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TORASTAR  作者: ( ´△`)
2/11

お前はどう思う?

「なぁ桐ヶ谷刀屋」


唐突に先を歩いていた真赤が口を開いた。


「どうした」


刀屋としても彼女がしゃべりかけてくれるのはありがたかった。黙っているとどうしても傷に意識が向いてしまって痛みが増すように感じる。

自分から話かけようにも刀屋は、長くスラムで暮らしていたため女受けする話題など全くと言っていいほど分からない。

そのため、無言での歩行がかれこれ2時間ほど続いていたのだ。


「実は最初から気になっていたのだが、お前のその腰に差しているソレは一体何なのだ?」

「――――――」

いつの間にか立ち止まっていた真赤の切れ長の瞳が刀屋の腰の刀集中する。


さすがというべきか、それとも当然だろうか。

一般人には、恐らく気づかれることはないだろう。一見すればただの鞘に納まったただの刀にしか見えない。そういう風に偽装されているのだ。

しかし、トラスター能力者の目は誤魔化せないのだろう。―――いや、真赤が特別なのか。


「・・・・・・これは刀だ」

それを聞いた真赤は少し残念そうな顔をした・・・・・・ように見えた。


なんとなく、言い訳している気分だ。俺だってコレがただの刀でないことは理解している。

だからといって説明できるということではないのだ。


「そうか・・・・・・刀か・・・・・・確かにソレは刀の形状をしているな。だが、私にはソレ単なる刀だとは到底思えない。その刀から発せられるレアフォースの量。そして異様なまでの禍々しいオーラ。別に嫌ならしゃべらなくてもいい。私も無理に聞こうとは思わん。一応、私も君のことは噂で耳にしているからな」

そう言うと真赤はまた前に向き直りさっきよりも少し足早に歩き始めた。

怒っているのだろうか。


それにしても・・・・・・噂・・・・・・噂か。

果たしてその噂にどれほどの真実が含まれているのか。

「噂か・・・・・・真赤は噂なんて情報精度の低いもので満足するようなタマじゃないと思ったが・・・・・・」

「買い被りすぎだ。それにまだ出会って間もない君に私の何が分かるというのだ」

真赤が少し憮然としたように言う。

少し馴れ馴れしかっただろうか。

しかし、馴れ馴れしさで言えば最初からフルネームで名前を連呼する真赤のほうが上だろう。

少しくらいなら許されるはすだ。

「その噂ってどんな噂が流れてるんだ?」

「悪いが私は噂なんて情報精度の低いものに左右されるような女ではないのでね」


顔を真っ赤にして怒った様子の真赤はそう言うと更に歩く速度を上げて離れていく。


「ちょ―――まってくれ!」


いつの間にか道はコンクリートですら無くなり、周りの景色は一変していた。

今にも倒壊しそうだったビルの残骸は消え、代わりに鬱蒼と奇妙な形をした木々が鬱蒼と生い茂っている。

少しでも離れてしまえば真赤をすぐに見失ってしまいそうだ。

速度を上げて真赤を追いかけていく。

そのままどれくらい追いかけっこをしていただろうか。


「なぁ桐ヶ谷刀屋。お前はどう思う」


いきなり立ち止まった真赤は刀屋にいきなり訪ねた。

彼女は振り返らない。

その背中を見つめたまま刀屋は・・・・・・。

その問いに答えられない。

なにしろいきなり訊ねられたのだ、その訪ねられた理由が分からなければ当然答えられるものも答えられるはずが無い。

答えに窮した刀屋は黙ったまま彼女の後姿を見つた。

華奢な体だ、少し力を入れて抱けば壊れてしまいそうなほどに、真っ赤な外套を羽織ったその姿は鬱蒼と茂った木々が造り出す闇の中で輝く最後の希望の光のように眩しく感じられた。


「俺にはわからない」


まだ出会って間もない刀屋には彼女を何も知らない。

トラスターになって間もない刀屋には、何もわからない。

理由を知らされずに空へ放り出されたソレへの答えを刀屋はまだ持ち合わせてはいないのだ。


ほどなくして刀屋達は森の中の廃墟で暖を取ることにした。


真赤がトラスター能力で点した火を二人で囲む。

天井のない部屋で過ごすことに慣れている刀屋には大したことはないが、隣の真赤は少し寒そうに体を丸めている。

この森を抜けたら真赤の住処まではすぐに着くという話だ。

さきほどから虫の声がリンリンと鳴り響いている。

視力を強化してもその姿を見つけることはできない。

眠気に瞼が重くなり次第にうつらうつらと首が下がっていく。

隣を見れば既に真赤は眠りについた後だった。

あれから彼女とは話を交わしていない。

(寝顔も綺麗なもんだな・・・・・・)

薄く閉じられた瞼や半開きの唇に思わず目がいってしまう。

刀屋はしばらく彼女の美しい寝姿を堪能してから眠りに着いた。


真夜中。

不可解なトラスター能力の波動を察知にした刀屋は気がついた。

一気に脳が覚醒する。

隣で眠りこけている真赤を必死になって起こす。

体を静かに揺さぶり声をかける。


「おい、起きろ真赤。はやく起きろ!」


「ん、んぁ?」

寝ぼけた様子で真赤はゆっくりと覚醒する。

「強いトラスター能力を感じる、お前はどうだ」

「ちょ・・・・・・ちょっとまってくれ」

そう言って真赤は瞳を閉じて意識を集中させる。

「これは!?」

「逃げるぞ!早く!!」

「・・・・・・まて」

急いで逃げようとする俺を真赤は引き止める。

「神獣の方が圧倒的に素早く移動してくる、特にこのトラスター波長は厄介な神獣だ、無事に逃げ切れる可能性は低い」


「・・・・・・どうする気だ」


真赤の表情は真剣だ。俺はこんな顔をする人間を知っている。


「私が足止めをする、その間にお前は逃げろ」


真赤は、はっきりと言い放った。

その顔に死への恐れは微塵も感じられない。


「お前一人だけじゃ無理だ俺も行こう」


一瞬、嬉しそうな顔をした真赤だったがすぐに首を横に振った。


「お前は怪我人だ、私は足手纏いを守りながら戦うのは無理だ。お前は先に行け」


「しかし・・・・・・」

神獣を一人で倒すことはまず不可能だ。

最低でも二人一組のタッグを組んで戦わなければ神獣と互角に戦うことすら難しい。


刀屋が言いたいことが分かったのだろう。

それでも真赤は首を縦には振らなかった。


「足止めするだけだ別に倒そうとしているわけじゃない。心配するな」


「それに奴の狙いは恐らく私だろう、迂闊だった、この一帯では神獣は現れないはずなのだが・・・・・。いや、言い訳してもどうにもなるまい。とりあえずこの場は私に任せろこれでも戦闘に関しては他のトラスター達にも遅れを取るような腕前ではない」


自信満々の真赤の姿に刀屋は少し安堵した。彼女なら大丈夫だ、そう思わせるほどに彼女の言葉には力が篭っていた。


「この先の森の出口に橋があるはずだ、そこて落ち合おう」


そう言い残し、彼女は俺と反対の方向へ走り出す。


その姿を見届けた俺も走り出す。


彼女なら大丈夫だと信じきったまま。



受験とオンラインゲームとアニメを同時にこなすとか無理やねんな・・・・・・。

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