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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第81話 基幹層への降下

 光の階段は、まるで空間の底に吸い込まれていくように続いていた。

 カケルは一段、一段と足を運びながら、背後の光が遠ざかっていくのを感じていた。

 残してきた会議場も、調律会の神々も、もう見えない。

「……静かだな」

 思わず口にすると、隣を歩くルシアナが小さく頷いた。

「ええ。

 本来なら“情動流”のざわめきが聞こえるはずなの。

 この階層に降りるなら、なおさら」

「ざわめき?」

「人間の街みたいにね。

 喜び、怒り、悲しみ、安堵……

 本来は全部が糸みたいに交わって、微かな声として響くの」

 ルシアナは耳元に手を添え、かすかに眉を寄せた。

「でも……

 今は、それがひとつも聞こえない」

「……全部、冷律会の削減のせいってことか」

「まだ“入口”にすぎないのに……これは異常よ」

 ルシアナが言い終える前に、

 階段の下からひやりとした風が吹き上がった。

 


 やがて、階段の先が広い踊り場のようになっているのが見えてきた。

 そこは——

 まるで巨大な図書館のホールのようだった。

 だが、本があるわけではない。

 無数の“光の板”が空中に浮かび、ゆっくり回転している。

「これ……全部、神界律の“断片”ね」

ルールのピースかよ」

「ええ。

 本来なら調律会の管理下にあって、静かに循環しているはずなのに……」

 ルシアナが手のひらを差し出すと、

 光の板のひとつがそっと近づき、そこに文字列が浮かんだ。

 

 《情動流 条件:安定》

 《削減プロセス:未承認》

 《感情ゼロ化:禁則》

「……正常なルールよ。

 ここまでは、まだ“壊れてない”」

「じゃあこの先か」

「そう思う」

 ルシアナは光の板をそっと手で押し戻し、カケルの方を向いた。

「この階層は“律の中庭”と呼ばれている場所なの。

 基幹層に近いほど、純粋なルールが現れる。

 ここが静かすぎるってことは……」

「ルールそのものが、上書きされてる?」

「……かもしれない」

 

 ◇


 その時だった。

 空間が、ふいに“ざらり”と音を立てた。

 カケルもルシアナも条件反射で身構える。

 光の板のうちいくつかが、不自然に揺れながら一箇所へ集まり、

 ぼんやりとした“人影のような形”になった。

「おい……これって……」

「情動の残渣ざんさが……勝手に寄り合ってる!?」

 ルシアナの声に驚愕が混じる。

 本来、残渣は人間の情動の“余波”であり、意思など持たない。

 それが勝手に集まって形を成すなど、あってはならない。

「あれ……誰かに“呼ばれてる”みたいだな」

「呼ばれて……?」

「集まって、一方向に流れてる」

 光の残渣たちは、踊り場の奥——

 さらに暗い階層へと、ずるずる吸い込まれていくように消えていった。

 その光景に、ルシアナが震えた声で呟く。

「……そんな……

 残渣は意思を持たないはず。

 呼び寄せられてるとしたら、それは——」

「“ラグナ残滓”か?」

 カケルが言うと、ルシアナは強く頷いた。

「可能性は高いわ。

 冷律会が“基幹層の律を参照”とか言っていた……

 あれは、たぶん——」

「本来の基幹層じゃなくて」

「ラグナが死ぬ前に残した、“影の層”よ」

 空気がひんやりと沈み込んだ。

 踊り場の奥は、ただ黒い闇に包まれ、何も見えない。

 しかし、その奥から確かに微かな低い音が響いていた。

 ——ボ、ボウ……ウ……

「……なんだ、この音」

「情動が……“逆流”してる音よ」

「情動が逆流……?」

「感情が生まれる前に、根こそぎ吸われている……」

 ルシアナの声は凍りついていた。

「この先に、

 異常の“中心”があるわ」

 

 ◇


「行くのか?」

「行くしかない」

 ルシアナが小さく息を吸う。

「調律会の神々は、ここから先に踏み込むと“律に縛られる”の。

 干渉しようとすれば、律が反応して弾かれる」

「つまり、神じゃどうにもならねぇ場所ってことだな」

「ええ。

 だから、あなたが必要なの」

 ルシアナがカケルを見つめた。

「あなたは……

 “神界の律から外れた存在”」

「……なるほどな。

 邪魔されねぇってことか」

 カケルはゆっくりと拳を握った。

(よし……

 世界がどうとか神界がどうとか、難しい話は分かんねぇけど)

(“感情を奪おうとするヤツ”がいるなら、殴ればいい)

「行くぞ、ルシアナ」

「ええ」

 二人は暗い階層へと向かった。

 奥へ進むほど、音は低く、重く、深くなっていく。

 ——ボウ……ウ……

 ——ボウ……ウ……

 情動が吸い込まれる音。

 世界の心臓が、止まりかけている音。

 

 ◇


 そして——

 二人が闇の入口を越えた瞬間。

 空間全体に、ひび割れるような低い声が響いた。

《——情動、不要。

 ゼロへ収束せよ》

「っ……!」

「来た……!」

 ルシアナが目を見開いた。

「これ……“誰か”の声じゃない。

 “律の声”よ!」

《——削減。削減。削減……》

 世界を凍らせるような響き。

 カケルは拳を握り、闇の中心へ向けて言い放つ。

「……上等だ。

 出てこいよ、ラグナの残りカス」

 闇が、揺れた。

静寂のエリア、基幹層への入り口です。

感情の残渣が勝手に動く……ホラーですね。

ルシアナの解説で、敵の正体がおぼろげに見えてきました。


次回、ラグナの「残りカス」とご対面。

……の前に、神界の防衛システムが牙を剥きます!


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― 新着の感想 ―
さぁ、激突か?!と思ったら、静寂のエリア、基幹層への入り口なので、静かに始まる。基幹層の細かい説明で、徐々にこの異常さが見えてきた。ラグナが死ぬ前に残した、“影の層”。ラグナ残滓”。さすがラスボス、簡…
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