生徒会始動
黒い長髪をなびかせ神崎 玲奈は生徒会室へと足を急がせていた。
バン!と勢いよく扉を開ける。
「会長!赤の試験合格しました!」
得意げに胸についた赤色の校章を会長ー野々宮 葵に見せつけた。
「おーよかったね、なかなか力が安定しないから心配してたけど玲ちゃんは本番に強い。」
ちらっと校章を見るとさほど興味がないのか座っていた椅子の上で体育座りをしクルクル回り始めた。セミロングの茶髪に幼児体系楽しそうにクルクル回る姿はとても自分より年上には見えない。
必死に合格したのに軽く流されたため若干イラっときたものの、いつもの事だと自分に言い聞かせ心を落ち着かせる。
「これでようやく玲ちゃんも副会長だね。」
生徒会には会長、副会長、書記、庶務など役職かあるが副会長になるには赤のランクである事が求められる。
「凄いなぁ玲ちゃんは赤なんてエリートだよエリート。」
グルグル回る椅子でのほほんとした顔で会長は言った。グルグル回る幼女の胸にある白い校章をチラッと見る。
「白の会長に言われても嫌味にしか聞こえません。」
私は顔をしかめて言った。
そう、副会長に求められるのが赤であるように会長である条件は白。白のランクを持つ人は世界にはまだ数少ない、このお子様にしか見えない人はそのうちの一人なのだ。
「この学校ができて五年、先輩達が卒業して元々少なかった役員が私だけになり、去年玲ちゃんが入って二人、生徒会の活動に必要なのは最低でも会長と副会長が一人ずつやっと活動できるね!」
葵はとびきり嘘くさい笑顔を浮かべた。
「いつも、活動したくないがために私の合格を邪魔しようとしてたのは何処の誰でしたっけ?」
「ダレダロウネー。」
汗をダラダラ流し目を泳がせる。
「まあ、合格したからにはちゃんと活動しましょうね、会長?」
ニヤッと笑う玲奈を見た葵はさらに流す汗の量を増やした。
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「さて、それでは今我々がやらなければいけないことを整理しましょう。」
玲奈はどこからか取り出したホワイトボードに資料を貼っていく。
「では、会長何があるか分かりますか?」
「えーっと、あれでしょ?猫ちゃんが木から降りれないとか、お兄ちゃんが部屋から出てこないとか。」
フン、と得意げに答える。それを得意げに答える貴方が一番の問題な気がします。
「それでしたら身近にも重大な問題がありますね。」
「え?なんかこの辺で起きてたっけ?」
「会長の低身長です。」
「私よ身長の低さそんなに問題なの!?」
涙目になりながらガタっと立ち上がる。
「ええ、高校三年生の平均身長は158cmそして会長の身長はおよそ14「うわぁぁぁ!!」」
「プライバシーの侵害!」
「ですが会長のせいで平均が下がり…っく!」
「え、本当に何か問題が出てるの?」
「いえ、そんな事私の知ったことではありません。」
「ちょっと!」
この人は本当にいじりがいがあるな、まあそろそろ本題はいらなくては。
「冗談はさておき、私達は今まで活動してなかったわけですのでここ最近で起きている二つの事件を確認しましょう。」
ホワイトボードに黒の集団と書くと1人の男の顔写真を貼った。
「まず、黒の集団と呼ばれる集団の起こす事件ですが文字通り黒、つまり無能力者の集団です。彼らは無能力であることから能力者に嫉妬し暴行を加えています。元々、少なからずこのような集団はありますが最近特にこの集団の動きが活発なので沈静化にあたったほうがいいでしょう。」
フーンと鼻と口でペンを挟んだ会長がつまらなそうに机に突っ伏している。
「では会長、この黒の集団どのように見分ければいいと思いますか?」
「そんなの簡単だよ!黒の集団ですか?って聞けばいいんだよ!」
「なんてお花畑な脳みそなんだ。この人やっぱりまだ小学生とかじゃないのか?」
私は頭を抱え、はぁとため息をつくとホワイトボードに色々と書き込み始めた。
「いいですか?黒の集団は自分達のチームをアピールするためかそのチームマーク成るものを何処かに付けています。つまり、そのマークを見かけたならば即刻逮捕怪しければ調べればいっぱつで分かるって事です。間違っても聞いたりなんかしてはいけません。」
ギロッと睨むとはぁーいと反省したのかしてないのかとりあえず資料にメモをとった。
「そして、この男ですが」
私は写真を指さした。
「石田 亮太、黒の集団のリーダーと思われる人物です。人数が多くなってきている今この男を捕まえる事が事件解決になるかと。」
「なるほどね、それでもう一つは『能力者狩り』でしょ?ニュースにもなってるしそれは私も知ってるよ。」
会長はむふーと自慢げに胸をはる。
「おぉーよく知ってますね!飴ちゃんあげましょうか?」
「私の方が年上って知ってるよね!?」
バンッと台を叩いて怒っているが飴を投げるとわーいとそれを受け取った。ふむ、この幼女はテイクアウト可能だろうか。
「でも折角で申し訳ありませんがこの事件については私達は関わらなくて良いでしょう。」
「え、なんで?」
「危険だからです、この事件は緑以上の能力者が襲われています。緑までいけば人によっては充分身を守る事に使えるレベルですなのに病院送りにされているつまり犯人は赤もしくは白ですらある可能性もあります。なので、私達はノータッチ。すでに警察が動いています。」
「赤だろうが白だろうが私に壊せない壁はないよー!!」
会長はえいやぁと拳を打ち出す。
「会長はまず成長という壁を壊しませんとね…」
はぁと私は顔に手を当て目を伏せる。
「ちょっとそんな顔しないでよ!一番泣きたいのは私なの!」
「そんなわけで『能力者狩り』についてはこちらからは関わりません。」
会長は、はいはいと生返事をした。本当に分かってるのかなこの人は…
「じゃあ早速行こうか!」
言い終わる前に立ち上がり、葵はそそくさと鞄に自分の荷物を詰め始めた。まさか、この幼女に会長の自覚が、出てきたなんて私は感激です。
ホロリと流れる涙をハンカチで拭い自分も出かける準備をした。
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