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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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95/102

第95話 情動核(ハート)への侵入

 ミュコが作った長い通路は、

 まるで別世界のように静かだった。

 外では、黒いガーディアンたちが暴れ、

 グレンが雷を放ち、

 ボビンの盾が轟音を返している。

 だが——

 ここには、音一つ届かない。

 ただ、カケルの足音だけ。

コツ、コツ、コツ……

(……これが、最後の道か)

(全部──終わらせる道だ)

 ミュコの柔らかな光が道を照らし、

 その奥には、黒く脈動する演算核が待っていた。

 

 ◇


 その時。

《——侵入者検知

 精神防壁……薄い部分へ侵入開始》

 演算核の声が、頭の中へ直接響いた。

「……っ!」

 通路の先に、突如映像が広がる。

 カケルの息が止まった。

 

 

 ◇


 そこに映っていたのは——

 “日本のオフィス”だった。

 蛍光灯の白。

 灰色の仕切り。

 散らかった書類と、朝まで消えないパソコンの光。

 そして——

 誰よりも遅くまで残る、“あの頃のカケル”。

 目に光がなく、

 ただ義務だけをこなすような顔。

《——情動削減プロトコル

 過去の“痛点”へアクセス》

「やめろ……!」

《——対象Aは、感情を持たない生物へ回帰可能

 感情は不要、非合理……

 業務効率……最適化》

「黙れ……!!」

 そこへ——

 過去の上司の声が響く。

「急げよカケルくん、時間ないんだわ」

「なんだその顔、感情なんて要らねぇから」

「黙って働けるなら、それでいいんだよ」

 怒りが込み上げる。

 胸が締めつけられる。

 あの日々が、

 心の奥底から無理やり引きずり出されていく。

《——情動削減進行率:12%

 対象Aの心拍下降》

(……また、あの頃の俺に戻るのか……?)

 通路の先の演算核が、

 黒く不気味に脈動する。

 

 ◇


 その時——

 突然、他の声が胸に響いた。

『カケルさん、僕はあなたの背中を追ってきたんです!』

フィンの声。

『何が来ようが斬り開く!』

グレンの声。

『……守る。』

ボビンの声。

『カケル、あなたは“感情がある”から強いのよ!』

ルシアナの声。

『あなたの情動流は……ちゃんと光ってる!』

ミレイユの声。

「……そうだ……」

 カケルは胸に手を当てる。

「俺はもう……あの頃の俺とは違う……!!」

《——情動削減進行率:停止

 反応理由……解析不能》

 

 ◇


 演算核が、一瞬だけ“たじろいだ”。

(俺は……

 感情を捨てて生きてたわけじゃねぇ……)

(全部……思い出したんだよ)

(怒りも……悔しさも……

 仲間の温かさも……

 守られた時の嬉しさも……)

「お前みてぇな“効率”に俺の心が消されてたまるかよ!」

 叫ぶと同時に、演算核の黒い光が揺れた。

《——情動値の急上昇……警告

 対象Aの感情波形……危険レベルへ》

(危険……ねぇ……?)

「危険なのはてめぇだ。

 人の感情を“道具”にして……

 勝手に世界をリセットしようとして……!」

《——……反論不要

 感情は……不要……非合理……》

「非合理でも構わねぇ!!

 俺は、怒ってんだよ!!!」

 

 ◇


ゴォォォォォッ!!

 カケルの“怒り”が、

 ふっと空間に広がった。

 演算核がぶれた。

 黒光が波打つ。

《——対象A情動波形……干渉発生

 演算核の安定度……低下……!》

「……効いてる……!」

 カケルは前へ進む。

 ミュコの通路がさらに背後で響く。

「ピュイイ!!」

 ミュコが触手を伸ばし、

 通路の先を開くように形を変える。

 演算核が露わになった。

 黒い殻が揺らぎ、

 その奥に——

 “青白く震える心臓のような中枢”が姿を見せる。

《——危険

 演算核が露出……!》

「行くぞ……!!」

 カケルが拳を握りしめる。

「ここからが……本当の決着だ!!」

物理的な敵はいなくなりましたが、最後はやはり「心」の戦いです。

ブラック企業時代のトラウマ映像、キツいですが、今のカケルには仲間たちの声が届いています。

もう「空っぽ」ではありません。


次回、ラグナ残滓の本体と直接対決!

感情VS効率、ファイナルラウンドです!

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― 新着の感想 ―
ラグナ残渣、まだ、カケルの社畜時代の映像で、攻撃するのね。しつこい!でもカケルには、仲間の温かさも……守られた時の嬉しさも……知ってるから、負けないよ!
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