本番に弱い会長と本番に強い副会長
よし!玲奈は内心ガッツポーズをうかべた。待っていましたよ会長!
「なんだぁ?いい人質がタイミングよく来てくれたもんだなぁ?」
どうやら男は葵を人質にとることに決めたらしく歩み寄った。
まずい!あいつに触れたら会長まで!
「会長!そいつに触ってはー」
「玲ちゃん助けてぇぇ!」
「捕まるの早すぎだろ!」
普通自分が人質に取られようとしたら少しは抵抗するし何よりあなたは能力者でしょう!
「会長?ってことは何か、こいつも生徒会の役員ってわけか?くははは!くそ弱ええじゃねーか!」
会長があんな状態ではだめだ、こうなったら犯人逮捕より人命救助が優先だ。
「おい!私が代わりに人質になるからその子を離せ!私が人質になればお前を捕まえようとする者はいないだろう!」
「んーそれもそうだなぁ、じゃあお前そのナイフも一緒にもってこいとりあえずその女が自殺するのは止めといてやる。」
玲奈は、つかんでいた女性の手を放し床に落ちていたナイフを拾い男のほうへ向かった。
「妙なまねはするなよ?俺が操るやつらはいつでも死ねるよう舌を噛み切る準備をさせておく。」
「わかっている。だから死人を出すようなことはやめてくれ。」
「玲ちゃ~んごめんねぇ~。」
男の腕に抱えられた幼女はとても年上とは思えない泣き顔を浮かべている。はぁと少し玲奈はため息をついたが軽く笑みをうかべた。
「大丈夫ですよ、今助けますから。ほら持ってきたぞ人質を解放してくれ。」
玲奈は男にナイフを渡した。
「ご苦労、それじゃあ解放するがその前に・・・」
男は渡されたナイフを受け取るとこぶしを握り締めにやりと笑った。
「さっきのお礼をしないとなぁぁぁ!!」
「きゃぁ!」
男はこぶしを玲奈の顔にたたきこんだ。
「はっはっは!いやぁーすっきりしたぜぇ!こぶしの代わりにナイフでもよかったんだがそれじゃあ人質として成り立たなくなるからな。まぁでも約束は守ってやるぜ。」
そういうと男はつかんでいた葵を放した、だが葵はその場から動こうとしない。
「おい、何してんだお前は解放してやるよ二人人質を持つのはきついからなさっさとどっかーいってぇ!」
男は葵を突き放そうと背中を押そうとしたが触れた瞬間に手に痛みが走りその手を引っ込めた。
「なんだってんだ、ん?」
男は痛みの原因を探るべく自分の手と葵の体を見ると葵の体かすかに光っていることに気付いた。なんだこの光は?と凝視するとバチバチとかすかに音が聞こえる。
「でん・・き・・?」
「ふざけるな・・」
葵の体から出る電気がより一層激しく音を立てる。
「ふざけるな!!!」
バチ!と体から放出された電気はあたりに飛び散りあたりの置物えお破壊する。
「電気?しかもこの出力・・まてよお前会長って呼ばれていたってことは最高位能力者か!?」
COLOR保持者は近年増え続けているが高位になればなるほど数は少ない、その中でも白のランクまでたどり着いたものは圧倒的に少なくその一つ前の赤との差はかなりのものだった。そのため白を持つ者たちだけ別の総称で表し始めた、最高位能力者と。
「自分の都合で、強盗だか何だか知らないが人を巻き込み傷つけそのうえ玲ちゃんまで、私の友達まで!ふざけるな!」
葵から放出された電気は集まりあまりの密度にまるで槍のような形を現した。
「いい気になりやがって!上等だよ!俺の能力で二、三人ぶっ殺してやる!」
バッと男は自分が操る者に向けて手をかざした。しかし、三人とも倒れたまま動こうとしない。
「どうなってんだよ!動けよ!」
男は一人に力を集中させると手がかすかに動き首のほうへと動く。
バチッ
しかし、葵から発せられた電気に触れると軽くピクっと動くと手は力なくまた地面に落ちる。
「こいつ、電気を浴びせて筋肉を痙攣させてんのか!」
(くそ!やはり最高位能力者かだがこの女は人質の時3分以上触れている!)
今度は葵自身を操るために手をかざした。
「ハッハー!いくら最高位能力者でもこれは・・ふせ・げ・・な・い・・嘘だろ。」
一段と電気の放出量が増えた葵はその電気を自分に浴びせた。
「こいつ、自分が発する電気だけで体を操ってやがる!化け物かよぉ!!!」
「最高位能力者をなめるなぁぁぁぁぁ!!!」
ドゴォォン
雷槍を叩き込むと辺りを爆発音と白い光が覆った。
「う・・うぅ・・」
光が消えるとそこには完全に気絶した男が横たわっていた。
「私の友達に手を出したら許さないんだからね!」
ふん!と腰に手を当て葵は胸を張るとスパァン、と玲奈が葵の頭をはたいた。
「あいたぁ!何すんの!」
「最初からやってください!」
「だってそれはー」
「すいません血が止まりません!」
二人でわめいていると群衆にいた一人が叫んだ。見ると先ほど操られ喉をナイフで突こうとした女性が横たわっている。
「どいて!」
すぐさま葵と玲奈は女性のもとに駆け寄る。女性の顔は青白く床にたれた血を見て玲奈は冷や汗を流す。
「玲ちゃん、すぐにでも止血しないと命が危ないよ。新しく使えるようになった力、安定しないのは知ってるけど今は失敗してる余裕なんてないよ。」
「今からやろうとしてる人にプレッシャー与えてどうするんですか・・でも大丈夫です私が本番に強いの知ってるでしょう?」
玲奈が女性に手をかざすとかすかに光をともした。
赤に昇格するために必要なのは応用力である。5キロ先のものまで見ることができる能力者がいたとしよう、しかしそれが10キロ、20キロと伸びたところで昇格することはないそれを少しでも違うベクトルへ変えることができて赤へ昇格できるのだ。玲奈の身体強化も同様でありいくらそれを洗練させても赤へ昇格はできないそのため新たに能力を会得した。それは”治癒”である。
手をかざすがなかなか傷がふさがらないことに焦りを浮かべる。私の治癒は身体強化の応用、つい最近会得したばかりで成功率は3割程度でも失敗するわけにはいかない!
「くっ!」
「頑張って玲ちゃん!」
女性を囲む周りの人々も玲奈を応援する言葉をつぶやく。すると一人の男があっつと声を漏らした。それに反応し葵も女性のほうへ目を向けると徐々に女性の傷がふさがっている。
「ふぅ・・」
玲奈が息を漏らし手をおろた。女性の傷は完全に塞がり顔色も多少良くなっていた。
『やったぁぁぁ!』
それを見て葵だけでなく周りの人々も喜びの声を上げた。
「やったね玲ちゃん!もう治癒能力も完璧だね!」
「まあこの場面でできるってことはそうなのかもしれませんね。」
「否定しろよー・・あっ私の首も少し血が出てるナイフあたってたのかなぁ?じゃあ玲ちゃんの治癒でついでに頼むよ!」
「いいでしょう。私に任せなさい。」
得意げに葵の首に手をかざすと光がともし始めた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・あれ?」
「本当に本番に”だけ”つよいねぇ!」
いつまでたっても葵の傷は治らなかった。