43/43
本野、楽しい青春ありがと
「楽しかったね。じゃあね」
「じゃあね」
家のドアを開ける。
「ただいま」
返事はない。
いつもより、少しだけ静かな家だった。
靴を脱いで、自分の部屋へ向かう。
机の上に、見覚えのないものがあった。
「……何これ?」
一冊の本。
表紙は、少しだけ見覚えがある。
パラ。
ページをめくる。
「……本?」
読み進める。
そこには。
本野との生活が、書かれていた。
出会い。
バイト。
ゲーセン。
ネズミ遊園地。
全部、全部。
「あ……あ……」
ページが滲む。
私は本を抱えながら、泣いた。
声を殺して。
最後のページ。
そこには、丸い文字で書いてあった。
⸻
今までありがとう。
楽しかった。
私がいなくても、これからも青春楽しんで。
⸻
ぽた、と涙が落ちる。
本野がいない毎日は、
何かが足りないように感じる。
でも。
笑える。
愛と、これからも。
ちゃんと青春していける。
本野がくれた物語は、終わったけど。
私の物語は、まだ続いている。
私は本を閉じる。
パタリ。
窓の外には、夜。
でも、どこかあたたかかった。




