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狙撃手は突然に  作者: カカオ
狙撃手の手にはカメラ
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将也襲来

 桜井由梨香は学校から帰ってくると、さっさと制服から私服に着替え、カメラの手入れを始める。

 祖父から貰ったマニュアル式の一眼レフだ。もう三十年以上前のものだが、今でもしっかりと写真が撮れる。

 まずボディを拭き、レンズの埃をブロアで吹き飛ばす。カメラをいじっていると不思議と落ち着く。今日の学校の最悪の空気も忘れることができる。結局、貴恵は一日クラスメイトたちの視線に晒されていた。明日はいったいどうなることやら。

 ――最悪の状況を作ったのはあたしだけど……。

 その時、外から一橋将也の声が聞こえてくる。

「ゆーりーか」

 桜井由梨香は恥ずかしくなる。小学生ならともかく中二にもなってその呼び方はないだろ!

 桜井由梨香はドタドタと一階に降りて、店に出る。将也は店のショーケースを見ている。

「将也ッ」

「よう」

 桜井由梨香の呼びかけに、一橋将也は暢気そうに答える。

「あんな呼び方するな! バカっ!」

「え? 呼び方?」

 一橋将也は首を傾げる。本当に何もわかっていないみたいだ。こういう天然っぽいところがイライラする。そのくせ時々鋭いことを言うからドキッとする。

「もういい。それより何か用?」

「いやぁおじさん、良い仕事してるねぇ」

 将也は店のショーケースを見ながらしみじみと言う。ショーケースの中には父が最近作った無駄に大きなロボットのプラモデルが飾ってある。

 わかるー? いやぁ自分で言うのもなんだけど大作だと思うね、だっはっは。

 ――と、父がカウンターから声を張り上げる。

「オヤジッ、だまってろ! 将也ッ、用はなんだよ!」

 由梨香は声を荒げる。

「用? ……あ、そうだった。緊急事態だったんだ」

 将也は思い出したように言う。

「忘れる緊急事態なんて緊急事態じゃない」

「いや、緊急事態なんだよ」

 彼はそう言うと、表情を引き締める。緊迫感に溢れ、ただならぬ気配を漂わせる。背が高く体つきは何かスポーツでもやっていそうなほどにガッシリしているから、こういう顔をするとなかなか悪くはない。

 しかしその実、彼はスポーツなど大嫌いで、もっぱら部屋に篭ってプラモ製作三昧の日々だ。

 それを知らずに一也に告白する女子は多い。由梨香はそういう女子を見るたびに、やめとけやめとけあんなプラモオタ、とバカにする。

「由梨香、お前の力が必要なんだ」

 将也はひたと由梨香を見つめる。彼の目は真剣で、ついさっきショーケースを見ていた阿呆面はどこかへ消し飛んでいる。「頼む」

「わ、わかったよ。で、何なの?」

 由梨香は押し切られてしまう。

「ついてきてくれ」

 将也はそう言うと、有無を言わさぬ勢いで由梨香の腕を取り、外へ出て行く。

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