第71話 西の影、晴れる日
翌朝。
前借亭で軽い食事を済ませると、
カケルたちはそろってギルドへ向かった。
外はいつもより人が多く、
妙なざわめきがあった。
カケル
「なんだ……? 今日は妙に人が集まってるな」
ボビン
「カケル、冒険者だけじゃねぇ。町の連中もいるぞ」
フィン
「“何か大きい討伐があったらしい”って噂が飛んでます……!」
グレン
「もう広まってるのか!?」
ギルド支部に入ると、
すでにロビーは騒然としていた。
「誰が倒したんだ!?」
「また四魄柱のひとりだったらしいぞ!」
「今回は“四魄柱の妬”だったって……!」
受付嬢ノエルが、四人を見つけて走り寄る。
「みなさん……! 本当に討伐したんですか!?」
グレン
「……ああ。倒した」
ボビン
「カケルの合図でな!」
フィン
「ぼ、僕……がんばりました……!」
カケル
「いや俺悪くなくね?」
ノエル
「カケルさんはいつも“よく分からない働き”をしますよね……?」
カケル
「やめろ、曖昧な評価をするな」
グレンが討伐証明の“影痕結晶”を提出する。
「妬の残滓、確かに……!
これ……正真正銘の柱クラスの証拠ですよ!」
その瞬間、
ロビーが爆発したような歓声に包まれた。
「やったああああ!!」
「西の影が消えたぞ!!」
「これで夜の外出ができる!!」
「またリベリスは平穏だ!!」
人々の安堵、感謝、希望が一気に溢れ出す。
まさに“社会の感情”が動いた瞬間だった。
――ピコンッ。
カケルの視界に、
ウインドウが静かに開いた。
《感情発生:(王国中対象)20億ルーメ》
カケル
(おお……来たな、これ)
隣のルシアナが気づく。
「……また出た?」
「今のは“プラス”だから怒るなよ?」
「怒らないわよ。……呆れてるだけ」
「それはそれでキツい」
ギルド内の冒険者や町人たちが、
三人(+ミュコ)を称賛し始めた。
「また、あの三人が四魄柱を退治したのか」
「ミュコもかわいい!」
「ぴゅい!」
グレン
「……なんか照れるな」
ボビン
「オレたち、こんなに褒められる日が来るとはな!」
フィン
「ぼ、僕……! すごい……!」
カケル
「俺、ほぼ何もしてねぇしな。
サークルクラッシャー女を思い出してたくらいだし?」
ルシアナは少し離れた位置で、
カケルの背中を見て居心地悪そうに笑った。
「……やっぱり、すごい人ね」
ミレイユ
「え? カケルさんがですか?」
ルシアナ
「……うん。
他人のために怒るなんて……
ふだんの彼からは想像もつかないわ」
カケル
「聞こえてるぞ」
ルシアナ
「聞こえるように言ってるのよ」
ギルドを出るころには、
リベリス中に妬討伐の噂が広がっていた。
「本当に助かった……」
「夜が怖くなくなるなんて!」
「冒険者様に感謝だ!」
「リベリスもまだまだ大丈夫だな!」
町が明るくなるのが分かる。
グレン
「なぁカケル、こういうの……悪くねぇな」
カケル
「……そうだな」
(返済にもなるし)
フィン
「カケルさん、今すごく悪い顔しましたよ?」
カケル
「いや俺悪くなくね?」
ボビン
「今日はもう休もう。
戦いの後だ、体を休めるのも仕事だ」
フィン
「ルシアナさんも、無理しちゃダメですよ!」
ルシアナ
「ありがとう、みんな」
カケル
「よし、帰るか。今日はゆっくり寝ろ」
ルシアナ
「じゃあ……カケルもね」
その言葉に、
カケルはほんの少しだけ照れた。
読んでいただきありがとうございます!
これにて第5章《妬》編、完結です!
ルシアナのピンチから始まりましたが、最後はいつもの「前借亭」の日常に戻ってこれました。
そして今回はなんと……借金が「減り」ました!
王国中からの感謝の感情で20億ルーメの返済。
カケルさん、久しぶりの快挙です(笑)。
これで、ついに四魄柱すべて(憤・狂・哀・妬)との決着がつきました。
最大の脅威を退けたリベリス。
しかし、物語はまだ終わりません。
全ての柱が消えた今、世界の均衡はどうなるのか?
そしてカケルの「感情負債」の完済は?
ここから物語はいよいよクライマックス、最終局面へと向かっていきます。
引き続き、応援よろしくお願いいたします!




