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数学
「……疲れた」
椅子に座った瞬間、思わず声が出た。
「次、何?」
「数学」
「えー……」
本野が大げさに机に突っ伏す。
「それ、寝かしにきてるじゃん」
「でも、楽しいよ」
「え、まじで?」
顔を上げて、こっちを見る。
「私、数学苦手だからさ。助けてね」
「……うん」
チャイムが鳴って、授業が始まる。
先生が黒板に式を書く。
「じゃあ、この問題。本野、答えて」
「……え」
本野が、ちらっと私を見る。
もう一度、ちら。
――完全に、助けを求めてる。
仕方なく、私はそっとノートを見せた。
答えのところだけ。
「……えっと……」
本野が言いかけた、そのとき。
「こら、本野」
先生の声が飛ぶ。
「夢乃に助けを求めるな」
教室が、少しだけざわついた。
私は、びくっとしたけど――
なぜか、嫌な気はしなかった。
本野は、肩をすくめて小さく笑う。
「はーい」
私はノートを閉じて、前を向いた。




