
青年は爽やかな笑顔でそう語った。が、突然その笑顔を消し彼に言った。
「つーか、俺の雪那傷付けたら殺す」
「ッ……。」
彼は、その青年の威圧感に圧され押し黙った。
少女は黙って青年を見ていた。
すると青年は、先ほどの爽やかな笑顔で続けた。
「お客様、本日は如何でしたか?
これにて愚痴聞きは終了させて頂きます。
さあ、明日からは素敵な気分で生きていけることでしょう。あなたは愚痴られたほうの気も知らずにのうのうと生をきていくことが出来るのです。なんて、幸せなことか。」
「なんなんだよ!お前ら。
いいたい事だけ言いやがって、何様だよ?」
全く訳がわからない。
ここは愚痴を聞いてくれるだけの店じゃないのか?
彼は訳が分からなかった、
「こんなの愚痴られ屋じゃねぇよ!」
ふふっ、と微かに笑う少女の声がした、
「お客様、あなたは何か勘違いをしているようですね。」
青年が爽やかな笑顔で述べる。
「勘違いだと?」
「えぇ、ボードの言葉をきちんと確認しましたか?」
青年の言葉にはっとした、
確かに彼はボードを見てここに入った。
だが、募集していた客の言葉しかみていなかったのだ。
そういえば、その下に何か書いてあった気がする。
「そうです。あなたはみていなかったのです。」
彼の考えていることが見透かされているのか?青年が言った。
「『入るか入らないかは貴方次第、責任は負いません。』という言葉をね。」
言い終わってさっきの爽やかな笑顔に怪しさを足した笑顔を見せてきた、
『ああ、俺はなんて馬鹿なんだろうか、』
彼の頭の中を後悔という言葉が押し潰す。
彼はもうどうしていいのか分からなかった、
「ああ、、俺はどうすればいいんだ?
頭はあるのに就職が出来ない。借金だってあるんだ!助けてくれよ…!」
必死にすがりつく彼を少女はまたあの蔑むような瞳で見てきた。
「言っただろう?責任は負わないと。
後はお前自身で気付くしかないんだ。」
「…っ一体何に気づけって言うんだ!教えてくれよ…。」
「さぁ、お客様、お時間ですのでどうぞお引き取り下さい。またのご来店は遠慮してほしいですが、お待ちしております。」
彼は青年に半ば引きずられるように店を出た。
その後彼の消息は掴めなかった。
「さぁ、あなたも日頃の鬱憤晴らしてみませんか?」