第2話
私はあおいの指に触れられるのが好き。
指の大きさなのか、湿度なのか、温度なのか。理由はわからないけれど、いつまでも触っていてもらいたくなる。
「まいちゃんにふられた」
右足が終わって左足にかかろうかという時、手をとめてあおいが言った。
「本気の恋やったのに」
冗談みたいに軽い感じだった。
「そらそうや。言うたやろ、私、最初に。まいちゃんはあおいには合わへんて」
「うん、言うた」
コンタクトをしていないので、足元にいるあおいがどんな表情をしているのかはっきりとは見えなかったけど、きっと、自然にカールした長いまつ毛をしっとりと濡らして、ストロベリーゼリーみたいな瞳をゆるゆるとさせているのだろうと思った。
「やっぱ、オレ、あかんわ」
私の足の指を触りながら、しょんぼりする。私は気持ちいいので、このままずっと触り続けてくれたらいいのにと思っていた。
「いけるよ」
何がいけるのかわからなかったけど、とりあえず励ましてみる。
まいちゃんはあおいのバイト先で知り合った、二十歳そこそこの大学生で、多分、あおいの外見が好きなだけなんじゃないかと思う。私はあおいから話を聞くだけで、実際に会ったことはなかったけど、大体そんなところだろう。
あおいは女の子みたいにきれいな顔をしているので、すごくモテる。だけどつきあってもなぜか長続きしない。どんな風につきあっているのか私は知らないので、本当のところはよくわからないけど、私としては、どうしてもあおいのほうをひいき目に見てしまうので、何をしたとしても女の子が絶対的に悪いと思っている。
あおいは、こうしてしょっちゅうふられては、「もう、あかんわ」と泣き言を私に言う。私はそれをいつも適当に慰める。
そして、あおいが本当は何を考えているのかということを、考える。
「あおいさあ、ほんまにまいちゃんのこと好きやったん?」
あおいは一拍おいてから、ほんまに好きやった、と伏目がちにこたえた。そして、また思い出したように爪を切りはじめた。




