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カーマインレッドの明けない夜  作者: 宝や。なんしい


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第4話

 あおいと出会って一年とちょっとになる。


 あおいは、私の勤めている会社に入社して、次の日に辞めた。

 最近は入社してもすぐに辞めてしまう人は増えてきてはいるが、実質一日というのは今までの経験のなかでは最速だった。

 人事部の課長の白川洋子(しらかわようこ)さんとトイレで会った時に「採用とか研修とかで、どんだけ金使こてると思てんねん、耳そろえて返せ、若造!」と怒り心頭だった。


「何が理由やったんですか?」と私が聞くと、

「彼が言うには、会議がしんどかったらしい」

「会議? 初日の夕方にやった会議ですか?」

「そう、会議なんかするって聞いてへんかったからって」


 あおいは私の所属する部署に入ってきた。

 その日は確かに会議を行い、17時の定時はとっくに過ぎて、20時くらいになってしまったような記憶がある。年度初めということもあって、部長がいつもより丁寧にみんなの意見を聞いたりしたのも遅くなってしまった原因だった。


 あおいも入社の挨拶をさせられていた。よろしくお願いします、くらいしか言わないので、みんなに色々質問されて、その時はわりに楽しそうにしていたように記憶していたのだけど。


 それよりも、あまりにも見映えの美しい男の子が入ってきたということで、女子の間では騒然となっていて、いつもはおとなしくて目立たない花井さんまでもが、顔を赤らめて、ちらちらとあおいに視線を送っていたりして、なんとなく風紀の乱れを感じた。

 

 私はもうすぐ35歳で、一応、課長代理という肩書きもあるし、毎日穏便に過ごせたらいいと常々思っていたので、あおいが早々に辞めてくれたのには、正直なところほっとした。


「会議くらいで失望するくらいやったら、そら長続きせんわな。最近の若いやつの脳ミソどないなっとんねん。耳から手え突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたらなあかんな」


 そう言って白川さんはハンドソープをたっぷりつけて、何度も手を洗っていた。


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