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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第77話 神界最高会議へ

 アルシアに導かれ、カケルたちは光の回廊を歩いた。

 金色に揺れる床の下では、人々が発した“感情の残渣”が川のように流れている。

「……これが、神界に来た感情の流れか」

「ええ。調律会はこれを整え、世界のバランスを守っているの」

「へぇ……きれいだけど、何か怖いな」

「怖い、という感覚は正しいわ。

 ここは“人間が触れてはいけない領域”だから」

 ルシアナの声には、かつて仕えていた世界への緊張がにじんでいた。

 

 ◇


 回廊の先に巨大な光の門が現れた。

 アルシアが手をかざすと、音もなく開く。

「ここが——神界最高会議ヘリオス・アークよ」

 内部は広大な議場だった。

 半円形の席が幾重にも重なり、中央には調律柱が立っている。

 柱は静かに脈を打ち、光が波紋のように会議場を満たしていた。

「……すごいな。なんか、でっかい国会みたいだ」

「あなたの例えはよく分からないけれど……

 ここは神界でもっとも重い場よ」

 すでに穏健派の神々が集まり始めていた。

 アルシアの登場に、ざわりと光が揺れる。

 しかし——

 議場の奥には異様に静かな一角があった。

 暗い席に一人、座っている神。

冷律会高位神・デウス=ヴァリオス。

 

 ◇


 ヴァリオスがゆっくりと顔を上げた。

 冷たい視線がこちらを射抜く。

「調律会は……いつから人間を会議に招くようになった?」

 その言葉だけで、場の空気が重く沈む。

 アルシアが一歩進んで答えた。

「冷律会の行動に、地上との因果が確認されたためです。

 検証に必要な当事者を呼んだまで」

「当事者……ね」

 ヴァリオスの声は平坦で、感情が読み取れない。

「だが、神界の秩序を決めるのは神々だ。

 人間の言葉に左右される道理はない」

 調律会の神々がざわつく。

 カケルは小さく息を吸って、前に出た。

「左右されるかは知らねぇけど……

 言いたいことくらいは言わせてもらうぜ」

「ほう?」

「お前らの“収穫”が、地上の人間の心を弱らせてる。

 理由はどうあれ……それは絶対に間違ってるだろ」

 ヴァリオスは瞬きひとつしなかった。

 本当に感情がないかのような視線。

「……感情は管理されるべき資源だ」

「資源じゃねぇよ。

 生きてる人間が感じてるものだろ」

「だからこそ、制御する価値があるのだ」

 あまりにも淡々と、当然のように言う。

 その冷たさに、ルシアナが小声で言う。

「……冷律会の神々って、あんなに……冷たい話し方だったかしら」

「前に会ったスルヴァも、なんか変だったけど……

 あいつは輪をかけて“無機質”だな」

 カケルは眉をひそめた。

(感情が薄い……んじゃない。

 “何か”が抜け落ちてる感じ……)

 しかし、それが何なのかはまだ分からなかった。

 

 ◇


 アルシアが厳然と言い放つ。

「デウス=ヴァリオス。

 冷律会は情動律に対する重大な疑いをかけられている。

 ここで説明しなさい」

「説明……か。

 必要ない。

 我々は“正しく仕事を遂行している”だけだ」

「ならば——検証するほかないわね」

 アルシアの指先が調律柱を指した。

 柱の光が揺れ、会議場の中央に巨大な情動図が映し出される。

 しかし——

 図の一部は“黒く塗りつぶされたように欠損”していた。

「……なんだこれ」

「地上の情動流……一部が“消失”している」

 調律会の神々がざわつく。

「冷律会が何かしたのでは……?」

「いや、これは構造的な崩れ……?」

「どういうことだ……」

 ヴァリオスだけが、ピクリとも反応しない。

「どういうことでもない。

 情動の流れは“管理されるべきだ”。

 それだけだ」

 その言い方が、まるで

“古い規則を読み上げる機械” のようだった。

 カケルは背筋に寒気が走る。

(……やっぱり何か“変”だ。

 けど、それが何なのか……まだ掴めねぇ)

 彼はまだ知らない。

 この違和感こそ——

 “ラグナ思想”の影が神界にじっと潜んでいる証だった。

 しかし、この段階では、誰もそこまで辿りつけない。

 

 ◇


 アルシアが振り返り、カケルに告げた。

「——カケル。

 あなたには、冷律会の行いを“地上の視点”から語ってもらう必要があるわ」

「わかった。

 俺は見たものしか言わねぇけどな」

 会議場の視線がカケルに集中する。

 調律会も、冷律会も。

 そして光の柱も。

 世界の命運が、ひとつの人間の言葉に集まっていた。

神界の国会のような場所、最高会議ヘリオス・アーク

冷律会のトップ、デウス=ヴァリオスが登場しましたが……様子がおかしいですね。

会話が成立しているようで、根本的に何かが噛み合っていない不気味さ。


次回、カケルが全神々の前で証言台に立ちます。

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― 新着の感想 ―
なんだか変なのは、“ラグナ思想”の影が神界にじっと潜んでいる証?ヴァリオが、古い規則を読み上げる機械” のようだとは?操られてる?神が? それでも、カケルは、カケルとして、語るだけだね。芯が強い人だか…
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