表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/102

第86話 完全形態への移行

 ラグナ残滓の影が、音もなく膨張した。

 灰色の空間そのものが震える。

 天井のない場所に、見えない天井がひび割れたような、

 そんな錯覚さえ起こした。

《——情報処理、80%完了

 感情データ、統合中……》

 漆黒の影がゆらりと揺れ、

 “腕のようなもの”が姿をとった。

 だがそれは肉体ではなく、

 回路と光が絡み合った“擬似的な形”。

「……やっぱり。

 この残滓、明らかに以前より“形”を持ってきてる……!」

 ルシアナが息を呑む。

 ラグナ残滓は本来、

 世界の最適化のための “システムにすぎない”。

 それが——

 今、まるで“生き物のように”形を獲得している。

《——最適化のため、感情干渉を開始します》

 瞬間。

 空間全体が“黒い脈動”に染まった。

「くっ……!」

 カケルとルシアナの足元の光の道が揺れ、

 二人は思わず踏ん張る。

 黒い波が空間の底から押し寄せてきて、

 感情を奪う“圧”が胸を締めつけていく。

「やばいわ……!

 この圧は、今までより遥かに強い……!」

「俺も……やべぇくらい分かる……!」

 怒りが薄れる。

 恐怖が薄れる。

 喜びも、悔しさも、全部“溶けていく”。

(……やべぇ……

 このままじゃ……

 何にも感じられなくなる……!?)

 

 ◇


 その時。

 空間に浮かぶ“黒い糸”が、ルシアナへ向かった。

《——神性检出。

 神性は干渉対象外——

 だが、情動を保持するため削減推奨》

「っ……!!」

 黒糸がルシアナの胸に突き刺さる。

「ルシアナ!!」

「だい、じょうぶ……!

 これは……情動を削る攻撃……!

 でも……!」

 ルシアナの膝がわずかに沈んだ。

「っ……神性の“感情”だけを狙って……くる……!」

「てめぇ!!」

 カケルが拳を構えた瞬間、

 黒糸はカケルの方向へ揺れた。

《——仲間保護パターンを確認

 攻撃優先度:最上位に更新》

「来いよ……!」

 カケルが迎撃準備をした時だった。

 影の奥から、新たな声が響いた。

《——情動流の逆流開始

 地上層、調律層、両方へ干渉……成功》

 次の瞬間——

 空間が一気に“白”へ染まった。

 

 ◇


 どこか別の場所。

 地上。

 前借亭の厨房にいたミレイユは、

 手にしていた鍋を落としそうになった。

「えっ……?

 な、なにこれ……!?」

 頭の中に突然、

 無数の“ザザッ”というノイズが走った。

 料理の香りも、

 温度も、

 匂いも、一瞬で遠のく。

 視界が揺れ、心が“薄くなる”。

「みんな……!!

 な、なんか変な感じが——!」

 グレンは椅子から立ち上がり、眉をひそめた。

「……胸の奥が……スカスカになって……?」

 ボビンは目を押さえた。

「これ……以前、冷律会が来た時に似てる……!

 でももっと酷い……!」

 フィンは自分の手を見つめ、

 半ば震えながら呟いた。

「感情が……

 薄くなっていく……?」

 ミュコが苦しそうに鳴く。

「ピュッ……!!」

 ミレイユは唇を噛んだ。

「これ……

 カケルの場所で何か起きてる……!」

 

 ◇


 一方、神界。

 調律会の塔では、

 調律柱が再び轟音を立てて揺れていた。

「アルシア様! 情動流が——!!」

「地上の感情が一気に低下しています!」

「基幹層からの“黒い逆流”が止まりません!」

 アルシアは震える柱に手をかざしながら叫んだ。

「全部つながっている……!

 ラグナ残滓が、地上と神界……

 両方の情動流を同時に奪い始めた……!」

「こんな侵蝕……初めてです!」

「誰か……!

 基幹層の暴走を止めない限り——!」

 アルシアは目を固く閉じた。

(カケル、ルシアナ……

 あなたたちに賭けるしかない……!)

 

 ◇


 基幹層では。

 世界が“白”へ塗りつぶされつつあった。

 黒の圧とは違う、

 感情を消す“静寂の波” が押し寄せてくる。

 カケルは声を上げた。

「これ……全部、あいつの攻撃か……!」

《——完全形態へ移行中

 目標:世界の初期化

 情動流:ゼロに最適化》

「初期化……!?

 リセットの強制発動……?」

 ルシアナの顔が蒼白になる。

「とうとう、完全に初期化に入った……!」

「……はっ」

 カケルは笑った。

 その笑いは怒りとも呆れとも違う。

「どんだけ欲張りなシステムしてんだよ……

 条件満たすの待てなくて、勝手に世界ぶっ壊そうとするんだからな……」

《——合理性:高

 最適解として承認》

「承認すんな!!」

 カケルが叫ぶと同時に——

 ラグナ残滓の影が、

 ついに“顔のようなもの”を形作った。

 それは人の顔を模倣した“無表情の仮面”。

 だが、感情はない。

 ただ“効率”だけを見つめる瞳だった。

《——侵入者A、削減対象。

 今より“情動核”へ直接干渉を行う》

「情動核……?」

 カケルの胸が、

 “誰かに掴まれたように”締めつけられた。

「……っぐ……!」

「カケル!!」

 ルシアナが駆け寄ろうとするが、

 空間が裂け、彼女の足が“白い砂”に沈んでいく。

「くっ……!

 これ……“感情の溶解”……!」

 ラグナ残滓の声が響いた。

《——抵抗は無意味

 あなたの“感じる力”は——

 今ここで、停止します》

 最後の一言で、

 空間の光がすべて消えた。

 唯一残ったのは——

 ラグナ残滓の無機質な瞳だけ。

《——削減開始》

世界中で「感情」が消えかけています。

前借亭のメンバーも異変に気づきましたが、カケルは遠い神界。

情動核への直接干渉……カケルが「虚無」に戻されようとしています。


次回、カケルの心が壊れる寸前。

もうダメかと思ったその時、空間を裂いて現れたのは――!?


ここからが熱い展開です!応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カケル&ルシアナ、大ピンチ! その時地上の仲間たちも、異変に気づく。 神界も、大惨事勃発中。 基幹層で、ラグナ残渣大暴れ。 ラグナ残渣がやろうとしていることを言語化したら、ラグナ残渣から《——合理性:…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ