第90話 演算核の露出(コア・ブレイク)
《——再計算開始
削減処理、次段階へ移行……》
ラグナ残滓の仮面に走った亀裂がさらに広がり、
空間全体が唸りをあげ始めた。
ゴォォォォォ……ッ
基幹層の灰色の世界が歪む。
「みんな!! 来るわよ!!」
ルシアナの声に、全員の身体が緊張で強張る。
◇
まず襲いかかってきたのは——
巨大な黒糸の奔流だった。
「うわっ、量が……!」
「数が増えている……!?
処理能力を“力任せ”に上げてきてるんだ!」
ミレイユが叫ぶ。
《——情動削減率:強制上昇
制御効率:度外視》
「要するに……“暴れてる”ってことね」
ルシアナの表情が険しくなる。
「計算が破綻し始めてるのよ!」
◇
「——なら叩き込むだけだろ!!」
グレンが吠えた。
聖剣が雷鳴を轟かせながら振り抜かれる。
ガガガガガアアアッ!!
二重の雷の軌跡が奔流をまとめて焼き切り、
黒糸の海を“真っ二つ”に割った。
《——雷属性被害……増大……!
影構造……崩壊……!!》
「ほらよォ!!
もっと来い!!」
挑発が空間に響く。
◇
「援護します!!」
風のような影が走った。
フィンだ。
一走りで十以上の黒糸の結び目を切断し、
次の瞬間には別の位置へ跳んでいる。
(……速すぎる……!
さっきよりも更に……!)
《——対象Dの速度……観測不能
処理落ち……発生……?》
ラグナ残滓の処理速度が追いつかない。
「カケルさん!!
今のうちに“気持ち”を取り戻して!!
その波形が必要なんです!!」
◇
カケルは胸に手を当てた。
(気持ち……
怒りも……悔しさも……
全部……削られたような気がして……)
しかし今——
周りには、
仲間たちの声と動きが溢れている。
守る者。
支える者。
背中を預ける者。
理解してくれる者。
(……そうだ。
俺はもう……空っぽじゃねぇ……)
「……行くぞ……!」
◇
その時、
凄まじい黒糸がフィンに襲いかかった。
「危ない!!」
だが、その手前で巨大な盾が立ちはだかった。
ドゴォォォォォッ!!!
「…………“守る”。」
ボビンが黒糸の突撃を受け止める。
盾が淡い光を放つ。
「——倍返し。」
黒糸は跳ね返され、
倍以上の圧力で残滓本体へ叩きつけられた。
《——反射値……異常……!
本体に損傷……!?》
ラグナ残滓が大きく揺らぐ。
「ぬるい。」
ボビンの短い言葉が、静かに空間へ沈んだ。
◇
そしてミュコ。
「ピュイッ!!」
ぴょん。
「ピュッ!」
ぴょん。
跳ねるだけで、光の残像が残り——
ラグナ残滓の視界に“ノイズ”を生む。
《——小型生物の跳躍軌跡……
妨害……甚大……!》
これは、残滓の“感知網”への純粋な破壊だった。
(お前……強すぎるだろ……!?)
◇
一方で後方。
ミレイユとルシアナは同時に叫んだ。
「見えた!!」
「演算核の位置、特定できたわ!!」
空間に巨大な図式が展開する。
黒糸の根源、
ラグナ残滓の“中央領域”。
そこで、
青白い光を放つ球体——それが演算核だった。
「ここを攻撃すれば……止められる!!」
「でも同時に……ラグナ残滓の“反撃”も最大になる……!」
◇
仮面が割れる音がした。
パキ……ッ
《——演算核を露出
削減処理……最終プロトコルへ移行》
「……やばい!」
カケルが叫ぶ。
「来るぞ!!
次は“本体”が直接動く!!」
ラグナ残滓の影がうねり、
中心の演算核が光を帯びた。
《——世界初期化プロトコル
“ゼロコード”起動》
神界全体が、大きく軋む。
解析班(ミレイユ&ルシアナ)と戦闘班の連携が見事に決まりました。
敵が焦り始めているのがわかりますね。
カケルの感情を取り戻すことが、勝利への鍵になります。
次回、世界初期化プロトコル「ゼロコード」が起動。
神界崩壊の危機に、あの二人が合体技を放ちます!




