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え、1人でホール
「ごめん、どっちか厨房に入ってくれない?」
カウンター越しに、店長が言った。
「注文、多すぎてさ。俺ひとりじゃ無理」
一瞬、店内を見渡す。
待ち表示が、ずらっと並んでいる。
「わかりましたー」
本野が、すぐに手を挙げた。
そして、私のほうを見る。
「じゃあ、夢乃」
少しだけ、間を置いて。
「ホール、頑張れ」
「……うん」
それだけだった。
本野はエプロンを直して、厨房の奥へ消えていく。
ドアが閉まる音が、やけに大きく聞こえた。
――ひとり。
カウンターの前には、お客さん。
モニターは点滅している。
「すみませーん」
「は、はい!」
声が裏返ったけど、足は動いた。
本野はいない。
でも、私はここに立っている。
逃げなかった。
私は、深く息を吸って、次の注文を取った。




