またまた厄介客
「おい、誰だよ、この唐揚げ作ったのは。不味すぎ る。」
「すいません。作り直してきます。」
「当たり前だ。もちろん、無料代だよな。」
「もちろんです。唐揚げ代は無料です。失礼しま
す。」
頭を下げて、お客様の部屋を出た
厨房
「あのすいません。
この唐揚げ交換してもらってもいいですか。」
「え、なんで?」
店長は不思議そうな顔をしていた。
「お口に好まなかったらしいです。」
「そうか。今、チンするから、待ってて。」
チン。
「あいよ。」
「ありがとうございました。」
私は急いでお客様に唐揚げを持って行った。
「すいませんでした。唐揚げです。」
「はぁー、これもまずい。」
「すいません。お口にあいませんでしたか」
返事はなかった。
でも、その沈黙が、答えだった。
私は顔を上げて、続ける。
「こちら、本日ご利用いただける
二〇%引きのクーポンです」
テーブルに、そっと置く。
「不快な思いをさせてしまい、
大変申し訳ございませんでした」
少しだけ、間を置いて。
「次回は、お客様が快適に過ごせるよう、
改善いたします」
もう一度、頭を下げる。
「……失礼いたします」
背中に視線を感じたけれど、振り返らなかった
店長は、少しだけ頷いて言った。
「さっきの対応な、正解だよ」
一拍おいて、
「相手に振り回されなかった。それでいい」
それだけ言って、厨房に戻っていった。




