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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第83話 侵入者検知

 基幹層へ向かう光の道は、先へ進むほど細く、鋭くなっていた。

 足元はかろうじて歩ける幅を保っているが、左右は完全な虚空。

 光と闇の境界線を歩いているような感覚だった。

「……どんどん“音”が強くなってきてるな」

「ええ。

 情動流が吸い込まれる“方向”がはっきりしてきた」

 ルシアナの言う通りだった。

 耳に届く低いざわめきは、先ほどより圧倒的に大きい。

 まるで巨大な渦の中へ引き込まれているようだった。

 ——ボウ……

 ——ボウ……ウ……

 感情が“芽吹く前”に吸い上げられる音。

 それが無数に重なり合って響いている。

(くそ……胸の奥に何か引っ張られる感覚がする)

(これが“ゼロ化の力”ってやつか……?)

 

 ◇


 突然、足元の光が波紋のように揺れた。

「カケル、止まって!」

「お、おう!」

 二人が同時に足を止めると、

 光の道の前方に“薄い人影”が複数、ぼんやりと浮かび上がった。

「……こりゃまた不気味だな」

 人影は形だけを持っているが、

 目鼻も口もなく、ただ“縁だけ”が光っている。

「これは……“冷律会の端末”ね」

「端末?」

「本体じゃなくて……

 感情で動く神じゃない。

 “ラグナ残滓の命令を中継するだけのシェル(殻)”よ」

「おいおい……

 神様が“中継機”扱いってかよ」

 ルシアナは強く頷いた。

「意識はないはず。

 ただの命令実行機。

 でも——」

 その言葉の途中で。

《——侵入者、検知》

 声が響いた。

 いや、“声”と言うより、

 空間に直接文字が浮かび、それが音に変換されたような響きだった。

《——感情パターン、解析中……》

《——恐怖:微量。怒り:高濃度。》

《——排除対象に登録》

「……感情読まれたぞ?」

「ええ。

 ラグナ残滓は“感情の利用”が根幹のシステムだから」

 ルシアナは短く息を吸い、カケルの腕を掴んだ。

「気をつけて。

 “あなたの感情”がそのまま攻撃に使われる!」

 その瞬間、

 人影のひとつがカケルの怒りの波長に反応し——

 バンッ!

 黒い衝撃波を放った。

「おっと!?」

 カケルは咄嗟に身をそらす。

 衝撃波は通った後の空間を波打たせるが、

 本当に“何もない”場所まで歪ませていた。

「お前これ……空間そのものを殴ってねぇか!?」

「“怒りの形”を模倣して、最適化した攻撃……

 ラグナ残滓特有の戦い方よ!」

 

 ◇


《——第二解析。

 対象、強度“9999”。警戒レベル:最大に設定》

「おい、勝手に俺のレベル踏み込んでんじゃねぇ!」

《——排除開始》

 人影が五つ、同時に動いた。

 光の縁が激しく震え、棒状の光が腕のように伸びてくる。

「カケル、下がって!」

「下がるかよ!」

 カケルは拳を握りしめ、

 目の前の人影に向かって一直線に踏み込んだ。

「“模倣した怒り”なんざ、俺の怒りの足元にも届かねぇんだよ!」

 ガッ!

 拳が振るわれた瞬間。

 光の人影は、粉々の粒子になって消えた。

 だが——その直後。

《——新パターン捕捉。

 “保護衝動”上昇。》

「……保護……?」

 カケルが反応する前に、

 別の影が黒い突きを放ってきた。

 狙いは——ルシアナ。

「っ……!」

「ルシアナ!!」

 カケルは反射的に彼女の前へ飛び込み、肩で攻撃を受けた。

 空間が、ばりん、と割れた。

 痛みではなく、世界の“構造”が軋む音が背中に突き刺さる。

「く……!」

「カケル、大丈夫!?」

「大丈夫じゃねぇけど……!」

 顔をしかめながらも、

 カケルは両腕を広げてルシアナを背中で守った。

《——防御行動、確認。

 “仲間保護”パターン分析……》

 影の声が冷たく震えた。

《——攻撃対象:最優先に切り替え》

「……っざけんな」

 カケルの声が低くなる。

「俺の“守りたい”って気持ちまで、

 利用しようってのかよ……てめぇ」

 光の道に、カケルの怒りが伝わるように震えが走った。

「そんなふざけた真似、

 ——絶対にさせねぇよ」

 

 ◇


「カケル、来るわ! 右よ!」

「あいよっ!」

 カケルはルシアナの声の直後に飛び込み、

 迫る光の腕を回し蹴りで弾いた。

「左後ろ!」

「おう!!」

 拳が唸り、影が弾ける。

 闇の空間に、崩れた光の粒子が降る。

 二人の動きは、息が合っていた。

 まるでずっと前から戦ってきた相棒のように。

 

 ◇


 影がすべて消え去ると、

 道の先に巨大な“扉”の輪郭が浮かび上がった。

 円形の光と、中心に刻まれた膨大な文字列。

 扉というより、

 “世界の心臓部へ続くゲート”のようだった。

「……これが……基幹層への入口……!」

 ルシアナが震える声で言う。

「奥にいるのか?」

「ええ。

 ラグナの残した“影”——

 冷律会を操る正体が……」

 カケルは静かに拳を握った。

「行くぞ」

「ええ。

 覚悟はできてるわ」

 扉の前に立った瞬間——

《——侵入を検知。

 情動の削減を開始します》

 空間全体から声が響いた。

 だが、カケルは迷わず言い返した。

「悪いな。

 削減は中止だ。

 ——上書きに行く」

 扉が、ゆっくりと、

 底の方から開き始めた。

感情を模倣して攻撃してくる影たち。

怒れば怒りの攻撃が、守ろうとすれば守るための思考が読まれる。

戦いにくい相手ですが、二人のコンビネーションで突破しました!


次回、ついに基幹層内部へ。

そこでは精神そのものを削る攻撃が待っています。

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― 新着の感想 ―
基幹層へ続く光の道を進む2人。それを阻む“冷律会の端末”。2人のコンビネーションがそれらを見事撃破する。 今回は、2人のコンビネーションの良さがよく書かれていた。他のメンバーより付き合い時間は、長いか…
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