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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第78話 地上の声

 神界最高会議ヘリオス・アーク

 光の半円形の議場の中央に、カケルは立っていた。

 視線が重い。

 神々の視線というものは、ただ見られているだけで

 胸の奥に重しを載せられる感覚がある。

(……緊張するな、さすがに)

 その横にルシアナが立ち、背を支えるように静かに息を整えてくれた。

「——では、地上代表としての証言を求めます」

 アルシア・リュメインの澄んだ声が響く。

「カケル。

 あなたは、急進派の行為によって地上がどのような影響を受けたか……

 見たまま、感じたままを語ってほしい」

 光の議場が静まり返る。

 カケルは息を吸い、ゆっくりと口を開いた。

 

 ◇


「……最初は、よく分からなかった」

 カケルの言葉は素朴だった。

 だが、その素朴さが逆に響く。

「町の人たちの“声”が……

 なんか、軽いっていうか、力が入ってないっていうか。

 笑ってても、空気に重さがなかった」

 穏健派の神々がざわつく。

「そして、ある日、俺の“帳簿”で気づいたんだ。

 感情が減ってるって」

 冷律会のヴァリオスが微動だにせず、ただ冷ややかに見下ろしている。

「俺は最初、自分のせいだと思った。

 前借スキルでラグナを倒したせいで、

 世界中から感情を奪ったのかもしれないって……

 本気で思った」

 ルシアナがそっと目を伏せる。

「でも違った。

 町のどこかに、何かが仕掛けられてた」

 会議場の空気が変わった。

「感情を吸い取る装置だ。

 人間が“感じる前に”吸われるから……

 人の心が薄くなっていった」

「……!」

 調律会の調律神フェリシアが目を見開いた。

「それは感情律の重大な侵犯です」

「わかってる。

 でも重要なのは――」

 カケルはヴァリオスをまっすぐ見た。

「それをやられた側の“気持ち”だ」

 

 ◇


「みんな、なんとなく気づいてた。

 『最近元気が出ない』

 『疲れやすい』

 『何をしても面白くない』」

 カケルは拳を握る。

「でも、原因がわからないから……

 自分のせいだと思っちまうんだよ」

 議場のあちこちから色が消えたような沈黙が広がる。

「本当は、お前ら冷律会の収穫のせいなのに。

 人間はみんな“自分が弱いからだ”って思っちゃうんだ」

 カケルは、声を震わせずに言った。

「それが……一番許せなかった」

 

 ◇


 調律会の神々の間に、静かな波紋が広がった。

 調律神フェリシアが言う。

「地上に不調が出ていたのは聞いていました。

 しかし原因は特定できていなかった……

 あなたの証言は貴重です」

 記録神コルダも低くうなずいた。

「地上の情動流の“薄まり”……

 我々が観測していた“欠損”にも一致する」

 その言葉に、ヴァリオスが初めて反応した。

「欠損ではない。

 不要な情動の“削減”だ」

 冷え切った声だった。

「心が弱る? 活力が失われる?

 それは“安定化過程”だ。

 我々は正しいことをしている」

「……正しい?」

 カケルは、静かな怒りを込めて言った。

「人間の感情を勝手にいじっておいて、

 何が“正しい”だよ」

「感情は変動が激しすぎる。

 放置すれば世界は混乱する。

 ならば——芽の段階で摘むべきだ」

「お前らの“都合”だろ、それ」

「都合ではない。

 秩序だ」

 ヴァリオスの声はあくまで無機質。

 そしてその無機質さこそが、

 カケルの胸に深い違和感を落とした。

(……なんだ、この感じ……

 ただ冷たいだけじゃない。

 “何か”が足りない……?)

 けれど、このときのカケルはまだ気づかない。

 それが“急進派の根源的異常”だということに。

 

 ◇


 アルシアが会議席を見渡した。

「冷律会、調律会双方の意見と、

 地上代表カケルの証言をもって……

 これより、正式な調査を開始します」

 調律柱が光を強めた。

「冷律会、

 収穫行為の証明を提出しなさい」

 その瞬間——

 ヴァリオスの周囲に黒い“揺らぎ”が生じた。

 けれど、それが何を意味するのか、

 まだ誰も理解していなかった。


カケルの証言回でした。

神々の前でも物怖じせず、奪われた側の痛みを代弁できるのがカケルの強さですね。

しかし、冷律会の反応は相変わらず機械的です。


次回、冷律会が提示した「証拠」。

そこに映っていた黒いノイズが、会議場を凍りつかせます。

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カケルが語る「人間はみんな“自分が弱いからだ”って思っちゃうんだ。それが……一番許せなかった」この言葉は、社畜時代にカケルが感じた理不尽さだった。 否が応でも、社畜時代の自分と向き合う事になるからカケ…
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