接触操作
間一髪だった。玲奈が腕を掴むのがあと少しでも遅かったらナイフは喉を貫いていた。だがそれでもナイフは首筋をかすり首からは血が流れているこのままではいずれ大量出血で死んでしまう。それにしても自分の喉を突き刺そうとするなんて気が動転してるなんて範疇を大きく超えた。いったい何がどうなってるというんだ!?玲奈はいまだに自分の喉を刺そうとする女性の腕をつかみながら困惑の色を隠せなかった。
「なめやがってぇぇぇぇ!!」
声のするほうを振り返ると先ほど投げ飛ばした男が頭を押さえながらもう片方の手をこちらにかざしている。あいつの能力か!?
「貴様何をした!?」
「ヒェヒェヒェ!!」
男がこちらにかざした腕を横に振ると、後ろから悲鳴が聞こえた。振り返ると玲奈が抑えている女性のように自害をしようとしている女性が人混みの中からもう二人現れた、周りの人が手足を押さえ何とか食い止めようとしている。男の仲間か?それとも能力か?なんにせよ次は確実に男の意識を飛ばさないと!
玲奈は再び男に向かうために能力を発動しようとする今抑えている女性を野放しにするのも危ないがそれよりも男を倒すことが優先だと判断したんだろう。ナイフさえ取り上げればすぐに命を落とすような行動はできないはずだ!
「おっと!動かないほうがいいぜぇ!俺の能力は接触操作≪タッチコントロール≫、俺が触れた者を操ることができる、ほかにまだまだ操れるやつはいるし何よりお前、俺に触れたよなぁ~?」
自分が投げ飛ばしたことを思い出す。あのときか!?どの程度自分が操られるかわからないがあの男を倒すのにそれなりの時間をかけてしまってはまずい、少なくとも私が抑えているこの女性は死に至る可能性が高い。どうする・・・・?
玲奈は絶体絶命の状況に自らの唇をギリッと噛んだ。その様子を見て男はニヤリと笑う。
(どうやらハッタリが効いたみたいだな、俺の能力は接触操作なんかじゃない、いや正確にはその本質は変わらないが操る者には最低でも3分間触れ続けていなければならない。3分間は短い時間だが触れ続けるとなると話は別だナンパ、店員のフリあらゆる手を使ったがこれ以上操れる奴はいねぇもちろんあの女も操れねぇ…だが操れると思わせるだけで充分だあいつはもう満足に動くことはできねぇ!)
男はより一層甲高い笑い声をあげた。
どうすればいいか必死に考えているとハッと葵の存在を思い出した。そうだ、会長ならこの状況でも何とかしてくれるはずだ会長早く来てください!
男が新たに人質にする人を選びに集団に近づこうとすると階段から情けない声が聞こえた。
「玲ちゃ~ん、待ってよ~。」
目を向けると葵が涙目になりながら階段のほうからよろよろとふらつきながら姿を現した。