プロローグ
バキッ!
「まだ、落ちんのにははえぇ、ぞ!」
バキッ!
多くの人が右往左往する大通り、そこからひとつ外れた裏路地はすぐそこが大通りとは思えないほど暗く人影は見えない。そこではケンカ・・いや人数からみてリンチといったほうがふさわしいだろう。一人の少年は両腕を二人に抑えられた状態で残った一人から一方的に殴られていた。
「おいおい、すんなりここに連れ込まれたくせに全く抵抗しないなんてお前マゾ?」
バキッ!
ひたすら殴る不良Aはニヤニヤしながら少年の顔に拳をぶつける。
「お前早く交替しろよ俺だって最近イライラがたまってんだよ。」
右腕をおさえる不良Bはその言葉通り不機嫌さが嫌というほど伝わってくる。
「俺はいいっすからとりあえずさっさと終わらしてくださいね。」
言葉からして左腕担当の不良Cはほかの二人より年下だろうか・・
少年は何発殴られても抵抗しようとしない、いやもうすでに抵抗することをあきらめているようだ。
「お前、その制服国立だろ?だったらcolor持ってんだろ?かかってこいよ!」
「ああ!?こいつ黒っすよ?抵抗してこないわけっす!」
「ホントだ、わりーわりーきづかなかったわ!」
ギャハハハ!と三人の不細工な笑い声が路地へと響く。
ぐっと少年は拳を握りしめた。
「おい!こいつやる気になったみたいだぜ?」
Bがそれに気づくとより一層下品な笑みを浮かべて言った。
「そうこなくっちゃな!殴りがいがあるってもんよ!」
バキッ!
その握りしめる拳からは血が出ていた。
「おーい、なにやってんだ?」
Aの後方から声が一人の男の声。
「あっ!亮太さん!いやーいいサンドバック見つけたもんで。」
不良の仲間らしく、見かけはそこまで、いやむしろ少しやせているぐらいだがAが敬語をつかうということは、立場は上なのだろう。
「俺にも使わしてくれよ。」
「いいっすよ!おい!お前も気の毒だな!亮太さんは赤のcolor持ってんだぜ!お前もつくづく運がねーんだな!」
ピクッ
今まで拳を握り締めること以外アクションを起こさなかった少年がAの言葉を聞きゆっくりと顔をあげた。その顔に笑みを浮かばせて・・
「へー、あんた能力者なんだ・・・」