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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第89話 仲間の軌跡(トレース)

 《——完全形態移行率:97%

 侵入者の情動上昇……理由を解析中……》

 ラグナ残滓の仮面に、初めて“ノイズ”が走った。

 カケルは仲間たちの姿を見て、

 胸に熱が湧き上がるのを感じる。

 

 ◇


「カケル!」

 ミレイユが駆け寄り、腕を掴む。

「あなたの情動流……まだ生きてる!

 削られかけてても、核は残ってる!」

 ルシアナも隣に立つ。

「ミレイユさんの解析は正しいわ。

 あなたはまだ戦える……!

 ここから巻き返すのよ!」

(そうか……

 俺はまだ……折れてねぇ……)

 

 ◇


《——誤差検出

 “仲間”による感情活性……非合理……》

 ラグナ残滓の声が揺れた。

《——解析不能値……上昇……》

 その一瞬の揺らぎを——

 グレンが逃すはずがなかった。

 

 ◇


「じゃあ、“合理”的にぶった斬ってやるよ!!」

 雷撃が走った。

 聖剣オルトロス・ブレイカーが唸りを上げる。

 斬撃が放たれた瞬間、

 二重の雷の軌跡(双頭オルトロス) が影の海を切り裂いた。

バリバリバリィィィン!!

《——雷属性……高危険度

 影構造……崩壊……!?》

「どうしたァ!!

 雷を浴びるのは初めてか!!?」

 グレンの聖剣は止まらない。

 二重の雷撃が連続で走り、黒い糸の大半を消し飛ばす。

 

 ◇


「グレンさん、右側空いたんで行きます!!」

 フィンの声が響く。

 次の瞬間——

 影の間を “消える速度” で疾走する影があった。

 フィンだ。

(……速い……!?)

 跳ねるように、滑るように——

 まるで時間を短縮して動いているかのような速度。

 一瞬ごとに位置が変わる。

《——対象Dの移動……観測不能

 軌道追尾……失敗》

 フィンが残滓の根元を十数カ所、

 一呼吸の間に切り裂く。

シャッ、シャッ、シャッ!

「カケルさん……!

 あなたの背中を追いかけてきた僕は、

 もう昔の僕じゃないです!!」

 

 ◇


 フィンに向かう反撃の黒糸——

 その前に巨大な影が立ち塞がる。

 ボボンッ!!

「……“守る”。」

 ボビンのリフレクト・オリオン

 黒糸の攻撃を真正面から受け止めた。

 その瞬間、盾が淡く光る。

「——倍返し。」

 低い声とともに、

 黒糸へ返った攻撃は “倍の威力”。

ズガアアアアァァン!!

 黒糸が粉々に砕け、

 衝撃波がラグナ残滓を揺らした。

《——反射攻撃……異常値……!?》

 ボビンは静かに前へ歩いた。

「ぬるい。」

 守っているだけなのに、

 周囲の敵が勝手に倒れていく“無双”——

 それがボビンという盾使いだった。

 

 ◇


 そしてミュコ。

「ピュイッ!」

 跳ねた。

 ぴょん、ぴょん、ぴょん。

 ただそれだけなのに——

 着地のたびに光の残像が走り、

 ラグナ残滓の視界が乱される。

《——小型生物……軌道乱反射……

 解析不能……!!》

(……ミュコ……お前……

 意外と……すげぇじゃねぇか……!)

 

 ◇


 一方後方では、

 ミレイユとルシアナが高速で魔術式と観測式を重ねていた。

「ルシアナ!

 基幹層の“影構造”……解析完了!」

「ありがとうミレイユ!

 ラグナ残滓の“演算核”……

 3層構造のど真ん中よ!」

 二人の知力が融合し、

 空間に巨大な図式が描かれていく。

「ここを狙えば、完全形態を止められる!」

「そのためにはカケルの“情動波形”が必要!

 カケルの感情が回復すれば、演算核へ干渉できる!」

「じゃあやるしかねぇな……!」

 

 ◇


 ラグナ残滓が叫びにも似たノイズを放つ。

《——情動集合体……非合理……

 解析不能……

 削減効率……著しく低下……》

《——完全形態移行……一時停止……!?》

 影が後退した。

「ほら見ろよ!」

 グレンがニヤリと笑う。

「お前の“合理性”が揺らいでんぞ、ラグナ野郎!!」

 

 ◇


 カケルは胸に手を当てる。

(……こんなにも……

 俺のために……戦ってくれる奴がいる……)

(これが……

 “仲間”ってやつなんだな……)

 胸が熱くなる。

「……行くぞ、みんな」

 仲間たちの声が重なる。

「「おう!!!」」

 

 ◇


《——削減処理……再計算

 次段階へ移行》

 ラグナ残滓の仮面に亀裂が走り、

 内部の“演算核”がうねり始めた。

「次は……本気で来る!!」

 カケルが叫ぶ。

「絶対に……負けねぇ!!」

個性が強すぎる前借亭メンバーの戦闘シーン、書いていて楽しいです。

ボビンの「倍返し」、グレンの「雷」、フィンの「神速」、ミュコの「跳躍」。

すべてが「非合理」なノイズとなってラグナ残滓を狂わせます。


次回、敵も本気を出してきます。

演算核を巡る攻防、激化!

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― 新着の感想 ―
カケルの胸に温かいものが戻る。だけでなく、仲間たちの姿を見て、胸に熱が湧き上がるのを感じる。そうだよ、そうだよ。カケルはまだ……折れてないんだよ! グレンも、フィンもボビンも、カッコいいじゃないか!ミ…
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