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天啓といっしょ♪

作者: 赤(あか)
掲載日:2026/02/06


「え……。それは……、違くね!?」


 画面を追いながら、おかしな文章にツッコミを入れる。


「……誰か、ツッコんでやれよ……」


 一人語りで進んで行く物語。


 主観で語られる、新しいが、どこか古臭い物語。


『普通ここで、他の人が出てきて、こういう振る舞いをして、そんで……。……あー!! 違うじゃん、そうじゃないじゃん。何で? 何でそういうことになる? ……作者は一体、何をしたいんだ……』


 俺だったら、という仮定でもって、物を読むタイプには非常に不愉快な展開図。


 普通も常識も通用しない、話題展開。


『一体、何をどうすりゃそうなるの? そして、作者は何者なの? んで、このキャラは、いくつなの……!?』


 読みながら、心の中でツッコミを入れる。


『こんなに、ツッコむことなんて、ないのにさ』


 普通、物語は起承転結。始まって、展開して、どんでん返しがあって、結びの挨拶がある。


 なのに、この物語は。


「ジェットコースターじゃねぇか……」


 まるで病気。何かの病気みたいに、上がって下がって上がって下がる。


 あまりの乱高下に、上昇気流も慌てて戻ってくるというもの。


「……何か、あったのかな」


 長年の勘と経験が、小さな警鐘を鳴らす。


「こういう文章書くやつは、たいてい……」


 昔、文芸部にいた時、色んなアマチュアの物語を読んだ。

 アマチュアとは言っても、皆、物書きの卵だ。それなりの腕はある。


 普段、物静かな友達が書く物語は、結構ハードボイルドだったり、優しくて気さくな女友達が書く物語は鋭敏なセンスを活かした、読者をドキドキさせる物語だったりした。そして、ファッションセンスがいい、平安貴族のような友達が、企画を持ってきてそれが大ヒットしたりした。


「何か、あったんだな」


 友だちに似た文章を辿りながら、その思いは確信に変わる。


 いつもなら、「素晴らしい!」からの「スルースキル発動!」なのだが、これは少し違った反応を返すべきかもしれない。


「とはいえ……」


 作者の名前と、俺の技量……。


「たぶん、あいつだろ……?」


 ネットで無双しているあいつ。そして、ネットで影キャラを演じている俺。


「格が……、違うよなぁ」


 人格も嗅覚も触角も違うと思う。

 きっと、俺みたいに鈍感な奴じゃない。


『表向きニコニコして対応し、裏で……っていうかネットで、グサグサ人のプライドを刺してくる奴だろ……?』


 俺の長年の経験が言っている。


『触らぬ神に祟りなし……!』


 この神なるものを触れるのはきっと、同じ性質の神か、まったく逆のポジションを取る神。

 もし、人ならば、何かがイカれてしまった人間か、物を知らない若い衆か、『俺なんて……俺なんて……。いなくなっちまえばいいんだーぁーぁーぁー!』と叫んで職場から消える、有能だがポンコツの年下か、なんちゃってサイコパスあたりが適任だろう。


“そんなんじゃ、ないのに……”


 あれ、おかしいな? 天啓が……なんか突っ込んできた。


“そんな酷い人間は、どこですか……?”


 あれあれ? なんか、天啓がグロッキーなんだけど?

 大丈夫? 薬要る?


“お前のー、そういうところがー、大嫌い~♪”


 あ、天啓歌い出した。


“あっ、ごめんね! そいつら回収するね! ごめんね! ……こらー、だめだって言ったでしょうー! 言うこと聞け―!”


 ……。他人に優しく、身内に厳しく……。この天啓、金持ちか!?


『なんてな』


 そんなのが聞こえ始めたらお終いだ。とにかくすべてがお終いだ。


 俺の人生、お終いばかり。


 仕事で干され、家庭で干され、そろそろ干し芋に親近感が湧いてきたところ。


「お前って、俺みたいだな」


 母ちゃんとの買い物(無理矢理)に付き合わされながら、スーパーの干し芋に手を伸ばす。


『……随分高くなっちゃってまぁ』


 昔はこの半額くらいだった。今の若い衆なら、これが本当は今より100円くらい安かったと言ったら、度肝を抜かれて倒れるだろう。


『言えねぇ……。言えねぇよなぁ……』


 流石に相場観まで伝えられるほど、最近の子どもは頭が良くない。


 必死に学校で勉強している子どもは、そちらに容量を持っていかれて、他のことに割く頭の容量がない。


『俺も、そうだったし』


 俺が必死に勉強している一方で、するすると勉強を身につけて、いつも100点を叩き出す友達がいた。友達のピンチにはダッシュで駆けつけて、必要とあらばボコボコにして、警察送りになっても、「それがどうした」と反省しない、悪党か正義の味方か分からんような友達がいた。


「だって、困ってるんだよ!? 見捨てるなんて、あり得ない!」


 そう言って、俺の手を煩わせる友達がいた。


「あのさーぁ、今月さーぁ……」


 ほら、来た。金と時間の無心だ。


「100万からか……?」


 テキトーに答える。


「ううん、1000万♡」


 とんでもない額を言う。

 そんな、はした金。もっと大きく出てくればいいのに。


「1000万? 1億じゃなくて?」


 そう言うと、友達が不思議そうな顔をする。


「1億もらうより、1000万を1億にする方が楽しいじゃん」


 何言ってんの? と小馬鹿にする響き。

 いや、相手は思ってないのだが、昔の恋人がそんなんだったものだから。


「ほう。……して、単位は?」


「そうだね、最近、ちょっと読めなくなってきたからね……、円より百万円の方がいいかな!?」


 長年、会社経営などやっていたものだから、物の単位がおかしくなってしまった友達。


 俺は未だに分からない。


 何故、決算だなんだの書類に「百万円単位」が使われているのか。


 俺は役員まで上がったけれど、未だにその謎だけは解明できない。


「あんたさぁ、また誤解を生むようなことをさぁ、思ってるんじゃない?」


 流石、昔の友達は違う。よく物を見ているし、俺の心の中も見えている。


「生徒会役員のことを、まるで会社役員のように言ったりしてない?」


 当たり。そう。事実はそう。だけど、違う。これは小説における常套手段であって。


 そうではないことを、あたかもそうであるかのように告げるのは。

 創作者たるものの、習性とか性分であって……、使う場を間違えたら詐欺だけど……、そこに錯誤があるかないかが問題で……


「言ってはないよ、思ってるだけで」


 人に伝えるは責任が。言ったことには責任が。


 だから、俺は口数減らす。口から出るは嘘ばかり。


『でも、本当は――』


 嘘ばっかりってわけでもない。本当に思ってる誉め言葉。本当に願ってるその未来。

 だけど、全部を言うと、相手がもたない。


 だから、相手に分かる範囲と量で。その辺を勘案しながら、時にはそれを小さく越えて。

 相手に向かって伝えていく。


 社会は、許容範囲が狭いから。


 俺と友達みたいに、垣根を越えて、心と心の触れ合いを楽しめる奴など、ホントに稀で。


 だから、俺らは線引いて。俺とあいつに線引いて。


『俺らとお前は違う奴』


 そうして、ラインを引っ張って、上手に付き合うしかないじゃん。


 ホントはマブダチなんだぜだとか。

 ビジネスパートナーが年下だとか。

 付き合った時期などないんだだとか。


 そういう仲良しアピールなんて、所詮、幻のものだから。


“分かってるけどね~、弱い奴~!”


 ぐぅ。


“それを、許されてたら、こっちだって……”


 うっ……。


“ま、まぁ、人には事情があるもんね!”


 うんうん……。


“……ダッサ。”


 ほ、ホントのこと言うな……!


“え……? あっ、違う違う。あの、この天啓どもに言ってんの。君はダサくないよ? 素敵だよ。うん。……うん(睨む)”


 うん、優しい言葉だと受け取るね……。それ以上言ったら、おじさん、死んじゃう……。


“(またやっちゃった……)”


 あぁ、天啓が凹んでる。


「へー、天啓って凹むんだ~。そんな天啓あるんだ~。メモメモ……」


 ほんっとにこいつは……。


 勉強をしろ、小説の勉強ではなく。


 世の中をもっと勉強しろ。そういう実学が足りないから……。


 ……。


『通じるものはありますか?』


『そうですね、何かあると思います』


『それじゃ、あれを捕まえますか?』


『捕まえんのは……、明日で良くね?』


 何でも一気呵成に、成そうとしては揺らぐだけ。


 こつこつ、静かに着実に。


 外堀埋めて、イエスを貰う。


 そうでもしなきゃ、体力が。


 多分もたねぇ、生まれが違う。


「今がチャンスと、言いますが?」


「チャンスは生きてりゃ、何度も来るさ」


 友だちが俺をけしかけて、実働するのは俺単体。


 俺は友とは違うから。ゆっくりやるのさ、互いのために。



 それが、あいつの選んだ道ならば。


 これが、自分の道だから――。



 流行りが廃れりゃあ、人廃る。


 それでも、道は続くから。


 テキトー言って、真実言って、時々冗談混ぜ込んで。


 ポンッと出来たその仕事。


 誰かに掻っ攫われてお終いよ。


 それが、いいじゃん。それくらい。


 手柄はお前に。経験俺に。


 そのくらいで、やってけりゃ。


 俺はいつか死ねるでしょ?


 君はずっと、そこにいて。


 いなくなってもそこにいて。


 だから、僕は大丈夫。


 この世界がある限り、僕が肉体ある限り。




 俺の財布は、俺のもの。


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