第94話 ミュコ、最大覚醒(マキシマムフォーム)
演算核が黒光を放ち、
基幹層全体が崩壊へ向けて大きく軋み始めた。
《——初期化プロトコル:加速
削減出力:最大値へ》
「やばいわ!!」
ルシアナの叫びが響く。
「このままだと、カケルが……!」
ミレイユも青ざめた表情で叫ぶ。
「演算核を“完全露出”させた今なら……上書きできる!
でも、敵が多すぎる!!」
ガーディアン達は、
黒い鎧のような身体でカケルへ向けて殺到し始める。
「カケルさん!! 危ない!!」
「俺が止める! そこを通すもんか!!」
「……ぬるい。」
グレン、フィン、ボビンがそれぞれ迎撃に出たが——
数が多すぎる。
(このままじゃ……
誰かが抜けて……俺のところに来る……!)
◇
その時だった。
「ピュ…………!!!」
ミュコが震えた。
「ミュコ……?」
「どうした、相棒……!?」
次の瞬間——
ミュコが“破裂寸前”まで膨れ上がる。
その体積は、仲間たちの数倍以上。
ぴょんぴょん跳ねていた姿は想像できないほど巨大な“ビッグスライム”へ。
「ピュオオオオオオオオ!!!!」
叫ぶような声が空間を震わせた。
◇
《——警告
対象E
サイズ異常拡大……
解析不能……!》
ラグナ残滓の声が焦りを帯びる。
「ミュコ……お前、まさか……」
カケルが呟く。
「みんなを守るつもりなの……?」
ミュコは大きく頷いた。
「ピュイッ!!」
◇
そして——
ミュコの身体が 壁のように伸び始めた。
伸びる。
伸びる。
伸び続ける。
まるで巨大なゼリーが空間そのものに沿って形を変え、
カケルの前へ一本の“長い通路”を形成していく。
ズズズズズズッ……!!
通路の両側はミュコの分厚いスライム壁。
内部は安全地帯。
外部のガーディアン達は——
ドン!!!!!
壁に跳ね返された。
《——侵入不可
壁状スライム……弾性強度:極大
突破……不可能》
「すげぇ……」
グレンが絶句する。
「これが……ミュコの……真の姿……!」
ミレイユが震え声で呟く。
ボビンが壁を叩く。
「……硬い。」
フィンが目を丸くする。
「どんな攻撃でも……カケルさんには届かない……!」
◇
ガーディアンたちは焦り、
一斉にミュコの壁を攻撃し始めるが……
ドォン!! ドォン!!
パシュッ……!!
すべて吸収され、跳ね返されるだけ。
《——破壊不可
突破不可
内部侵入……失敗》
ラグナ残滓の演算核が明らかな“焦り”を見せる。
《——対象E……妨害因子
排除優先度、第二位へ更新》
「第二位で十分だよォ!!」
グレンが笑い、
ガーディアン達を雷と剣でまとめて葬っていく。
「通路は我らが守る!!」
フィンも高速で影の群れを切り裂く。
「……ぬるい。」
ボビンはただ立ち塞がり、
壁に近づいた者を倍返しで吹き飛ばした。
仲間全員が——
“カケルを先へ進ませるための盾”となっていた。
◇
「カケル!」
ルシアナが通路の入口へ駆け寄る。
「演算核まで……一直線!!
もう敵は届かない!!」
「情動波形リンク……最終調整完了!!」
ミレイユの手が震えながらも図式を完成させる。
「あなたの“感情”を……
そのまま核に叩き込めばいい!」
「行って……カケル!!」
◇
カケルは深く息を吸った。
(怒り……
悲しみ……
悔しさ……
胸が熱くなるほどの、誰かを守りたい気持ち……)
(やっと……感じられるようになったんだ……)
「ミュコ……
通してくれてありがとう。」
ミュコは誇らしげに揺れた。
「ピュイッ!!!」
「みんな……ありがとう。」
カケルは通路の奥へ向き直る。
そこにあるのは——
黒く脈動する演算核。
「……終わらせる。」
カケルはゆっくりと歩き出した。
仲間たちが後ろで叫ぶ。
「行けぇぇぇ!!!」
「カケルーーッ!!」
「気をつけて……!」
「ピュイイ!!」
◇
ラグナ残滓の声が震える。
《——対象A
警戒……危険度:限界
削減出力……最大値へ更新
——排除します》
演算核が光を放ち、
黒い波動が通路の先で渦巻く。
(来いよ……
お前がどんな正義を語ろうが……
俺は誰の感情も消させねぇ!!)
ミュコ、まさかの壁化(笑)。
スライムの特性を最大限に生かした「絶対防御の通路」が完成しました。
これでカケルは敵を無視して直進できます。
ありがとうミュコ、後で美味しいものを食べてね。
次回、通路の先で待つ最後の試練。
カケルの過去との決別です。




