第91話 ゼロコード起動
演算核が光った瞬間——
空間全体が悲鳴をあげた。
ギギギギギギ……ッ!!!
灰色の地平線が裂け、
上下左右の概念そのものが崩れていく。
《——世界初期化プロトコル
“ゼロコード”起動開始》
ラグナ残滓の仮面が静かに割れ、
中心の演算核が脈動する。
「ゼロコード……!
本当に発動する気なのね!」
ルシアナが叫んだ。
「世界を“ゼロ”に戻す……
本来は150億ルーメ欠損時の安全装置だったはずなのに……!」
「今は暴走してる……!」
ミレイユが唇を噛みしめる。
「制御なしで世界を初期化なんて……
神界も地上も全部……消える!!」
◇
ラグナ残滓の声が重く沈み込む。
《——不要情動、全面削減開始
抵抗は非合理》
黒い奔流が仲間たちへ向かって襲いかかった。
数——
速度——
質——
全てが今までとは桁違い。
◇
「ボビン!!」
「……“守る”。」
次の瞬間、
ボビンの盾が前面に構えられた。
ドゴアアアアァァン!!!
黒の奔流が直撃する。
空間が歪むほどの衝撃——
だが、ボビンは一歩も動かなかった。
盾が光り、淡く唸る。
「——倍返し。」
黒の奔流が逆方向へ跳ね返り、
ラグナ残滓本体へ襲いかかった。
《——反射値……異常……
本体へ損傷発生》
「ぬるい。」
ボビンの短い一言で、
仲間の士気が一気に上がる。
◇
「グレン!!」
「任せろッ!!」
雷光が走る。
聖剣が空気を裂き、
二重の雷撃が黒の奔流をさらに切り裂く。
バリバリバリバリィィィッ!!
「影なんざ、雷で焼き切るだけだろうがよォ!!」
《——雷属性……危険度MAX
影構造……破損……!》
ラグナ残滓が一瞬後退した。
◇
「フィン!!」
カケルの声に、
フィンが瞬時に空間へ散った。
“残像すら残らない速度”。
跳躍、滑走、反転——
そのすべてが影のように静かで、
次の瞬間には広範囲の黒糸が切断されていた。
《——対象D……観測不能
削減処理……追いつかず……!!》
「カケル!!
全員で道を作るから……
あなたが“とどめを刺して”!!」
◇
後方では、ルシアナとミレイユが図式を描き続けていた。
「ミレイユ!
演算核の波長を出せる!?」
「できるよ!
これが“核心部の情動座標”!」
光の図式がカケルの前へ展開される。
「カケル!!
あなたの“情動波形”を重ねて!!
それが核への干渉キーになる!!」
「俺の……感情を……!」
胸の奥が熱くなる。
(俺は……
仲間がいて……
守りたいものがあって……
帰りたい場所がある……)
(もう……
何も感じない男じゃない……!)
◇
耳の奥で、
ラグナ残滓の声が囁く。
《——対象A:最優先排除対象に更新》
《——情動波形解析……
危険度:限界値》
《——削減開始》
演算核が眩い黒光を放つ。
「カケル!!
狙われてる!!」
「分かってるッ!!」
黒い奔流がカケルへ一直線に走る。
その瞬間——
仲間たちが声を重ねた。
「カケル、前へ!」
「守る!!」
「光は通す!!」
「道は切り開きます!!」
「ピュイ!!」
黒の奔流を、
ぼた雪のように次々と仲間が弾き返し、
切り裂き、撹乱し、遮断する。
前方に——
一本の“光の道”ができた。
◇
「カケル!!
あなたの情動で……
演算核を上書きして!!」
ルシアナの叫びが空間を震わせた。
「お前に……
俺の“感情”は消せねぇ!!」
カケルは拳を握り、光の道を駆け出した。
演算核が黒く輝く。
《——削減対象A:追尾開始》
ラグナ残滓の本体が動いた。
敵の出力が最大に。
でも、今のカケルたちには「道を作る」仲間がいます。
全員でカケルを押し出す構図、王道ですがやっぱり熱いです。
次回、ボビンの盾とグレンの剣が奇跡のコンビネーション!
「ぬるい」と言い放つボビンが見られます。
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