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い、いや、学校
校門が見えた瞬間、足が止まった。
――帰りたい。
「なんで? 行こうよ」
本野は、いつもみたいに軽い声を出す。
「……い、行きたくない」
制服の袖を、ぎゅっと握る。
「私はさ、夢乃と一緒に学校行きたいな」
その言葉に、胸が少しだけ揺れた。
「……わ、わかった」
小さく答えると、本野はぱっと笑った。
「やった。行こ」
校門をくぐる。
同じ制服の人たちが、当たり前みたいに歩いていく。
その中に混ざるのは、やっぱり怖かった。
――でも、戻らなかった。
教室の前に立つ。
「……ここ」
中に入ると、自分の席があった。
「私の席は……ここか」
椅子に触れた、そのとき。
「ねえ」
本野が、隣を指さす。
「なんで、本野の机があるの?」
「うん、魔法」
さらっと言う。
「私はね、もともと“ここにいた”ってことにしてるの」
「……そんなの、あり?」
「ありあり」
本野は机に座って、足をぶらぶらさせた。
「安心して。今日は隣にいるから」
教室のざわめきが、少しだけ遠くに聞こえた。
私は、ゆっくり息を吐いた。




