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初仕事
カランコロン。
ドアの音と一緒に、高校生の男女が八人、店に入ってきた。
笑い声が重なって、空気が一気に明るくなる。
――楽しそう。
胸の奥が、少しだけちくっとした。
「……ら、しゃい」
声が小さすぎて、自分でも聞こえない。
「い、いらっしゃいませ……」
今度は、ちゃんと言えた。
「何名様ですか?」
「八人で」
「か、かしこまりました」
震える手で端末を操作する。
でも、画面が動かない。
「……あ」
指が止まる。
「これ、動かない……。ど、どうしよう。壊しちゃった……」
小声で言うと、本野がのぞき込んできた。
「それ、次のボタン押してないだけだよ」
画面が切り替わる。
「……夢乃って、機械きらい?」
「うん……それより、お客様……」
私は深呼吸して、顔を上げた。
「えっと……たぶん、八番室です。楽しんできてください」
一瞬の沈黙のあと、
「はーい、ありがとう」
そう言って、みんな奥へ向かっていった。
扉が閉まった瞬間、足の力が抜けた。
「……できた」
「すごいじゃん」
本野が、両手を小さく上げる。
「お客さんの相手、ちゃんとできたじゃん。いえーい」
私はまだ心臓がうるさかったけど、
胸の奥に、ほんの小さな達成感が残っていた。




