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異世界召喚されたので、『前借スキル』で速攻ラスボスを倒して楽をしようとしたら、理不尽にも“感情負債140億ルーメ”を背負うことになったんだが?  作者: 早野 茂
第6章 神界の感情泥棒と暴走する世界初期化(ゼロ・コード)

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第76話 神界への門が開く

 鐘楼を出たころ、町はすっかり夕闇に沈みはじめていた。

 空気の色が戻り、感情の流れも元通りになっている。

 ついさっきまで“薄さ”が漂っていた世界が、今は静かに脈を取り戻していた。

「……戻ったな、ほんとに」

「ええ。急進派の装置が止まったおかげで、町の感情流量も正常よ」

 ルシアナは小型観測器を見ながら、ほっと息をついた。

「けどよ、あいつらの話じゃ……次は神界が舞台なんだろ?」

「そのはずよ。冷律会の収穫は神界の内部システムに刻まれた“ラグナ思想”の残滓。

 本当に止めるには、そちらに踏み込むしかないわ」

 その言葉を引き取るように――

 カケルの前に、金色の光が揺らぎはじめた。

 まるで空間に“溝”が入ったように、淡い輪が広がる。

「……ルシアナ、これって」

「調律会が開いた通行門。

 神界へ向かう正式ルートよ」

 輪が光を凝縮し、やがて直径一メートルほどの金環となった。

 内側には、白と金の“別の空”が揺れて見える。

「向こうは……調律会か」

「ええ。大調律神アルシア様が呼んでいるのだと思うわ」

「アル……なんだって?」

「神界政治のトップよ。

 私の“元上司”みたいなものね」

 その言葉に、ミュコが「ぴゅいっ」と震えた。

「怖い存在なのか?」

「くそ真面目、いえ真面目なのよ……怒らせると、とても静かに怖いわ」

「静かに怖いのはやめてくれ」

 

 ◇


 仲間たちが門の前に集まってきた。

「カケル、気をつけてね……」

「絶対、無事に戻ってこいよ」

「データ採取は任せてください……うう、行きたい……!」

 フィンもボビンもミレイユも、口々に言葉をかけてくれる。

「みんな、本当にありがとな」

 カケルが笑うと、ルシアナは彼らに向き直った。

「ごめんなさい。

 神界は“人間にとって有害”な層もあるの。

 行くのは、カケルと私だけ」

 グレンは腕を組んでにやりと笑った。

「なら、町のことは任せとけ。

 お前らが帰ってくる場所くらい、ちゃんと守っとく」

「……ありがとう」

 カケルは深く頭を下げた。

 

 ◇


「行くわよ、カケル」

「ああ」

 二人と一匹は、金環の光に触れた。

 世界が反転し――

 空間の境界が音もなくめくれあがる。

 

 ◇


 白と金の世界が広がった。

 透き通る床は水面のように揺らぎ、

 巨大な調律柱が何本も空へ伸びている。

 大地は幾何紋様の光を放ち、

 空のようで空ではない天が全方向に続いていた。

「ここが……神界……」

「調律会の本殿、《カレイド・サンクトゥム》。

 世界中の情動流を“調律”する場所よ」

 ルシアナの声に微かな緊張が混じる。

「……迎えが来たわ」

 振り返ると、金の光を纏う神性体が数名、整然と並んでいた。

 彼らは人間とは明らかに違う“世界の光”そのもののような存在だ。

 そして、その中心に立つ女性神――

アルシア・リュメイン。

穏健派を統べる“大調律神”である。

 

 ◇


「久しいわね、ルシアナ・フェルシア。

 あなたが——人間を連れて戻る日が来るとは思わなかった」

 アルシアの声は澄み切っていて、しかし威圧感を帯びていた。

「大調律神アルシア様……

 ただいま戻りました。

 地上にて冷律会の違法収集行為が確認されました!」

 ルシアナが即座に頭を下げる。

 アルシアは彼女をじっと見つめた後、

 カケルへ視線を移した。

「あなたが……“カケル”」

「ああ、まあ……そうだな」

「地上の人間が神界に足を踏み入れるのは、本来絶対にありえない。

 あなたの存在は、この世界律にとって“異物”でしかない」

「異物ね……よく言われるよ」

 神界で笑える神経は、もはや尊敬すべきなのかもしれない。

「しかし、冷律会の暴走は看過できない。

 説明を聞きましょう。

 どうしてあなたがここに来る必要があったのか」

 カケルは一歩前に出て言った。

「簡単さ」

 白金の空気に、声がよく響いた。

「“感じる”ってことを奪う奴が許せねぇからだ」

 神界の空間が微かに揺らいだ。

 アルシアの神性の輝きがわずかに動く。

「その感情……地上の人間にしては強いわね」

「この世界でようやく取り戻したんだよ。

 前の世界じゃ、感情なんか持ってたら潰されるだけだった。

 でも、やっと……やっと取り戻したんだ。

 それをまた奪おうとする奴がいるなら、どこにだって殴り込む」

 アルシアはしばし沈黙し、やがて静かに頷いた。

「……ルシアナ。

 あなたと彼を、神界最高会議へ案内します」

 周囲の調律会の神々が一斉にざわめいた。

「最高会議……!

 本気なのですね……!」

「冷律会の背後に“ラグナ思想の残滓”があるなら、

 なおさら見過ごすわけにはいかないわ」

 アルシアは振り返り、光の道を示した。

「ついてきなさい。

 地上の人間——カケル。

 あなたの“感情”が、神界を揺るがすかもしれない」

「上等だ。

 揺るがしてやるよ」

「ぴゅい!!(がんばる!)」

 

 ◇


こうして、カケルとルシアナは――

神界の中心へと踏み込む。

冷律会の真相へ。

そして、ラグナ思想の残滓が眠る“核心”へ。

物語は、いよいよ神界編に突入する。

ついに神界へ突入です!

アルシア様、厳格そうですが話の通じる神様でよかったですね。

カケルとルシアナ、二人(と一匹)だけの旅立ちかと思いきや、仲間たちの絆が熱いです。


次回、神界最高会議へ。

そこで待っていたのは、あまりにも冷たい神々でした。


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― 新着の感想 ―
カケルが神界に行く時の、仲間のセリフが良かった。ミレイユの「行きたい」が笑った。本当に研究者だね。 そして、カケルの「でも、やっと……やっと取り戻したんだ。」の言葉が良かったし、重かった。 決意も新た…
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