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焼き鳥、美味しい
「今日は、もう上がっていいよ」
店長の声に、肩の力が抜けた。
「お疲れさま」
「……お疲れさまです」
店の外に出ると、夜の空気は少し冷たかった。
「今日は忙しかったね」
本野が、伸びをしながら言う。
「そ、そうだね」
歩いていると、どこからか香ばしい匂いが流れてきた。
「……焼き鳥?」
「いい匂い」
私は、すぐに言う。
「今日は買わないからね」
「えー」
本野は少し考えてから、にやっと笑った。
「じゃあ、魔法で作っちゃうか」
「ちょっ——」
パチン、と指を鳴らす音。
湯気の立つ焼き鳥が、手の中にあった。
「……うーん」
本野が一口かじる。
「おいしい」
「……お、おいしい」
思わず、笑ってしまった。
忙しかった一日。
疲れたはずなのに、心は少し軽かった。




